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    まぐ@magunomagu

    @magunomagu

    イドアズ、フロアズ、他ジャンルのお話も書くかもしれません。

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    まぐ@magunomagu

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    最近沼った漫画の大好きなシチュエーションをオクタに再現してもらいました。
    楽しく戦闘してますが、戦闘シーン苦手なにんげんが書いているので温い目でみてください。

    Shall We Dance けたたましい警報と共に各寮の寮長へ向けて学園長から緊急連絡を受けたのがおよそ五分前――学園のセキュリティは万全ですと豪語していたのに先日は『ツム』、今は武装した集団に侵入を許してしまっているあたりやはり万全とは言いきれないのでは、と教師陣含めて生徒の誰もが感じていた。どうやら犯人グループの目的は学園に通う富裕層の生徒を誘拐することらしい。
    「と、いうわけでお友達として加勢にきましたよ、ジャミルさん」
    「いらん、友達じゃない、帰れ」
     学園内で保有資産が一番といっても過言ではない生徒であるカリムを狙って数にして数十名の武装グループがスカラビア寮を占拠すべく乗り込んできた。オクタヴィネル寮からスカラビア寮まで鏡を通り抜けてすぐ、すべての魔法具やマジカルペンが使えなくなりどうやら犯人達は魔法自体を無効にすればすぐに投降するだろうと踏んでいたらしい。
    「魔法も使えない無力なお坊ちゃん達を痛ぶる趣味はないんだ、さっさとカリム・アルアジームを引き渡せ」
    「無力なお坊ちゃんだってぇジェイド」
    「怖くて泣いてしまいそうです」
     寮内へ侵入させないよう入り口に並ぶアズール、ジェイド、フロイド、ジャミルの四人を見渡し、ひとりだけ薄い笑みを浮かべる白いスーツにサングラスをかけた男が無言のまま人差し指を向ける。おそらくは今回の首謀者かそれに近い人物だろうと容易に想像が出来た。
    「学園長命令なので今回の対価はそちらに請求をさせていただきます。ジャミルさんは万が一に備えてカリムさんの護衛に専念してください」
     言われなくとも下手に出てこないよう既にジャミルによりカリムは地下室へ隔離されている。扉を開ける為の鍵はジャミル自身。投降する気がないと分かった途端、ニヤニヤと薄気味悪い表情の男達が数名、走り出した。アズールは杖の先で大理石の床を鳴らす。
    「さぁ、ジェイド、フロイド。僕はあの男のところまで行きたいので……道をつくりなさい」
    「かしこまりました」
    「おっけぇ」
     数で圧倒的に有利だと確信している男達はジェイドとフロイドが立ち塞がるのを見ても鼻で笑い取り囲もうとする。ふたりはちらりとお互いを見つめジェイドが寮服のストールを翻し男達へ背を向けた。次の瞬間、軽く助走をつけたフロイドがジェイドの手を踏み台にして高く舞い上がる。ハットを左手で押さえながら重力を感じさせず空を飛ぶ人魚に呆気に取られていた誘拐犯はすぐ目の前に迫った影に気付かなかった。
    「よそ見はダメですよ?」
    「ぐぁっ」
     ジェイドの蹴りが顎の下にクリーンヒットした一人が気絶し地面へ倒れ込む。
    「この野郎っ」
     まさか『魔法を使えない無力なお坊ちゃん』の蹴り一発で仲間が倒れるとは予想していなかった犯人達はジェイドへ飛びかかろうとするが、背後に降り立った男の後ろ蹴りが背中を急襲する。
    「だからぁ、よそ見はダメって言ったじゃん」
     たった数人が相手を学生だと思って舐めてかかったからやられたに過ぎない、圧倒的に自分達の人数が多いという余裕から倒れた者を心配する様子もない犯人達を見つめジャミルは顎に手を当ててひとり納得する。
    「相変わらず双子というのはそこまで互いの動きが分かるものなのか?厄介だな」
    「どうです?オクタヴィネル寮へ転寮したくなりましたか」
    「絶対にお断りだ」
     集団で固まっていた誘拐犯達は次第に人数が削られじりじりと追い詰められていく。戦闘訓練を受けている訳でもない一般学生風情にここまで手こずると思っていなかったのか白スーツの男が大金をちらつかせ早く双子を制圧するよう命じる。しかし連携の取れていない動きで止められるほどウツボの人魚達は優しくない。
    「いーよぉ、ジェイド」
     勢いをつけて走り出したジェイドへひらひらと手を降るフロイドはその手を掴み片割れを支える軸となる。同じくらいの身長、体重の片割れを持ち上げて堪えるフロイドとその遠心力も相まって強力な蹴りを繰り出したジェイドのコンビネーションにより、反撃をしようと構えていた男達が次々となぎ倒された。怯んだ男達へ走り出したジェイドへ後ろから楽しげな声音が届く。
    「ジェイド、ちょっとストップ」
     特徴的な笑い声をあげてジェイドの両手を掴んだフロイドが片割れの股下を潜り抜けて横から奇襲を試みた男の足首を蹴る。男が体勢を崩すと、フロイドは片手で軽々と倒立し男の脳天へ踵を落として床へ叩き付けた。鈍い音を立てて動かなくなった男を見て誘拐犯達は小さな悲鳴を飲み込みヤケクソで突っ込んでくる。
    「おや、ダンスのお誘いですか?」
     静観していたアズールの元へ双子の猛攻をすり抜けた一人が襲いかかってくる。咄嗟に前へ出ようとしたジャミルを制しアズールは相手の拳を握り締めた。そのまま勢いを殺さず犯人の腰に手を添えターンすると握っていた手を離し、空中へ投げ出された男の鳩尾に重たい蹴りを入れる。
    「すみません、先約があるもので」
    「うわっ、痛そ~」
    「ふふ、流石ですアズール」
     響き渡る靴音が白スーツの男には悪魔の足音に聞こえる。コートの裾を翻し涼やかな笑みを湛えたアズールに対し、いつの間にかあれだけいた兵隊は倒れている数の方が多いではないか。こんな筈じゃない。何なんだコイツ等は。歯軋りをした白スーツの男は怒りに任せて拳を振るう。
    「やっとその気になってくれたようですね」
     男の拳を片手で受け止め逃げられないよう力を込めたアズールの瞳孔が真横へ一直線に伸びる。
    「さぁ、一曲踊りましょうか。リードしてくれるんでしょう」
     何も答えられない白スーツの男は自分の背中を汗がつたっていくのを感じた。今目の前で対峙しているのは本当に人間か。首を絞められているみたいに酸素をうまく取り込めなくて唇が震える。握られた関節が耐えうる限界値を超えるまで、そう時間はかからなかった。
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