HappyBirthdayマリシェヴァ!「なぁ、」
冷え込むことも増えてきたこの頃。今日も教会にはマリとザック。
「なんですか。」
大体2人の話はこの言葉で始まる。ザックが声をかけてマリが答えるのだ。
「オースティンから聞いたんだけどよ、たんじょうび?ってなんだ?」
「…………聞いたんじゃないんですか?」
「聞いたけど、忘れた。」
マリはため息をつく、ザックは興味のないこと以外は覚えないので今教えてもきっとすぐ忘れるし、今教えても…と思うが彼は知りたがってる。分かりやすく姿勢が前かがみだ。
「誕生日っていうのは自分の生まれた日の事です。」
「…それだけ?」
「…はい。」
ふとこの教会でみんなの…自分を含めた子供たちで誕生日会をしていたのを思い出して顔が暗くなる。
「お前はいつなの」
そんなのお構い無しという感じでザックは聞く。というかきっと気づいてないんだろう。
「………11日3日です。」
「…おう、いつだよ」
顔色ひとつ変えずにザックは返す。聞いていなかったわけじゃないのになぜ聞き返してくるのだろうか。
「いや…だから……」
「わかんねぇんだよ、今とか明日とかあんだろ。」
…なるほど、こいつは日付が分からないのか。そう分かるまで少し時間がかかった。普通だと思っていても彼には普通が通じないから一つ一つ紐解いて教えないといけないのがめんどくさ…大変だ。
「……今日です。」
「ふーん」
聞いておいてそれかよ、と思いつつもそういえば自分も彼の誕生日を知らないなと思い
「貴方はどうなんですか」
と聞く。彼はこちらをジッと見たかと思うと口を開いた。
「俺?知らね。どこで生まれたとか親とか知らねぇし」
「そう、なんですか」
「おう。」
彼は素性は本当に知れない。どうやったらこんな倫理観も教養もない馬鹿が出来るのかと思っていたが少し納得した気もする。
ザックは立ち上がりスタスタと扉の方に歩いていく。
「ちょっと、どこ行くんですか」
彼の背中に声をかける。
「あ?どこでもいいだろ。」
そうですか、なんて言う前にさっさとザックは教会から出ていってしまった。
日も落ちて肌寒くなってきた頃にザックは帰ってきた。
「おかえりなさ…………なんですか…それ」
ザックの手にはうさぎ、鳥といった動物に熟れた果物が握られていた。
「んっ」
ザックはそれをマリの目の前に突き出した。意味がわからず目を合わせるときっと未だにアドレナリンが出ているのだろう爛々と目が輝いてる。夕焼けに照らされた彼の目はとても綺麗に見えた。
「HappyBirthday。マリ」
彼はそう言いマリに持っていたものを渡す。
「……えっ…?」
状況が飲み込めないマリを見てザックは口を開く。
「誕生日ってのは生まれたそいつを祝うんだろ?だから、やるよ。プレゼント。」
ただ誕生日のことを説明しただけなのに…プレゼントとか祝うなんて言ってないのにと思っていると
「オースティンが言ってた。思い出したんだよ」
と彼は言った。
「…これを私に…?」
「お前以外に誰がいるんだよ」
少し照れているのか鼻をちょいちょいと触りながらザックが言う。
「…ありがとうございます」
彼なりに私のためにプレゼントをくれたと思うと嬉しい。嬉しいんだが……
「…あのこれは嬉しいんですけど…捌けないので…」
果物はともかく動物を丸々もらっても何も出来ない。
「あ?出来ねぇの?ほら、かせよ」
そういいザックは慣れた手つきで捌き始める。ここで…とは思ったがまぁ後で掃除させればいいか…と諦めた。
「…貴方動物は捌けるんですね」
「出来ねぇと食うもんねぇしな」
「…そうですか。」
その日のご飯はザックの取ってきた動物のお肉や果物で作ったデザートを2人で囲んで食べたみたいです。
HappyBirthday!マリシェヴァ!