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    しいげ

    @shiige6

    二次創作オンリー※BLを含む/過去ログは過去に置いてきた。

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    しいげ

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    恋愛初心者タナトスってこうかな?のタナザグです。かっこよくはないです。本番の話題を出しつつのシモの話ばかりでムード皆無になりました。


    (追記)↓繋げてみた。タナザグ
    https://poipiku.com/237679/7196645.html

    ##HADES
    #タナザグ
    tanazag.

    「なあ…、タンはその、自分で弄ったり、しないのか?」

    反射で口に含んだものを吹き出しそうになる、という経験をタナトスは初めてした。
    いま飲んでいるのは果実の香りがするだけの水だから決して酔っているはずがない。そう思っても、目の前のザグレウスの発言は素面かどうか疑いたくなるに十分だった。
    有り体に言うと、下半身事情の話だ。
    地上の人間と同じように体を重ねることで絆を確かめる文化は冥界にもある。
    そして、ザグレウスとタナトスはその関係を結んだ間柄だ。結んだばかり、とも言う。
    ともあれ、そういった伴侶としての話なのか、単に男性としての習慣の話なのか。
    突然に思われる発言もザグレウスの中では一貫しているらしく、意図を図りかねるタナトスを待たず言葉を続ける。

    「俺もほら、初めてだったし…」
    「俺もだが?」
    思わず返事する傍ら、脳のまだ冷静な部分は前者のようだと判断する。
    役割的には初めてだとしてもむしろおまえの方が経験的には多いはずだ、詳細は知らないが、とも思いつつ、本題とは逸れるので口には出さずにタナトスはザグレウスを見やる。
    見つめ返してくるのはまるで困った顔の犬。
    王子が出ていった時のケルベロスですら一頭たりともこんな情けない表情はしていなかったろうと思う。
    何を伝えたいのか読み取ろうにもこちらまで途方に暮れたくなる。

    なぜ初夜()の話が出てくるのか?
    タナトスの性的欲求がきちんと満たされていたかと気にしている?それともザグレウス自身が満たされていたかどうかという話か?
    普段から思考に耽りがちなタナトスの頭が半ば逃避を求めてフル回転を始める。が、如何せん蓄積量が乏しい分野では求める回答も得られない。

    「いやあの…タン?なんか変な風に考えてないか?」
    「変な、…?」
    黙っているせいか、よほど厳しい顔でもしていたか、恐る恐るといった風情でザグレウスが声をかけてくる。
    四方山話の解釈を誤ったとは思えない。ザグレウスは間違いなく「それ」の処理の話を仕掛けてきている。
    そう、変と言うならその質問自体がおかしい。何の意図があるのかと探るのは当然…
    「単純に、タナトスはひとりエッチするのかって思っただけなんだが」
    「単純に聞いていい質問なのかそれが?!」
    ふたりは知らないが俗に言うツッコミを二度まで死の化身にさせるあたりが王子の大物加減を物語っている、かもしれない。
    ザグレウスと相対するとペースを乱されるのは毎度のことだが、これはこれまでと何か違う気がする。
    このペースに飲まれるとまずい、とタナトスは気を取り直してザグレウスの顔を見返す。否、睨みつける。

    「…ザグ、おまえはどうなんだ? するのか、自分だけで?」

    タナトスの低音の問が耳に届くと、ザグレウスはびく、と肩をすくめた。
    どうだ、聞かれると返答に困るだろう。そう言って詰めてやろうと発した問だったが。


    「……す、するよ。俺は。」

    単純に答えが返ってきてしまった。
    ああそうかこれがザグだった…と眉間を抑えたくなるも、対応を誤った以上すでに遅い。

    「その…タンと初めてしたあとから、もっとうまくできたかもって考えたりしてて。そうしたらなんか体がおかしくて、疲れたのかと思ってベッドに横になったらさ、」
    「わかったもういい。もういいから。少し待ってくれ、頼む。」
    消え入りそうな声のくせ途切れることなく具体的に報告してくるザグレウスの言葉は、タナトスには矢継ぎ早に撃ち込まれる鏃も同然だ。
    乱暴にならないようかろうじて自制はしつつザグレウスの肩を両手で掴み、息継ぎのように力を込める。
    落ち着け。俺も落ち着くからおまえも落ち着いてくれ。
    ザグレウスの顔をまともには見る気がせず、声なき言葉でそんな風に懇願する。
    しかもそのベッドとはいまふたりの横にあるこれのことだろう。誘いたいのか。相手が俺でなかったらどうする。無自覚無計画もいい加減に

    「その…、こういう誘い方、だめだったか?」

    ……自覚がある…だと…?!

