いとしきとしつき卒業式を間近に控えた校舎はがらんとしていた。夕日が誰もいない廊下を照らす。下校の時間だというのも閑散としている理由だろう。
保健室への引き戸をガラガラとあけ、中に入る。
三年生は自由登校の期間となって、生徒たちは思い思いに卒業までの僅かな時間を過ごしている。
保健室に寄りついていた生徒もそれは同じようで、毎日のように見ていた姿は週に何度かに落ち着いていた。
(こうやって、卒業していくんだよな)
思い出す。まだあどけなさの残る顔だった。それが精悍な青年へとなっていった。ぐんと背も伸びた。今では同じくらいの背丈になって、力もそう大差ない。
カラカラと窓を開ける。換気をしましょうと貼ったガラス窓のポスターの通りに、少しだけ風が通るようにあけておく。さすがに全開にするには寒すぎる。
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