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    sangurai3

    かなり前に成人済。ダイ大熱突然再燃。ポップが好き。
    CPもの、健全、明暗、軽重、何でもありのためご注意ください。
    妄想メモ投げ捨てアカウントのつもりが割と完成品が増えてきました。

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    sangurai3

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    ダイ大二次創作 原作以前捏造
    前回の続きです ほぼスティーヌさんの話 ちょっとだけジャンクさんと赤ちゃんポップ
    まだ終わらない…

    みどりごは焰の女神に抱かれ-2-まんじりともせず朝を迎えた。
    ポップのことだけは何とか寝かしつけたものの、あとはどうやって時を過ごしたか全く覚えていない。
    ジャンクのことを伝えに来てくれた青年は、スティーヌの様子を気遣いつつも早く戻らねば脱走を咎められてしまうからと再び工房へと走って行った。
    (どうして)
    スティーヌの頬につうっと涙が伝う。
    (やっと平和になったと思ったのに)
    故郷に疎開している間も街に戻って忙しく動き回っていたときも、気がかりなのはいつだってジャンクのことばかりだった。
    口が悪くて少し乱暴で、でもとても愛情深い優しい人。
    国内でも指折りの職人と賞賛されても決して奢らず、王宮勤めと言っても決して権力に媚びたりはしない人。
    (あの人が捕まってしまうだなんて)
    大臣を殴ったとは本当なのか、確かに手は早いが無意味に暴力を振るう人ではない。一体王宮で何があったのだろうか。

    「うああーん」
    大きな泣き声が寝室から聞こえて我に返る。
    (ああ、そうだ)
    夫のことが心配ではあるが、今の自分にはもう1人守るべき者がいる。
    急いで寝室に向かい、丸ごとの命そのままのような泣き声をあげる息子に精一杯の笑顔を向ける。
    「ごめんなさいねえ、1人にして、さびしかったわねえ」
    「うああん」
    「ああ、おむつ替えなくちゃね、ご飯も、着替えも…」
    呆然としていたくとも、幼子を放っておくわけにはいかない。
    (今はとにかくこの子のことに集中しよう。あの人のことはきっとまた何か知らせがあるはずだわ)
    母として為すべき事を思い出し、スティーヌはぐっと涙を拭った。
    「お父さん、きっとすぐ帰ってくるからね」
    自らに言い聞かせるように、ポップに言う。幼いポップはふっと泣くのをやめ、「とおおー」と意味があるのか無いのか分からない音で答えた。
    スティーヌはその様子に小さく笑って、小さく泣いた。
    ----------
    知らせを受けて丸2日。城からは何の連絡も無いまま夜になる。
    職人達もあれ以来訪れないということは、いまだ工房に留め置かれているのだろうか。
    どんなに前向きに考えようとしても、何も分からないまま待ち続けることに心も身体も疲弊していく。
    食事も睡眠も満足に取れないスティーヌに感化されてしまったのか、ポップも今まであまりしなかった夜泣きがひどくなっていた。
    (もし、大臣を殴ったというのが本当だとしたら)
    無理矢理忙しく立ち動くなかのほんの隙間、ふとした瞬間にその考えがスティーヌの頭の中を埋め尽くす。
    (傷害罪…では済まされないかもしれない)
    王宮に勤めていてもジャンクは庶民、対して大臣はほとんどが貴族だ。身分の格差が大きいこの世界において庶民が貴族に暴行を働いて無事に済んだ例は聞いたことが無い。
    (良くて禁固刑…下手をすれば…死刑?)
    何度も考えてはまさかそんなと自身で否定する。しかし疲れ切った心では想像は悪い方向にしか膨らまなくなっていた。宵闇が彼女を更に追い込む。
    (もしかしたら、連座ということもあり得るの?)
    大罪を犯した者がその家族親族まで含めて処罰されることもある。遠い親族であれば国外追放程度で済むかもしれないが、妻、そして子どもであれば。
    昏い想像に押し潰されるように、スティーヌはテーブルに突っ伏した。



     ポップが眠る揺りかごの前に女性が立っている
     頭頂の赤から毛先の金色まで鮮やかなグラデーションを描く長い髪が風に吹かれたように柔らかく靡く 
     纏う朱色の衣もまたゆるく波打ち その裾は重力に逆らってひらひらと宙を遊ぶ
     女性の周囲には焰色の小さな羽根-あの日鍛冶場で見た蝶々だ-がちろちろと炎の鱗粉を零しながら舞っている
     女性はそっと揺りかごに手を差し入れ ポップを胸に抱いた
     (その子をどうなさるのですか)
     スティーヌは声をかけようとしたが言葉が音にならない
     しかし女性はスティーヌの声ならぬ声に気付いたかのようにくるりとこちらに振り向き にっこりと微笑んだ
     そのままスティーヌに近づき ポップを差し出してくる
     受け取ったスティーヌの頬を細い指で優しく撫で もう一度にこりと笑う
     そのまま女性と火の蝶々は 砂の小山が崩れていくかのようにさらさらと溶け消えていった



    ハッと目を覚ます。どうやら椅子に腰掛けたままうたた寝をしてしまっていたようだ。ポップは揺りかごの中で眠っている。
    (あれは夢?)
    やけに現実味の強い夢だった。頬には女性に撫でられた感触が残っているようだ。
    (あの方は-女神様-?)
    そうとしか思えなかった。鍛冶場の職人が精霊さまと読んだ焰の蝶。それを従える朝焼けの空のような髪色の女性。
    何のために現れ何を伝えようとしていたのかは分からない。だがスティーヌはひとつだけ確信した。
    (女神様はこの子を、ポップを守れと仰りたかったに違いないわ)