    とうとうがくりと崩折れてしまったタナトスを、ザグレウスは焦りつついよいよ眉を下げて見やる。
    呆れられたと思ったに違いないが、今のタナトスにはそれを訂正してやる気力がない。せめて頭を横に振ろうとし、ザグレウスの問があながち間違ってもいないことに気付いていよいよ何も返せなくなった。
    駄目といえば駄目だ。それは。
    死の化身は、何かをこらえるように口元を、次いで目元を手で覆いながら言った。

    「俺にも、心の準備というものがだな…!!」

    紅潮した顔は決して性的興奮ではなく、ただただ恥ずかしさに身悶えての結果だ。
    ザグレウスに呆れたり失望したりという話では決してない。
    誘われたと気付くこともできなければ、そうだと理解したところで突然そういう雰囲気に切り替えられるほど器用ではないのだ。情けない話だが。
    ただ、やるべきことが分かりさえすれば迷うことはない。
    熱に焼かれて不明瞭だった思考が、ひとつの芯を支えに形を取り戻していく。

    「タン、困らせてしまって…」
    「謝らなくていい。俺こそ…すまなかった。おまえに言わせてばかりで。」
    ぐっと顔を上げると、相変わらず困った顔の伴侶と目があった。
    自業自得とも思うし、それでも曇り眼ではなく、冥界にあって燃えるように輝く闇であってほしいと思う。
    ザグレウスが愛おしい。そればかりはタナトスの偽りない想いだ。

    「ザグ、キスをしよう」
    宣言して求めると、ザグレウスの頬がぱっと明るく赤く灯った。
    こうして手順を踏まないと「その気」にはなれない己を面倒だと思うが、それは追々変わっていこうと心に誓う。

    顎を引き寄せ軽く唇を合わせると、ようやく、ぽつ、と胸に火が点く心持ちになる。

    少しの間触れ合ってから表情が見える程度に離れると、ザグレウスの両目が名残惜しそうに追ってきた。
    赤と翠と、金の瞳が交錯する。
    「……したいんだな?」
    手のひらで頬を包み、こつんと額を合わせながら確認する。これもずるい行動かもしれない。
    ザグレウスなら素直に応えてくれるだろう予感に甘えて。
    「…ん。でも、タンはどうなんだ?」
    「おまえの望みには応えたい。それに、そういう顔をするおまえは可愛いと思う」
    恥ずかしい表現かもしれないと思うが、本心を伝えることに躊躇いは感じない。
    どんな顔なんだよ、と困りつつ笑い返してくれるザグレウスに触れたいと感じたのも事実だ。
    「今度から、何か合図でも決めるか?」
    「まどろっこしいことは向かないと分かった。したいときはそう言うから、できるだけ付き合ってくれ」
    互いに緊張をほぐすべく、ベッドに移動しながら最後の軽口を叩きあった。
    灯った火がひとつふたつ落ち、暗がりに沈むザグレウスの輪郭を手探りで浮き上がらせるように触れる。こうして触れ合って感じる熱を欲と呼ぶのだと再確認しながら。


    「あ、そういえば聞いてないよな。結局タンはひとりでしてるのか?」

    ムードもへったくれもない蒸し返しに、ぴし、と空気が固まり、即座に「回答は断る」と返ってくる。
    と思いきや。

    「そんな必要がないくらいおまえに求められたい」

    近づかないと表情も見えない闇の中、一切のてらいがない言葉に、ザグレウスが言葉を失う番だった。
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    triste_273

    REHABILIお題「タナザグ前提で、ザグへの惚気にしか聞こえない独り言を誰かに聞かれてしまうタナトス」
    表情や言葉ではあまり変化はないけれど、内側ではめちゃくちゃ影響受けていて思わず言葉で出てしまったタナトス…という像で書かせて頂きました。ありがとう御座いました!
    肖像画は笑わずとも かつて、死の神にとって休息とは無縁の物であった。
     世界が世界である限り時間は止まらない。常にどこかで新たな命が花開く様に、常にどこかで命の灯火が消え死者が案内を待っている。そう、死の神は常に多忙なのだ。己の疲弊を顧みず職務に没頭しなければならぬ程に。だが神であれ肉体を伴う以上「限界」は存在する。タナトス自身はその疲労を顔色に出す事はほぼ無いものの、母たる夜母神にその事を指摘されて以来、意図的に「休憩」を挟むようになった。地上の喧騒、死者たちの呪詛、そんな雑音と言葉の洪水の中に身を置く反動だろう……休息で必然的に静寂を求めるようになったのは。ハデスの館も従者や裁定待ちの死者がいる以上完全な静寂が漂っているわけではないが、地上のそれに比べれば大分マシだ。厳かな館の片隅で、ステュクスの川面に視線を落とし、そのせせらぎに耳を傾ける。かの神にとって、それだけでも十分に心休まる平穏な時であった。
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