過去俺は3つ上の幼馴染がいた。年上ではあったが、年齢差なんか関係なくほぼ同い年のような感覚でもあって、でもお兄さんのような存在でもあって、物心ついた頃にはそばでずっと遊んでくれていた。周りの人とは少し違う感覚を持っている、俺は周りより明らかに浮いてるんだ。と幼い頃から分かっていた俺にとって、幼馴染はそんな変な筈の俺に、離れずに傍にいてくれる大切な存在だった。
4月、幼馴染は高校に上がり、中学に上がった俺、そんな時期から僅か半年頃だ、勘のいい俺はすぐ気付いてしまう。毎日傷が増えていく幼馴染の姿に。最初は元々とてもドジな幼馴染であったため、また転んだりしたのかと笑い飛ばしていたが、日に日に増えるあざに、傷に、気付きたくはなかった事実に気付いてしまう。違和感が、確信に変わってしまう。
幼馴染は学校で「いじめ」にあってるのでは……?
俺は勿論幼馴染に問い詰めた。でも幼馴染は「気にしないで」「一夜には関係ないよ」「僕は大丈夫」と言うだけだ。
俺は納得は出来なかった、でも無力な自分ではどうすることも出来ないことも分かっていた。
(きっと大丈夫……時間が解決する……大丈夫……大丈夫……)俺はそうやって幼馴染の事を静かに見守る事しか出来なかった。
その日は都会にしては珍しく、雪が降っていた。とても寒い日だった、いつもと変わらず、幼馴染と学校まで登校してる途中だった。その日、幼馴染は変わった事を俺に言ってきた。
「一夜はさぁ、友達、ちゃんといる?」
「一夜、僕の記憶が正しければ、僕がいないといっつも1人でいるけど、ちゃんと友達作ってよ」
「まずは僕と一緒にいる時みたいにさ、ニコニコしてさ!一夜はさぁ、目死んでるんだから!無愛想な態度もだめだよ!ほら、笑顔!」
うるせぇ、大きなお世話だ。
「ほら〜そういう所だよ〜」
「僕みたいにもっとさ〜な〜んにも考えてなさそうな感じの表情したらさ〜いい感じに仕上がるとおもうんだよねぇ」
「一夜、目は死んでるけど、見た目に可愛げあるから中身もよくしたら友達なんてすぐできるよ〜〜」
……自分が馬鹿そうって自覚はあったんだ。
……ねぇ、そんなに俺に友達作れって急に進めて、どうしたの。
「んーー!これから一夜が大人になるのにいつまでも僕にべったりなら困るじゃん!?」
「あと沢山友達作ったら人生さらに楽しくなると思うんだよね!!一夜にはそんな人生送って欲しいっていうか!ね!」
「ほら、一夜はさぁ、幽霊さん?見えるんでしょ?そういう人とも仲良くなれたら面白くない!?」
お前は俺の親かよ。しかもアイツら目障りなだけなんだけど。絶対仲良くなれん。
「そんなこと言わないでさぁ〜!一夜ってなんかいっつも自分に自信なさそうだけど、友達沢山作ってさ、その一人一人大切にしてあげたらさ、世界一素敵な人になれるよ!!」
「も〜!モテモテだよ!ね!一夜!僕と約束しない?!一夜は世界一友達想いな人になろう!!」
えぇ……相変わらずウザイなぁそのテンション……世界一は無理だと思うけど、お前がいうなら……
約束してやっても……いい。その代わり、お前が俺の大切な友達、第1号だから。
「……うん!約束!」
「あ、もう学校着いちゃうね。僕今日は用事あるから、一夜の学校終わったら僕の事待たないで帰ってていいよ。じゃあね、一夜。」
……?、うん、またね。
次の日、俺の耳にはこんな話が入ってきた。
昨夜、俺の幼馴染はビルの屋上から飛び降りて、自殺した。原因は同級生によるいじめだと言われた。
本当に馬鹿だ、馬鹿な幼馴染だ!!!!!
……否、馬鹿なのは俺だ。何が世界一友達想いな人になるだ。俺は本当に大切な友達が助けを求めていた筈なのに何も行動してないじゃないか、見てただけだ、自分は無力だからと何もしなかった。
俺にできることはないのか?と考えようとしなかった…………
俺はショックから中学は丸々不登校になった。親がそんな俺を心配してか、高校からは、俺のはとこが住んでる所まで引越した。
高校から俺は変わった。
人前で愛想を振る舞うようになった、喋り方も変えた、身長は全然伸びなかった欠点をむしろ武器にした、友達を沢山作るようにした、俺は、常に自分の出来る事を考えるようになった、高校を卒業してすぐ家をでて、とある家を借りた、自分の出来ることを見つけたからだ。
生と死、両方が見える俺にしか出来ないことがある、そう教えてくれたのは幼馴染だ。
あいつは元気にしてるだろうか、死者がみえる筈の俺なのに、あいつの姿は1度も見たことがない。
でもそれでいいのかもしれない。
今でも夢に見るんだ、あの時の幼馴染の最後の笑顔を。それは俺にとって呪いなんかじゃない、俺がお前を想って今日も前に進む事ができる、希望の笑顔なんだ。