なんて言ったの?くん、と弱く体を引く力に、ジョンは振り返って首を傾げた。ねえ、今なんて言ったの?
「ヌー?」
目の前にいるのはだいじな大事なご主人様。ジョンの反応に、水筒の紐に掛けた指を離しそびれて、弱りきった顔をしている。
「ジョン、き、聞こえてたの…? もう一回? そう、もう一回か……」
いつもたくさんの言葉を並べてはみんなを引っ張ってしまう引力は、今はジョンを引き止める分だけ。自信まんまんな時はピンと立つ髪もぺったりとして、まるでドラルクさまに叱られる時のヌンみたい。
こんな姿を見たら、かわいそう、と、ドラルクさまのお父さまは言うだろう。おおきな体で抱きしめて、マントですっぽり覆って。『大丈夫だよドラルク、無理しなくていいんだよ』
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