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    sangurai3

    かなり前に成人済。ダイ大熱突然再燃。ポップが好き。
    CPもの、健全、明暗、軽重、何でもありのためご注意ください。
    妄想メモ投げ捨てアカウントのつもりが割と完成品が増えてきました。

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    sangurai3

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    ダイ大二次創作 大戦直後のポップとラーハルト
    ラーハルトのある台詞を思いついたところから始まったお話。
    素案で怒鳴り合ったり愚痴り合ったりしながらこんな感じに落ち着きました。

    温かな処刑台カール王国の夜はかなり冷えこむ。
    父親譲りの青い肌は人間よりも気温の変化に強いが、冷たい北風が不快であることには変わりない。
    ラーハルトはマントの首元をきつめに寄せた。

    世界を揺るがす大戦が終結して数日。
    大魔王に対抗すべく集まった者達は今もいくつかの目的の下にカールの砦に留まっている。
    負傷兵の治療、大魔王軍の残党への警戒、そして-勇者ダイの捜索。
    既にほとんどの兵の治療は完了し、新たに魔物が出たという情報も出ていない。ただひとつ残された課題は空に消えた少年の行方だ。
    どこの国にも組織にも属さずただ竜の騎士に生涯の忠誠を誓う者として最終決戦に赴いたラーハルトにとって、大戦後この砦に来る理由は無かった。
    だが戦団の長であるカール国女王からダイを探すのであればここにいた方がより多く確実な情報が集められるはずだと言われ、一応納得した。
    しかして捜索に一向の進展も無い中、一両日中にはほとんどの者が祖国へ戻るという。
    自分も翼竜を呼び寄せ早めにここを立ち去ろう。そう考えながら薄明かり灯る砦の入り口を目指した。

    砦の表門には常に数人の兵が見張りとして立っている。しかし今夜はやけに人数が多い。どうやら明日帰国する者の簡単な送別会を開いているようだ。
    明日の命をも知れぬ大戦の中で知遇を得た戦友との別れを惜しむことを悪いことだとは思わない。
    ラーハルトもまたこの戦いの中で得がたき友を得た1人だ。
    手元に見えるのは酒ではなく温かな紅茶か何かか。宴の間も警備を怠ることが無いのであれば文句を言うつもりも無い。
    しかし和やかに話し合う人々の間を通って砦の中に入るのは何となく気が引けた。
    (裏に回るか)
    裏門は普段閂をかけ閉ざされているが、このくらいの高さの塀であれば簡単に飛び越えられる。賑やかな夜衛を横目にラーハルトは砦の裏手に足を進めた

    「不審者はっけ~ん」
    頭上から降ってくる声に足を止めると、魔法使いの少年ポップが塀の上に腰掛け、ぷらぷら脚を揺らしていた。
    「なぁんで表から入ってこねえんだよ。裏門は閉まってるぜ」
    「知っている」
    「別にこそこそすることねえってのに」
    こそこそしているわけではないが、彼にとってラーハルトの行動は不満らしい。だからと言って言うことを聞いてやる義理も無いのだが。
    フンと鼻を鳴らして跳躍し彼の隣に腰を落ち着ける。ポップはお、と意外そうな顔をした。
    「呑んでいるのか」
    手にしているカップからふわりと葡萄酒の香りがする。
    「ホットワインだよ。ちっと煮詰め過ぎちまったから酒はほとんど抜けちまってら」
    結構旨いぜ、飲むか?と掲げられたそれを思わず受け取ってしまい、そのまま返すのもどうかと仕方なく口にした。甘めの赤ワインに蜂蜜とスパイスの風味。底に沈む欠片は林檎か。
    「悪くないな」
    見た目の印象に反して甘いものも好むラーハルトが素直に賛辞を述べると、だろ?うちの村じゃ毎年冬祭りの日に振る舞われるんだ、つってもおれは今日初めて飲んだんだけどーと少年は笑った。
    どうやら彼の故郷のレシピらしい。年齢的に飲んだ経験が無いのは分かるが、振る舞いの様子を見た記憶だけでよく作れるものだ。ラーハルトは密かに感心した。

