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    罪深き珀雷

    @koinosasimi

    普通に上げれないものを上げるかもなと

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    罪深き珀雷

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    ちょっと早いけど、エンさんのバレンタイン

    誰だって君のチョコが欲しい

    厨房で忙しなく何かを作っているエンに忍び寄る背の高い影。
    「今年もやってんのか?」
    「ジャック団長…!えぇ…今年も皆に教えてたら自分が作る分を忘れてて……」
    「ふぅん…」
    ジャックは天板に置かれた焼きたてのクッキーを見ると、うさぎ型のを一つ手に取って食べた。
    「あ…!団長、つまみ食いはやめて下さい。団長の分だけ一つ減らしますよ」
    「ケチケチすんなよなー。ま、これで先制攻撃は出来たな」
    「?」
    「こっちの話だ。じゃ、頑張れよ」
    嬉しげに去っていくジャック。それから少ししてセッケが入ってきた。
    「エンさん!何か手伝いましょうか?フッハ!」
    「じゃあ、ラッピングをお願いしようかな」
    「お任せ下さいよ、フッハ!」
    張り切ってピンクの紙袋にクッキーを詰めていくセッケ。
    だが、途中紙の端が指先に掠ってしまう。
    「いっ……!」
    「セッケ君大丈夫かい…!?ああ、どうしよう絆創膏が……ちょっと、ごめんね」
    エンはセッケの左手を自分の口元に持ってくると、傷に口付けた。
    「舐めたら治るって……せ、セッケ君!?」
    突然のエッチなお姉さんムーブに童貞が耐えれるわけがなく、どこかのジョー宜しく真っ白になるセッケ。
    「ありがとうございます……っ」
    「何でお礼を…?」
    ドキドキしながらも手伝いを終えると、セッケに紙袋を渡したエン。
    「お手伝いありがとう…。それにいつもお洗濯やお掃除頑張ってて偉いね」
    「い、いや、当然のことっすから…」
    照れながらスキップで帰るセッケ、数秒後に団長にシバかれるとも知らずに。

    翌日。
    団員達にお菓子を配り終えたエンに壁ドンで詰め寄るジャック。
    「俺の分はあるよな?」
    「つまみ食い分は減らしてますからね…」
    紙袋を渡したが、ジャックは退こうとしない。
    「団長……んっ…!?」
    どうしたのかと顔を見上げて様子を伺っていたらキスをされる。しかもディープなやつ。
    唇を離すとエンは壁に背をもたれさせながら、膝を付いて体を震わせる。
    「これから外に出るのに……」
    「それ渡しに行くんだろ?他の奴にも」
    行かせたくなくて、部屋に連れ込もうとすると、エンの魔導書が勝手に開いて走るキノコ君(室内用サイズ)が出てきてジャックを吹っ飛ばした。
    「キノコ君…!ありがとう」
    走るキノコ君はガッツポーズをしてエンを助け起こすと、外までエスコートする。
    「本当に助かったよ。…でも、ごめんね君は食べ物が食べれないから、こういう事でしかバレンタインのプレゼントあげれなくて…」
    走るキノコ君の頬にキスをして優しく抱きしめると、走るキノコ君は片手を天に突き上げてから消えた。
    「生涯に一片の悔い無し…みたいな顔してたなぁ……さてと、渡しにいかなきゃ」

    王貴界に足を踏み入れたところで、誰かが目の前に降り立った。
    「ユノ君!女の子達に囲まれてるかと思ったよ…」
    「いや、さっきプレゼントを貰い終わったところです」
    「でもってアタシとデート中なのよ!」
    傍に居たベルがエンの眼前に迫る。
    「ユノに何か渡す気ならさっさと終わらせてよね!」
    「う、うん……あの、ユノ君…食べ飽きてるかもしれないけど…」
    エンが紙袋を差し出すと受け取ってから、ユノも可愛くラッピングされたキャンディを渡した。
    「綺麗だね…ありがとう、ユノ君」
    「いえ。お菓子、大事に食べますね」
    クールな顔が微笑んだので、エンは思わず頬を赤く染める。
    それを見てユノは内心テンションが上がったのだった。

    暫く歩いていると、後ろから威圧的に声をかけられた。
    「おい、キノコ野郎」
    「…ソリド君かい?探してたんだよ」
    「俺を?」
    何も知らないフリをしているソリドだが、実はエンが来るんじゃないかとこの辺で待っていたのだ。
    「口に合えばいいけど…」
    差し出された紙袋を奪うように受け取ると、ソリドはその場で一つ食べた。
    「…フン、悪くねぇとだけ言ってやる」
    「そっか、良かった…」
    エンが去った後、ソリドは近くの街頭に手をついて項垂れる。
    また意地悪な態度をしてしまった…と。

    昼過ぎになって、珊瑚の孔雀本拠地前に来たエン。
    しかし、本拠地の前には女性の列が。
    「やっぱり……」
    女性達が持ってるのは高級そうなのが一目で分かる箱や大きめの紙袋。
    自分の持っている質素で小さい紙袋のなんと惨めなことか。
    夜になれば列もなくなっているだろうと、一旦引き返すことにしたのだった。

    三日月が上がり始めた頃全てのプレゼントを確認し終えたキルシュは両膝を絨毯に付けて仰々しく嘆く。
    「ない!!エンからのプレゼントがない!!というか来ていない!!何故だ!!」
    ド本命から貰えなくてそのまま床の上で胎児になるキルシュ。
    「私はパサパサになったパウンドケーキの端っこ…」
    と落ち込んでいると……。
    「キルシュ君…服が汚れちゃうよ……?」
    「エン!!!!」
    シュピーンッと起き上がると、エンの体を抱き寄せて額や頬、唇にキスを降らせる。
    「キルシュ君、あの、これを…」
    お菓子を渡すとキルシュはそれを掲げて踊り出す。
    「そ、そんなに喜ばれると照れちゃうな……」
    「今日一番の楽しみだからね!今日はもう遅いから泊まっていくかい?」
    と提案すると、またエンの魔導書が勝手に開いて走るキノコ君がタックルしてキルシュを遠くに追いやった。
    「キノコ君?」
    走るキノコ君はフリップを出した。
    『妹さん達がチョコケーキ作って待ってるヨ!』
    「そうだったね。じゃあ帰ろうか。キルシュ君、またね」
    帰っていくエンを見送りながらキルシュは誓う。
    いつか、あのキノコに勝つと。


    妹達が愛情たっぷり注いで作ったチョコケーキはとても甘くて美味しくて、夢にまで出てきたのだった。




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