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    sangurai3

    かなり前に成人済。ダイ大熱突然再燃。ポップが好き。
    CPもの、健全、明暗、軽重、何でもありのためご注意ください。
    妄想メモ投げ捨てアカウントのつもりが割と完成品が増えてきました。

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    sangurai3

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    なんだかおかしなものができたのですが一応置いておきます。暗いです。
    次エピソードの新キャライメージ。タイトルは書いてる間に聴いてた曲名。

    Bydlo古い城の前庭に荷車が着く。
    荷台に堆く積まれていく部品の残骸を青年は穏やかな目で見つめていた。
    門を出て行く荷車を追うように雛鳥の鳴き声が聞こえる。
    生きるための糧を与えてきた親を亡くした子らはいずれその声を失い力尽きるだろう。
    青年は笑う。
    ああ、なんと私は幸福な男であることか。
    世界の叡智を集めたかのようなこの城の主の子として生まれ、その類い稀なる才の一端を受け継いだ。
    才を発揮する場所を与えられ、研究に没頭する日々はなんと充実していることか。
    あの堆い部品の山のひとつとならず生きられることの、何と幸福なことか。

    青年は笑う。

    薄暗い研究室にはありとあらゆる器具が並ぶ。
    端に並べられた部品の残りからは微かな起動の音が不規則に漏れている。
    青年は笑う。
    見知らぬ神とやらの定めたことわり通りにしか動けぬものたちに新たな息吹を吹き込む。
    どれほどの偉業か。どれほど崇高な行いであることか
    この奇跡の行いの価値を理解できるものは一握りであろう。
    その一握りの中に自らがあることの幸福よ。

    青年は笑う。

    父は青年に言う。
    理を疑え。
    理を壊せ。
    理を覆せ。
    理を―生み出せ。
    青年は頷く。
    神にさえ逆らおうとする偉大な父の言葉を違えず守る。
    親を慕い従おうとする心、これもまた理かと問う胸の内の声は聞かない振りをして。

    台に並ぶ無数のフラスコの内の一つを、青年は抱きしめる。
    何れかが彼を育んだ胎であるはずだが、そんなことはどうでもいい。
    元より理の外にある自分には、そもそも心などないのだ。
    溢れる才を、身につけてきた智を、偉業達成のために捧げる。
    この身はそのためだけに存在する。そのためだけは私は在る。
    私という存在には意味がある。価値がある。
    ああ、なんと幸福なことか。なんと充実した生であることか。

    青年は笑う。

    並ぶ部品は浅い起動音を繰り返す。
    小人の腕、怪鳥の脚、野獣の体躯、魔女の目。
    くり抜かれ切り取られた部品も暫くは呼吸を続ける。
    全てが停止する前に、作品を仕上げなければ。
    庭にはまだ堆く積まれた部品の残骸が残る。
    荷車の戻る前に、必要なものを選び取らねば。

    青年は笑う。
    充実した生に。幸福な生に。満たされた生に、笑う。
    理の外で生まれ、新たな理の一部となった身体。
    いずれ動作を停止する日、この身は墓に埋められるいとまもなく灰燼と化すことだろう。
    それもまた、新たな理。
    父と私が生みだした理。
    新たな理の中で生まれ、生き、終わる。ああ、なんと私は幸福な男か!

    青年は笑う。
    自らの生を笑う。
    遠からず訪れるその終焉を、笑う。
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