    「オレにこそこそするなと言うが、お前は何故こんな所にいる。こんなものを作るぐらい冷えているなら中に入ったらどうだ」
    自分と違いポップは常に勇者と共にあったパーティの中心的存在でもある。今夜はおそらく砦内のあちらこちらで別れを惜しむささやかな宴が催されていることだろう。その輪の中に彼がいなくて良いのか。
    「んんー」
    ほんの少し言いよどんで、ポップは砦を振り返った。
    「何かさあ、あの中ってあったか過ぎるんだよなあ」
    「そうか?」
    砦内が特に温いと感じたことは無い。厚い石壁に覆われてはいるが外とほとんど温度の変わらない部屋が多く、肌寒いくらいだと思うのだが。
    おれにはそうなんだよ、温か過ぎるんだ、とポップは繰り返し、ラーハルトから奪い返したカップに口をつけた。
    「それにこういう飲み物は外で飲んだ方が旨いんだ」
    雪のちらつく広場で寒さと酔いに顔を赤らめながらホットワインを楽しむ村の大人達の姿を思い浮かべ、小さく微笑む。
    「分からんでもないがな」
    祭りのような楽しい記憶など一切持たないラーハルトだが、風情を大事にする感覚は何となく理解できた。確かに甘く温かい葡萄酒の香りは夜風の寒さによく似合う。
    もう一口寄こせと言うとポップは嬉しそうに笑った。

    「なあ」
    ちびりちびりとワインを飲みながら、ポップは尋ねる。
    「ここの皆がもうすぐ解散するのは知ってるだろ。おめえはその後どうすんの?」
    「どうも何も」ラーハルトは答える。「ダイ様を探す。それだけだ」
    「姫さんは一緒にパプニカに来て欲しいって」
    ダイを探しに行くにしても情報共有は続けたいし、これからのこと色々相談したいって。ヒュンケルも行くしさ、どうかな。
    彼にしては静かで探るような言い方に眉を寄せる。
    軽く酔っているようだがそこそこ頭の切れる男だ。聡明な魔法使いは何を思って自分にそんなことを尋ねるのか。
    「お前もパプニカに戻るのか」
    問いに問いで返すラーハルトに文句を言うこともなく、ポップは「あそこはおれの故郷じゃねえから『戻る』は違うかな」と笑う。
    「一旦は行くぜ。どこで何やるにしてもお国のサポートもらえるってのはデカい。多分姫さんトコが一番情報も集まるだろうし」
    でもあちこちとの連絡係もさせられっかな、ルーラのできる奴そんなにいねえし、おれはそれなりに世界中旅してるからよ。
    笑顔と裏腹に瞳の色は昏い。耳に残るルーラの着地音を思い出しラーハルトは目を瞑った。


    閃光と爆音の広がる空から1人落ちてきた魔法使いは、地に着いた瞬間、誰の手も声も振り切って再び空に飛び立った。
    魔法力が尽きるまで飛んで、落ちて。仲間達が休めといくら懇願しても、彼の師の呪文で無理矢理寝かされても、いつの間にか砦を抜け出しまた何処かへ飛んで。
    時には火山の火口近くを走り回って足裏にひどい火傷を負い
    時には冷たい北の海に潜って凍死寸前の状態にまでなり
    彼と意識を共有できるという占い師の少女でさえ行方が掴み切れないほど世界中を飛び回り
    ドオォォンという轟音が砦の外に鳴り響くたび、ボロボロになったポップが倒れ伏している姿を見た。
    恋い慕っているという武闘家の少女に引っ叩かれ、パプニカの王女に「君までいなくなっちゃったら一生恨むわよ!」と涙ながらに訴えられて、ようやくまともに休息を取るようになったのはつい先日のことだ。
    仲間の想いを受けて、勇気の使徒だという少年は表向き立ち直ったかのように見えていた。だがその心の奥に潜む闇は決して晴れることは無い。
    ラーハルトには彼の闇の深さがよく分かる。おそらく同じ闇が自分の内にも蔓延っている。ダイと共に過ごした時間は短くとも、想いの深さで負けないつもりだからこそ。


