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    hu_sen25

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    hu_sen25

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    記憶を失くした監督生が
    恋人ラギーの前で
    元彼に会いたいって泣いちゃう話

    「え!!?記憶喪失!!?」


    いつもの2人と一匹に連れられたユウくんは明らかに様子がおかしかった。
    肩をすくめ、おどおどしていて
    あんなに仲の良いグリムくんにまで警戒している様子。
    となると、少なくともNRCに来てからの記憶はないという事になる。


    「錬金術の授業中にクラスの奴が薬品ぶちまけちゃって。監督生、鈍臭いからそれ頭から被っちゃったんすよ。」

    エースくんがやれやれと言った様子に説明してくれた。

    「それで?何処までの記憶が無いんスか?」
    「監督生の中では、今はミドルスクールの2年生だそうです。」
    「ふーん。随分と面倒な事になっちゃったスねー」
    「そうなんですよ!っと」
    「え?きゃぁッ……」

    エースくんが彼女の肩をぐいっと押し、オレの前に突き出した。

    「俺達これから部活なんで!ブッチ先輩、コイツの事頼みます!」
    「はぁ!?え、ちょっと!オレも部活なんスけど!?」
    「じゃあ、俺達が記憶の無い監督生にある事ない事吹き込んじゃってもいいんですかー?」

    エースくんが悪戯っぽく耳打ちをする
    そんなの良い訳ねーだろ!

    「監督生も僕達よりブッチ先輩といた方が安心だろ?何たってカレ…」

    彼氏。そう言い掛けたデュースくんの口をエースくんが塞ぐ。
    まぁ、賢明な判断だろう。ただでさえ見知らぬ場所で戸惑っているのに、いきなり知らない男が彼氏だなんて言われても余計に混乱させるだけだ。


    「余計な事は言わなくていーのッ!
    監督生!このブッチ先輩は見掛けによらず面倒見よくて、お前も普段めちゃくちゃ世話になってんの!だから記憶が戻るまでこの人と一緒にいれば大丈夫だから!!」
    「え……?で、でも……あのっ……」
    「ほら、グリムも行くよー!お前がいると監督生怖がっちゃうから。じゃあブッチ先輩、あとはお願いしまーーす」
    「ふな!こらエース!オレ様のしっぽを離すんだゾ!」


    騒がしく退散した彼等の背中を見送りながら立ち尽くすオレ達。


    「あ、…あのぉ……ぶっち?……先輩?」

    彼女が弱々しくオレの名前を呼び、心細そうにこちらを見上げる
    オレを知らない彼女に戸惑いながらも

    「じゃ、行きますか」

    怖がらせないように優しく声を掛け
    オンボロ寮へと案内した。







    「きゃぁぁあ~~~!!無理です!こんな所!えっ、わ……こっちにも??」
    「どうしたんだユウ。まさか俺達を怖がってるのか?」

    絶叫しながらオレの背中に必死にしがみつく彼女を、ゴースト達が不思議そうに覗き込む

    「きゃぁーーやだやだ!あっち行ってよぉ!!ぶっち先輩何とかしてっ!!」
    「大丈夫ッスよ、ユウくん」

    こんなに取り乱した彼女は新鮮で
    好きな子に強くすがられるシチュエーションに最高に気分が良い。
    エースくん達に任せなくて本当に良かったと心底安堵する



    「すみませんけど、ゴーストさん達。そういう訳なんでちょっとの間外してもらってもいいッスかね?」
    「それなら仕方ないな!!ちゃんと世話してやれよ!」
    「はいッス!……………じゃあユウくん、ってあれ!?ユウくん!?」


    先程までオレの背中でワンワン騒いでいた筈の彼女の姿が何処にもない!

