式神晴明と製作者道満的確に脾臓を狙って打撃を叩きこまれるとは予想の外であった。流石は医療を司る神といったところか、単に彼が師と仰いでいた半神の指導の賜物であったのか。内臓ひとつ破裂させた肉体を一度放棄し、新たな肉の皮にてキャスター・リンボは現在の塒である、幾つかの不安定な空間を繋ぎ合わせた影に隠した空間の中へと帰還した。
日本の、平安時代の首都にて見られた寝殿造り。
蘆屋道満と呼ばわれた法師陰陽師が棲んでいた邸と寸分違わぬ、訳ではなかった。此処は。
「リンボ様♡」
リンボよりは遥かに小柄なものの成人男性として過不足は無い細身の体が突進し、両腕を使ってリンボの胸まわりに抱き着いた。
「お待ちしておりました。おかえりなさいませ旦那様♡」
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