「あ」
静かな図書室に気を遣わない、何かに気付いたフィンの声に、その隣で本を読んでいたカルパッチョは顔を上げた。
「ぇ」
その瞬間には目の前にはフィンの顔があり、カルパッチョは固まった。
(キ、)
自身に向かって伸びてくるフィンの手に続く文字が過ったすぐ、それは額にきた涼しい感覚に打ち砕かれる。
「……?」
風が前髪に当たる感覚だった。
数秒してフィンが自身の前髪に向かって息を吹いたのだと分かった。
「埃ついてた」
「ぁ、あぁ…」
カルパッチョは前髪に手をのばす。
「もう取れたよ」
フィンは何事もないようにそう言うと、机の上に閉じられている本をまた読み出した。
カルパッチョも同じように読んでいた本に顔を戻すも、先ほどの光景が離れず本の内容は一切入ってこなかった。
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