    がたんと椅子を倒れるのもそのままにスティーヌは立ち上がる。
    書き物机の引き出しから紙を引っ張り出し、ガリガリと荒く文字を書き付ける。
    数枚に渡って手紙を何とか書き終え、封筒に入れる。続いて寝室に走り込む。
    疎開の際に使った肩掛けの鞄に荷物を詰める。着替え、おむつ、お気に入りの小さな毛布。自分のものはいらない、必要なのは息子のものだけ。
    最後に台所へ入り、戸棚の奥から膨らんだ袋を取り出した。結婚してから少しずつ貯めていたゴールド。いつか3人で旅行でもできたらいいと思っていた。だが使い時はきっと今だ。
    朝一番の乗合馬車にポップを乗せる。自分は共に行くことはできないが、馭者に謝礼金を包めば故郷の村まで無事に送り届けてくれるだろう。
    村の親類に息子を託す手紙を書いた。自分達が戻れるまで-万が一戻れなくなってもこの子を守り育てて欲しいと。馭者への謝礼とは別にした金を毛布の中に包んだ。僅かだが養育の足しにしてくれればいい。

    準備を終えた頃には夜明けが近かった。スティーヌはポップを抱き上げる。すっかり眠りが浅くなってしまった息子はぐずぐずとむずがった。
    「ごめんねえ、ポップ。ダメなお母さんで。でもあなたのことは守ってみせるからね」
    ぎゅっと強く抱きしめる。今日が今生の別れになるかもしれない。それでもスティーヌはポップを故郷へ逃がして1人ここでジャンクを待つことに決めていた。
    彼がどんな罪に問われようとも最期まで一緒にいる。それは待ち続けた彼女の中に残った唯一の願いでもあった。
    扉を開けて表に出る。鍵は掛けない。盗られて困るものなど無いし、どうせ自分はすぐ戻るから。街はまだ眠りの中にあった。明け切らぬ朝の空気は冷たく澄んでいる。
    馬車の発着する広場へ向かおうと足を進めたとき。

    薄闇の向こうに愛しい影を見つけた。

    癖の強い髪のシルエット。大きな体躯。自分が今何をしようとしていたかも忘れて、スティーヌは影に向かって叫んだ。
    「ジャンク!!」
    耳になじむ、しかしあまり聞いたことの無い強さの声に呼ばれ、うつむき加減で歩いていたジャンクはハッと顔をあげた。子どもを抱えたスティーヌが走り寄って来る。
    「ジャンク!ジャンク!ジャンク!」
    胸に飛び込んできたスティーヌはただただ彼の名を呼ぶ。ジャンクはスティーヌ、と応えたきり何も言えなくなった。数日ぶりに見る妻の顔は窶れ、溢れでる涙でぐしゃぐしゃになっていた。
    「たああー、とおおー」
    2人の間に挟まれたポップが文句をつけるように声をあげる。潰しかけていたかと慌てて少し体を離したスティーヌは少しだけ落ち着いて夫の顔を見ることができた。

    「…おかえりなさい」
    「ああ、ただいま」
    「おあーりー、まーまー」
    自分も挨拶できるのだというように声を出すポップに、夫婦はふっと笑みを零した。

    3人で家に戻り、ランプに火を灯す。お茶を淹れるからポップをお願い、とスティーヌは息子を夫に託し台所へと入っていった。
    ジャンクはずいぶん久しぶりに帰ってきた自宅を見渡す。
    いつも清潔に片付けられていたはずの部屋が少し荒れている。寝室へ続く扉も開けっ放しだ。
    先ほど家の扉を開ける際、妻は鍵を取り出さなかった。それなりに荷の入る鞄を肩から提げていたのに部屋着のままで上着さえ羽織っていなかった。
    大人しく慎み深いが、気丈で賢い女性でもある。きっと自分と連座して処罰されることを考え、子どもだけでも逃がそうとしていたのだろう。
    窶れきった泣き顔を思い出す。戦乱のさなかにも彼女の涙など見たことはなかった。その彼女があんなにも泣いた。
    ジャンクはほっと息を吐いて膝に乗るポップを見つめる。
    なあ、お前のお母さんは凄い人だなあ。オレはいい人を女房にできたもんだよなあ。
    心の中でそう息子に呼びかける。ポップは父の無精髭を興味深そうにいじっていた。

    しばらくしてポットとカップを乗せた盆を持ってスティーヌが戻ってきた。淹れたての熱い茶をカップに注ぎ、2人でゆっくりと飲み干す。ふうっと深く息を吐き、互いに見つめ合った。
    「何があったのか、どうなったのか、話してもらえる?」
    静かな声でスティーヌは問うた。詰られ罵られてもても仕方ないと思うのに彼女はそうしない。その優しさと強さにジャンクはつい甘えてしまうのだ。ああ、うん、と頷き言葉を探す。
    「そうだな、色々あったんだが、とりあえず結論から言うと」
    ぽりぽりと人差し指で頬を掻き気まずそうにするジャンク。スティーヌは小首を傾げて先を促した。

    「首は繋がったが、クビになった」
    夫の言葉にスティーヌは更に首を傾げた。
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