    「オレは」
    口にしてはいけないと思っていたことを口にする。ワインの甘さと夜風の冷たさ、そして隣に座る少年の瞳の昏さがラーハルトの口を軽くさせた。
    「オレは、ダイ様をお護りするどころか共に飛ぶことも出来なかった男だ」
    ポップがハッとして顔を向ける。ラーハルトはあえて無視して続けた。
    「あの日から何度も夢を見る。ダイ様とお前に代わってあの人形をオレが抱えて走る夢だ。山脈を越え海まで走れれば・・・もしくはすぐ翼竜を呼び空に向かえばあるいは、と。・・・だが、実際は何もできなかった」
    「いくらお前の脚でも無理だよ」ポップはできるだけ冷静に答えた。
    「翼竜の速さでも間に合わねえ。あの時一番速く飛べたのはおれとあいつだ。そしておれは離しちゃいけねえ手を離しちまった」
    後悔の滲む声。空を見上げる横顔はやつれている。決して癒えぬ心の傷を持つ少年を哀れに思ったが更に続ける。
    「お前はオレを詰りたいのではないのか」
    思ってもみなかったラーハルトの言葉にポップの顔は苦く歪んだ。
    「何が忠臣かと。ダイ様のために命も捧げると誓ったのはデタラメかと。そう責めたいのではないのか」
    ポップにとっては慰めより辛い言葉だと分かっていた。しかし今ここで言っておかねばならないとラーハルトは感じていた。
    「おめえこそおれをぶっ飛ばしたいんじゃねえのかよ」返す刀でポップは声を荒げる。
    「何でお前1人おめおめ落ちてきやがったって。何でダイ庇わなかったんだって!お前がダイの代わりに飛んでいけば良かったのにって!!」
    はあはあと全身で息をしてラーハルトを睨みつける。傷と罪を相手の前に晒し、言葉の刃で切りつける。刃の向く先は、互いに己自身だ。
    「言えるか、そんなこと」ラーハルトはぽつりと言った。
    「そうかい、おれもだよ」
    荒くなった息を整えるように、ポップは深呼吸をした。冷えた空気が肺に染みこみ、少し頭が冷える。こんなに感情的に言葉を吐いたのは久しぶりな気がした。
    「お前が生きることをダイ様が望まれた。あのまま飛んでいたらひ弱な人間であるお前は確実に吹き飛んでいただろう・・・お前が生きていて良かった、とオレは思っている」
    ポップも自分と同じように竜の血を授けられたのだとヒュンケルから聞いていた。目の前にいる少年に何の愛着も無いが、彼はバランが救い、ダイが庇った命なのだ。
    「おれも・・・お前が生きてて良かったって思ってるよ。魔族の血を引いてたって黒の核晶には耐えられない。・・・お前はダイの親父さんが生き返らせた男なんだ。ダイもお前が生きることを望んだはずだ」
    「そうか、お前がそう言うならそうなんだろう」
    「そうさ」ポップは笑いかける。
    「おれはダイの親友だからな。あいつのことは一番おれがよく分かってんだ」
    瞳の闇は消えないが、光は少し戻ったように思えた。

