なぎれおが授乳手コキする話「おーい凪、チャイム鳴ったぞ」
「えー……めんどくさーい……」
程よい気温。程よい天気。いわゆるお昼寝日和と言えそうな気候の中、屋上にまでしっかり聞こえるチャイムを無視して凪は玲王の膝の上で午睡を貪ろうとしていた。
うら若き男子高校生が、同じ男子高校生の膝枕をしている状況。しかも午後の授業をサボりながらだ。屋上というロケーションは授業が始まってしまえば誰も来ることなく、凪の午睡を邪魔することはない。
「別に半日サボったくらいじゃどうもしねえけどさ……つか、男の膝枕で寝れんの?」
いくらサッカーのために鍛えており、筋肉があるとは言えどう考えても膝は硬いだろう。玲王自身それをわかっていて、こんな状態で寝られるのか心配らしい。つまり、玲王も凪を止めないということではある。
「ん〜……硬いけど枕用意すんのめんどいし……コンクリよりマシ」
そもそも学舎に枕を持ち込むべきではないのだが、いかんせん凪に甘い玲王はそんなことも指摘しない。完全にスルーしていた。
「そこは嘘でも玲王の膝だから寝れるよ♡とか言えよ」
「俺になに期待してんの。……ま、確かにレオの良い匂いするから安眠はできそうだけど」
「うわっ……んなとこ嗅ぐなよ!」
ごろりと身を捩らせて、玲王の腹側へ凪が顔を寄せる。寝返りと思えばなんということはなく、なんなら逆側に寝返りを打ってコンクリートの上に落ちなかっただけマシではあるのだが、それはそれとしてすんすんと嗅がれてしまうとさすがの玲王も困惑せざるを得ない。
「レオの匂い嗅いでるだけだよ」
「お前匂いフェチだっけ……って、いやなんで勃ってんだよ」
体勢が戻って完全な仰向けで凪は玲王の顔を見上げる。対する玲王がなんとなしに視線を背けた先で、視界に飛び込んだのは盛り上がった凪の制服のスラックス。同じ男だからこそわかるその現象に、茶化すように言っては見たが玲王の内心はやや動揺があった。
「えー……? あ、ほんとだ」
「他人事かよ」
指摘されて視線だけを動かした凪はまるで他人事のようにぼやく。凪の意識とは関係がないのか、きつそうに布地を盛り上げるばかりで、凪自身の反応との乖離が激しい。
「レオの匂い嗅いだからかも……レオ、なんとかして」
「なんとかって……お前なあ……」
じっと見つめる瞳にやる気はない。それこそいつも通りの『めんどくさい』に満ちているのだが、拒めなかった────どころか、凪がねだることならばなんでもしてやりたい気持ちにすらなっていた。
「……仕方ねえな……手で抜いてやっから、それでいいか?」
「ん〜……おねがーい」
まるでおんぶをねだるような軽いノリ。ごそごそと取り出された性器はよく下着と制服の中で抑えられたと思うはどには完全に勃起しており、反り返ったそれに思わず玲王もややたじろいだ。
「おま……デカすぎねぇ?」
「俺のデカいの? あんま考えたことないや」
無関心、無頓着。他人と比べようという考えがない凪なのだから当たり前ではある。とはいえ、たじろいで眺めているだけではどうもならない。外気に触れているせいなのか、ぶるりと震える性器に玲王は手を伸ばした。
「……は、あっつ……他人の触んの初めてなんだけど、どうやんのが正解なんだ? いつもどうやってる?」
自分自身の性器に触れるならまだしも、他人の性器に触れるとなると勝手がわからない。筋も、形も、反り方も、何もかもが違う。
「いつも……? なんか適当に抜いてる。めんどくさいけど出さないとだし」
「適当なぁ……じゃあ適当に扱くから、痛かったら言えよ」
「あーい……んっ……」
白昼堂々、遠く校庭で授業を受ける生徒たちの声を聞きながら、同性の性器を扱いている状況は異質としか言えない。しかしそれに対してなんら嫌悪感を抱かないのはどうしてなのか。
「ぁ……自分でやるより気持ち良い……」
「ならいいけどよ……ん、なんだよ?」
漏れ出した先走りでぐちゅりと音が立つ。なんとも言えない空気を味わっていた玲王だが、不意に伸ばされた凪の手のひらに首を傾げた。
「んー……頭の下、硬いの当たってんなぁって」
「え……っ……」
凪の頭の下。すなわちそれは玲王の股間であり、何を示すのか賢いがゆえに一瞬で理解した玲王は思わず手の動きを止めてしまった。
こんな異質な状況で、自身も勃起するなど考えもしなかった。しかも指摘されるまで気付くことは出来ず、自身で認知した瞬間に首までが一気に熱くなる。