    「ユウくぅーーん!!何処ッスかー」

    寮内を探し歩き回ること数分

    「はぁー。こんな所にいた。」

    寝室の隅っこで頭からシーツを被りうずくまる彼女を見付ける。

    「う、…………ぐす、」
    「大丈夫ッスよ?ゴーストさん達には外出てて貰ったんで。」

    肩を震わせる小さな体に
    大丈夫。怖くない。と言い聞かせて
    シーツの上からそっと頭を撫でる

    「ぅぅぅ………もう嫌だ。こんな所」

    オレはマジフト大会以降の彼女しか知らない。
    この世界に来た当初も、こんな風に独りで泣き崩れた日があったのだろうか。
    そう思うと傍にいてやれなかった悔しさが込み上げる。だからせめて今は、目の前の彼女に寄り添いたい。


    「嫌なことばっかじゃないッスよ?
    ユウくんが見たこと無いような綺麗な場所や魔法だってあるんだから!
    そーだ!ちょっと学園内を散歩してみない?きっとユウくんおどろ…」
    「やだやだやだぁ~~ぅぅ……ぐす、ぐす、、、◯◯くん………たすけてぇ~」




    「っっ!………え。」





    発せられた言葉に
    心臓を抉り取られるような痛みが走る





    「ぐす、ぐす……◯◯くん……◯◯くんに会いたいよぉ~………ふぇ」




    怯え切った彼女が助けを求めたのは、目の前のオレではなく知らない男で
    何度も繰り返されるその名前に
    胸の奥がイガイガする
    息の仕方を忘れたように苦しくて
    見知った彼女の大好きな顔が、全然知らない誰かに見えた。


    さむい……。体の芯が冷えていくのを感じる
















    「ー……ぱい? ラギー先輩?」
    ッッッ!!!
    聞き慣れた声に思考が引き戻される


    「大丈夫ですか?ラギー先輩」

    心配そうに眉を下げ、オレの頬に手を当てる、オレのよく知るユウくんが其所にいて…………。だけど、昨日までの彼女とはちょっと違う気がした。


    「ユウくん。記憶、戻ったんスか?」
    「あ、はい。お騒がせしてごめんなさい」
    「……………。」

    もっと早く戻っていたら。
    あんな事、知らずに済んだのに

    「それでですね、ラギー先輩。
    記憶を失くしてた時に私が言った事なんですけど………」


    彼女が申し訳なさそうに言う。ユウくんは悪くないのに……
    どんな言い訳もどんな弁明も聞きたくは無かった。聞いた所で彼女の過去からあの男が消える訳じゃない。


    「あーー。大丈夫ッスよ。気にしてないんで。」
    「え?」
    「ユウくんの記憶も戻った事だしオレも部活に行くとしますかね!」


    鼻の奥のツンとした痛みを堪え、無理矢理笑顔を取り繕って
    「じゃあね。」と彼女の頭をポンっと叩き足早にオンボロ寮を後にする。




    ユウくんはオレにとって初恋だった。

    荒んだスラムでの日々。
    虚しさを紛らわす為に女と朝を迎える事は何度もあった。
    それでも、その行為で満たされるモノなんて何一つなくて、虚無を余計に募らせた。

    ユウくんを知ってユウくんと一つになって
    優しくしたくて、大事にしたくて、オレだけのモノでいて欲しくて……他人にこんな感情を抱ける自分に驚いた。


    だけどユウくんは
    ユウくんがこんな気持ちを向けたのは
    オレだけじゃなかったんスね………。



    日が暮れて、自室に戻ってもやるせなさは消えず

    「はぁーーーー。」

    何度目か解らない盛大なため息をつく
    過去に嫉妬するなんてダサ過ぎると
    解っていても割り切れない



    コンコン♪ ノックがして扉が開き
    今1番会いたくない人物が顔を覗かせる

    「ラギー先輩?お邪魔してもいいですか?」
    「…………。」

    言葉に詰まる。こんな情けない姿を見せたくはなかった。
    彼女はベッドに近付き、何も言わないままのオレの隣に並んで座る。
    オレの手にそっと自身の手を重ね、瞳を合わせると、痛んだ胸に傷薬を流し込むようにすーっと穏やかな声で伝えてくれる。


    「ラギー先輩が好きですよ」


    そんな事は知ってる。知ってるんだ。
    君の優しさを君の愛し方を誰よりも知っているのはオレだって。そう思っていた。

    だけど、前の男にもそんな眼差しを向けたの?こんな風に触れたんスか?

    どんなところが好きで どんな話をして
    どんなキスをしたの?

    今でも思い出したり、オレとそいつを比べたりしてるんスか?


