短い話「バデーニさんの目には、きっと俺とは違う世界が見えてるんでしょうね。」
「は?当たり前だろう。知っての通り君の目とは視力が違うし、虹彩の色も違うからな。見えている明度も彩度も、ひょっとしたら色合いそのものが違うかも知れない。」
「や、そういう意味じゃなくて…。あなたは文字が読めて、知識も相当ある。」
「英傑だからな。」
「はは…、だから、えっと、何かを見た時にそこから感じるものが違うと思うんです。たとえばヨレンタさんと出会った掲示板とか。あの時の俺にとって、あれはただの木の板だった。でも彼女やあなたにとってはそうじゃない。」
「…ふむ。目に映るものをどう認識するかという問題だな。」
「知識を得ることで、目の前のものが違った意味を帯びることがある。」
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