正直に言えば、性的な興奮を感じた覚えはない。いつものように凪が面倒くさがるからこうして世話をしているだけで、興奮するような要素はなかったはずだ。しかし現実は見たままである。
「い、いいから……出すことだけ考えろよ」
「ん、っ……レオ、ちょっと屈んで」
「は……? うわ、ちょっ……なにしてんだよ……⁉︎」
自分まで勃起したからなんだと言うのだ。今は凪の性器を構うことが最優先だと再び手を動かし出す玲王だが、伸ばされたままだった凪の手がするりと自身のネクタイを引き抜いたことでまた手が止まる。
「いーから、早く屈んでよ」
有無を言わさぬ声に上半身を倒すと、ネクタイだけでなくブレザー、ベスト、シャツと一つずつ開かれて、玲王の白い肌が凪の目の前に晒された。その間も居た堪れなさから手を動かしていたが、気付けば手の中は凪の性器から溢れた先走りでべっとりと濡れている。すなわち凪の限界は近いらしい。表情に出ていないあたり、わかりにくいことこの上ないが。
「な、ぎっ……うぁっ……」
「ん、む……んっ……」
まるでそれは、赤子のような行動。
腕でさらに屈むようにさせられた玲王の胸に、凪が吸い付く。舌先をゆっくり筋肉の筋に這わせたかと思えば、母親の乳を飲むかのように吸われて、玲王の瞳が困惑の色に染まった。
そんな場所に他人が唇を触れさせることなど初めてで、確かにアダルトビデオでそういったことをするのは知ってはいるが、それにしても凪がしてきた意味がわからない。
じゅう、と音を立てて啜ったところで当然母乳が出るわけがないのだが、凪は唇を離そうとしない。数回吸いついた後、強く吸い過ぎてはいけないと気付いたのか、動物が傷を舐めるように舌を這わせ出す。ぬるりとした舌がゆっくり乳輪から乳頭までしつこく舐め回すせいで、ぞわぞわとしたものが玲王の下半身に集まっていた。
「ぁっ、う……な、に……してんだよ、なぎぃ……っ」
凪の頭の下で、どんどん欲望が反応を示す。苦しいと悲鳴を上げている状況が理解出来なかった。性的な興奮を感じるような状況だとは思えない。ただ凪にねだられるまま性器を扱いていただけ。ただ乳首に吸い付かれているだけ。それだけで、なんら性的なことを考えたわけではないと言うのにこんなにも身体が反応を示していることが玲王には理解出来ないのだ。
「ん、ぁっ……は……あ、赤ちゃんじゃねえんだからやめろよな……ひっ⁉︎」
「……なに離れてんの。反対側もするんだからちゃんと屈んでてよ」
唾液に塗れた乳首がようやく解放されたと安堵に身を離そうとした玲王だが、当然凪はそれを許さない。背中に回した腕で強制的に身を屈ませて、まだ触れていなかった反対側に唇を触れさせた。
「う、くっ……んんっ、ん……」
「は……手、ちゃんと動かして、レオ」
こんなことをされて集中出来るわけがないと言ってやりたい玲王だが、反論は口から出てこない。甘く上擦った声を抑えるだけで精一杯だった。
先ほどまで丹念に舐めしゃぶられていた片方と同様に、もう片方の乳首も舌と唇で責められていく。コツはわかったのか、触れ方も探るようなそれではなく理解した上でやっているあたりタチが悪い。
「は、ふっ、ぁっ……は、早くっ……イッちまえよばかっ……」
「あー……なんかその顔、イイかも……っ、くっ……」
凪の瞳に映り込んだ玲王の顔がどんなものなのか、それは凪にしかわからない。しかし、それが凪の興奮を誘ったことだけは確かで、搾り上げるように扱いた瞬間、びゅくびゅくと溢れ出した精液が玲王の手を汚した。
「ぁ……べとべとじゃねえか……」
「はぁ、は……レオも、イッていいよ」
「え、ぁ……んぁっ……うそだろ、やめっ……ぁ、あ、あ……ッ!」
手のひらにこびりついた精液を見て苦笑していた玲王だが、まだ終わりではない。凪の片手が放置されていた唾液まみれの乳首に触れ、もう片方は再び唇が吸い付いていく。想定していない展開にびく、びくんと大きな震えのあと、じゅわりと下着が濡れる感触。そして玲王の身体が脱力した。
「……気持ち良かった、レオ。レオも乳首吸われて良かった?」
「う、ぅ……なにしてくれんだよ……」
無邪気にも思えるふうに聞かれたところで上手く答えられるわけがない。じっとり濡れてしまった下着の中の不快感以上に、どうしてか凪の瞳に射抜かれている状況に鼓動が早まるのを止められない玲王だった。