ビチャッ。扉を開けたチャーリーの顔に飛沫が飛んだ。手で触れてみるとそれは血だったので、脳味噌じゃなくてよかった、そう思いながらハンカチを取り出す。アレ目に入ると痛いのよね。顔を拭ってからポケットにしまう。
「えーと、今大丈夫かしら?」
大丈夫じゃなさそう……くずおれた男を見下ろす。これって人間の死体じゃないの?しかも出来たてホカホカのやつ。
「……君の方こそ大丈夫?」
チャーリーが現実逃避気味に思考を飛ばしていると、男の声が響く。
カツ、カツ、と靴音を立てて現れた男は白シャツにきちりとベストを着て、清潔感のある出で立ちをしていた。真面目そうな、ともすれば神経質そうにも見えた男は、眼鏡の弦を上げて彼女を見やる。片手に持つ血濡れたナイフだけが違和感を放っていた。
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