    今は彼女の優しさでさえも傷を負う
    女々し過ぎて笑えやしない


    「………◯◯くん」
    「っ!」
    「そいつにもそんな風に好きって言ったの?」


    自分でも驚く程か細く掠れた声が
    彼女の顔を哀色に染める。
     

    少しの沈黙が流れ

    「………はい。」と控えめな返事が返ってきた。解っていた癖に心臓の辺りが余計に重くなる。


    「でも……14歳のあの頃なりにですよ」

    その答えはズルい


    「あの頃と今とでは好きの意味も重さも違います。ラギー先輩と出会って、好きになって、恋人になれて。自分でも知らなかった自分に気付きましたから」

    ふわりと彼女が微笑む


    「ラギー先輩が好きですよ。」


    もう一度、丁寧に彼女が告げる

    「この言い方も込めた気持ちの形も大きさも。ラギー先輩にだけです。
    だって、こんなに誰かを好きになったのは初めてだから。」


    重ねていただけの手をぎゅっと握り締められれば、体が熱を取り戻し、心が満たされるのを感じる。同じような気持ちでいてくれた事が嬉しい……それなのに


    「……ユウくん。男が初めてって聞けば喜ぶと思ってません?」


    素直になれず、ついつい悪態をついてしまうガキなオレ。

    「へ………?え、そ、そんな事思ってませんよぉー」

    精一杯の告白をちゃかされたにも関わらず、笑って受け入れてくれるその優しさも

    「だいたいラギー先輩だって……」

    ちょっとムッとしたその顔も

    「オレがなに?」
    「他の女の人にハジメテあげたくせに」

    照れながら怒ったその顔も

    「っ!あんなの。顔も名前も忘れちまったよーなどうでもいい女じゃないッスか。ユウくんのそいつとは違う」
    「でも……私だって。先輩の初めての女の子になりたかったんだから……おあいこですよ?」
     
    どんな時もあたたかくオレを照らす愛情も



    欠片も残さずオレのものだ。



    「もぅ他の男に目移りしちゃダメッスよ!」
    「しませんよ。というかしてません。」
    「どうだか。本当は懐かしくなって思い返してたんじゃないッスか?◯◯くんのこと。」
    「そんな事な………きゃッ!」


    ムキになり始めた彼女を押し倒し
    ベッドに縫い付ける


    「元彼の顔なんて思い出す余裕もないくらいオレに夢中にさせてやるんで覚悟しといてください」

    しっかりと視線を絡めそう宣言すれば、彼女の頬が染まっていく


    いつか大人になれば、この気持ちを
    18歳のあの頃なりに
    なんて蔑む日が来るだろうか……否


    今のオレが持てる全てで
    精一杯に


    「ユウくんが好きッスよ」
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    hu_sen25

    DONE記憶を失くした監督生が
    恋人ラギーの前で
    元彼に会いたいって泣いちゃう話
    「え!!?記憶喪失!!?」


    いつもの2人と一匹に連れられたユウくんは明らかに様子がおかしかった。
    肩をすくめ、おどおどしていて
    あんなに仲の良いグリムくんにまで警戒している様子。
    となると、少なくともNRCに来てからの記憶はないという事になる。


    「錬金術の授業中にクラスの奴が薬品ぶちまけちゃって。監督生、鈍臭いからそれ頭から被っちゃったんすよ。」

    エースくんがやれやれと言った様子に説明してくれた。

    「それで?何処までの記憶が無いんスか?」
    「監督生の中では、今はミドルスクールの2年生だそうです。」
    「ふーん。随分と面倒な事になっちゃったスねー」
    「そうなんですよ!っと」
    「え?きゃぁッ……」

    エースくんが彼女の肩をぐいっと押し、オレの前に突き出した。

    「俺達これから部活なんで!ブッチ先輩、コイツの事頼みます!」
    「はぁ!?え、ちょっと!オレも部活なんスけど!?」
    「じゃあ、俺達が記憶の無い監督生にある事ない事吹き込んじゃってもいいんですかー?」

    エースくんが悪戯っぽく耳打ちをする
    そんなの良い訳ねーだろ!

    「監督生も僕達よりブッチ先輩といた方が安心だろ?何たってカレ 4159

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