    「なあ」再びポップが問いかける。
    「ここはさあ、おめえにとってもそんなに居心地悪くねえだろ?」
    ラーハルトは素直に応と答えた。
    バランの遺志に従いダイを新たな主君と仰ぐことを決めて来たものの、半魔の自分が他の者達と交流することなどあり得ないと考えていた。
    しかし大魔宮を脱出し地に降りてみれば、人間達の軍団には純血の魔族が味方についているし(かの伝説の名工だと聞かされた時には驚きと興奮を覚えた)、獣王クロコダイン以外にも多数のモンスターが戦力として活躍していた。
    ヒュンケルの友人であり鎧の魔槍の元々の持ち主だと紹介されれば誰も皆好意的な目で声をかけてくる。
    オリハルコンの闘士ヒムに至ってはサババの港で手酷くやられた者も少なくないというのに、チウの「彼は正義の心に目覚め、我が獣王遊撃隊の一員となったのだ!だから良し!」という一声であっさり受け入れられてしまった。
    世界各国から集まった人間達、モンスター、魔族。
    地上の平和を守るという一念のみで束ねられた軍団には単純な戦闘力では言い表せない強さがあった。
    「これが勇者ダイのパーティなんだ。あいつがいたから、皆ここまで心を一つにできた。種族に関係無く仲間を大事にする。きっと世界の目指すべき姿がここにある」
    ポップの言うことは理解できた。人間の世界で迫害され、魔族からも半端者扱いされてきたラーハルトにとって、ここは小さな理想郷のようにも思えた。
    ダイはこの者達に愛され、この者達を愛した。この者達を慈しみ守ることこそ主君のためになるのかもしれないと自然に考えられる。
    戦地でありながら愛にあふれた場所。罪人も受け入れる優しさに満ちた場所。しかし、だからこそ。

    「ポップ」
    背後から声がかかった。振り返ればマァムがこちらを見上げている。ラーハルトも一緒だったのね、良かった。と微笑みかけられ少し戸惑う。人間に笑いかけられることにまだ慣れていない。
    「探したのよ。そんな場所で寒いでしょう。レオナが中で待ってるわ。これからのこと話したいって」
    「ええー明日じゃ駄目かなあ?」ポップは困ったように笑う。瞳の闇はさっと奥底に隠された。
    「おれ酔っちまってるから今話聞いても忘れちまうかもしれねえよ?」
    「何でもいいから降りてらっしゃい。酔っ払って外にいたんじゃ凍死しちゃうわよ。ラーハルトも」
    夕食残ってるから、食べるでしょう?とまた笑いかけられる。てめえにやついてんじゃねーよとポップに脇腹をど突かれた。非力な魔法使いの拳など痛くも痒くも無いが、にやついてると言われるのは不本意だ。
    早く来てね、と言い残しマァムは砦に入っていった。無理に塀から降ろさないのは彼女なりの気遣いだろう。特段仲の良い訳でもない2人が一緒にいたことに思うことがあったのかもしれない。
    また別の者が近くに走り寄ってきた。ノヴァだ。寒くないかいと声をかけ、中で皆待ってるよと去っていった。いつからいたのか、窓越しにメルルが心配そうな目を向けている。

    「あーあーしゃあねえ、戻るかあ」
    うーんと伸びをしてポップはふわりと塀の下に降りた。置き忘れられそうになったカップを手にラーハルトも後に続く。追い抜きざま着ていたマントを少年の頭から被せてやった。
    「わぷっ!何だよこれ!中入るのにマントなんていらねーよ!」
    てめえで片付けやがれ!と吠えるポップに、にやりと笑う。
    「そう言うが体が冷えただろう。しばらく着ておけ。お前の言うようにこの中は温かすぎるがな」
    ラーハルトの言葉にポップは目を大きく見開いた。鳥肌の立った腕を擦って、にやりと笑い返してきた。
    「しゃあねえから着といてやるよ。あーもう・・・ホントあったか過ぎて逆上せちまいそうだ」
    「お前には似合いの温さだ」
    もう少し慣れろと言ってやると、おめえに言われたかねえと返された。

    寒さが身にしみるカールの夜更け。
    暖められた部屋で勇者の仲間達が彼等を待ち構えていた。テーブルには温かい食事と紅茶が用意されている。
    慈しみ深い、優しさのこもった無数の笑顔の刃を、ポップとラーハルトもまた笑顔で受け止めた。
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