保鳴をくっつけてくれる兄貴の話「例えば、明日世界が終わると考えてみてや。それでも告白せえへんの?」
保科宗一郎は、そう言って鳴海のグラスを取り上げた。返せよ、という間もなく、口にクラッカーを押し込まれた。乾いた感触に、問答無用で口を塞がれる。それを辛うじて咀嚼しながら、鳴海は力の抜けたため息をついた。
「するわけないだろ」
「ええ~! なかなか手ごわいな。そりゃ、宗四郎も手を焼くわけやわ」
「てめーに関係ねぇだろ」
鳴海は宗一郎の手からグラスを取り返すと、ビールに口をつけた。ペースが速すぎる自覚はある。それでも、今この場を立ち回るには、アルコールが欠かせなかった。
「なんでそんなに頑ななん? 宗四郎のこと嫌いじゃないやろ?」
「はっ、嫌いだ、嫌い。大体ボクは細目とオカッパが気に入らない。あいつ、近づくなと言っているのにいつもうるさいんだ」
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