ただいまと言わせて ヴァローレに戻ってきてまず思ったのは、空気の匂いが変わったというところだった。
喧騒は相変わらずだけれども、息が詰まるような苦しさがなくなっている。聞けばヘルミニアが倒れたことであの忌まわしい”粉”の莫大な取引はなくなり、比較的以前よりも健全な商売で食べていけるようになったらしい。ただその一方でヘルミニアが牛耳っていた”粉”の販売経路が分散され、今でも”粉”に苦しめられている人たちが多いのだという。
「帰ってきて早々任せてすまないな、シャナ」
「いいの、気にしないで。あたしはこのために帰ってきたんだから」
むしろこの件に関しては頼ってほしいなとシャナはバルジェロに微笑む。
ヴァローレに戻って数日、シャナは薬師として駆け回る日々を送っていた。患者たちの今の様子を確認したり”粉”中毒の対処に必要な薬の調合をしたりとやることは山積みだ。
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