Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    enn

    @en_000

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 2

    enn

    ☆quiet follow

    よくわからないどませい。羅刹王髑髏烏帽子と狂鯖晴明。

    #どませい
    precocious

    宝具レベル3の拙僧への道。「二人目の拙僧が参りました」
    「ふたりめのせっそうが」
     瑞々しい葡萄を飴の薄膜で閉じ込めた、いわゆるぶどうあめを食べていた晴明は首を傾げ、召喚のことをいっているのかと思い至った。
    「そうですか。われらがマスターであれば直ぐに宝具の強化に」
     途端、食堂の電気の光量が一段階落ち、代わりに赤い光と、ブザー音が鳴り響く。
    【非常事態だ! アルターエゴ蘆屋道満、バーサーカー安倍晴明、いますぐ管制室に向かって欲しい!!】
     耳慣れた少女の声が、それなりの緊迫感をもって告げてくる。
    「二人目の……おまえが脱走をしたのでは?」
    「レベルさえ上がっておらぬ分際で何とも、何とも、まさかそんなよもや」
     晴明の右手はぶどうあめを持っている。道満の、右腕が晴明の肋骨下あたりに回され、ぶどうあめごと晴明の体を持ち上げる。
    「思いっきり動揺しているではないか。ひとりで歩けます下ろしなさい」
    「拙僧の毒牙にかかったらどうなさるのかァ!?」
    「レベル1であればまったく敵ではないので捻り潰します」
     毒牙の自覚があったのだなあと一段目のぶどうを咥内で転がし、そういえばこの男のレベル1の姿は見たことがなかったが特に見たいものでもないしな等と、小脇に抱えられながら考える。
    「あんな……、ことや、こんな……ことを、されたら! どうなさるのか!? 泣き落としやら色々と手段はあるでしょう!!」
    「私に泣き落としがきかないのは此の世で一番おまえが理解していますよね道満法師」
     どうやら管制室まで下ろしてもらえそうもなく、諦めた晴明はせめて辿り着くまでに菓子はすべて平らげておこうと、二段目のぶどうの粒に取り掛かった。



    「三人目の拙僧が参りました」
    「よもやよもやだ」
     昨夜、Amazonesprimeにて、明治時代を舞台として鬼退治をするアニメ映画の上映会に何となく参加していた晴明は、覚えたての口語を使ってみた。見上げる黒衣の男は苦虫一京匹噛み潰したような表情を浮かべている。
    「二人目のおまえが散々駄々を捏ねて未だ此処に居るというのに?」
     自室をかつての自邸と変わらぬ造りに設定している晴明の右手側には非接触型タブレットが設置され、左手側の膝の上には巨大な猫科が寝そべり、滑らかに白い中指と人差し指の背で顎裏を撫でられている。蹴り飛ばすか、頭を踏み潰すかどちらにするかと羅刹王髑髏烏帽子は少々悩み、ともかく右足を軽く引いた。
    「二人目のおまえは早々に脱走を試みていましたが、三人目はそうでも」
     ないのか、と晴明の口から零れ出る前に室内の電気の光量が一段階落ち、代わりに赤い光と、ブザー音が鳴り響いた。引いた右足で足元の猫科を蹴り飛ばす機を逃した羅刹王髑髏烏帽子は舌打ちをする。
    【非常事態だ! アルターエゴ蘆屋道満、バーサーカー安倍晴明、いますぐ管制室に向かって欲しい!!】
    「…………ンンー……」
    「三人目のおまえもアグレッシブだな。では」
     向かいましょうと巨大な猫科から引きかけた手は、猫科の巨大な手に捉えられた。
    「おまえも来ます? 構いませんよ、蘆屋道満を捕えるのに蘆屋道満が何人いたっていいだろうさ」
    「構いますがァ!?」
    「構いませぬなァ。参りましょう参りましょう」
     リソースが割かれていない為、平安時代のままの姿で長髪の左右に鈴をつけた胸筋と腹筋を一部曝け出している僧は胡散臭い薄笑みを浮かべ、捉えていた晴明の手を引っ張り立ち上がらせた。



    「道満よ」
    「はい」
    「はい」
     左右ステレオタイプ。否、劇場用の立体音響もかくやの。
    「密着して立たれると圧迫感がすごい。距離を置いてくれ」
     にこやかに、だが太々しく、僧衣姿の二名はビタイチ動く気配もみせずに晴明を挟み込む形で突っ立ったまま。羅刹王髑髏烏帽子は、この二名を問答無用で肉塊に加工しようとしたので晴明の手によって一時的に別室に封じ込められている。
    「レベル1でレベル100を煽るとは、おまえにしては考え無しではありませんか」
    「ご存知でしょうが、後から参りました我等にもあれの記憶は継がれております」
    「うん、知っている」
     めちゃくちゃ耳元で喋るな……とは思いながらも晴明は特に拒絶はせず、すると逆側の耳元で囁かれた。
    「記憶としては識っていても、実体験ではない。何と、何という悲劇でありましょうや。千年の時を経て貴方に巡り会えたというのに、この身にこの手に貴方の感触は無いというのに、脳髄はそれを識っている。これを喜劇といわずして何というのか?」
     さっきからずっと手を握ったり擦ったりしている男が何か言ってるなと、晴明はまたも思ったが反対側が喋りたそうだったので譲ることにした。
    「晴明殿、おやさしい晴明殿。はっきりと申し上げねばお分かりになりませんかな?」
    「四人でまぐわいたいとかいいます?」
    「ンンーーーーーーー!! 情緒!! 情緒を大切にしていただきたい!!!! 現在此処にいる3人でも一向に構いませんし理想は2人ですが」
    「おまえのそういう、主張を食い込ませてくるところ好きですよ」
    「それはそれは」
     そろそろもう左右どちらが喋っているのか分からなくなってきた晴明は、右手と左手をそれぞれの道満に捉えられながら一歩引き、それぞれの道満と向かい合った。
    「まァ、それで納得するのなら」
     構いませんと続けようとしたところ、己が厳重に封した結わいが内側から引き千切られる気配がし、同時に室内に黒と赤の入り混じった劫火の柱が現れた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😍🙏🙏❤❤❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works