人でなし、はじめの一歩を。太陽が雲に隠され薄暗い。頬を撫でる風は少しだけ冷たく、身体の熱が奪われるような錯覚さえする。
今日も今日とて遠くでちりちりと鳴る風鈴が酷く耳障りだ。
さぁ、今日は誰と夜を過ごそうか。
桜の色の違う両の目がきょろ、と道行く人達を目で追っていると一際目立つ大柄な男……背中を丸くして、長い髪をゆらゆらと揺らしながら歩く杉下京太郎が目に入った。
桜は(やった、イイヤツ見つけた)とにんまりと目を細めのそのそと歩くソイツに声を掛ける。
「よっ、杉下。今日ヒマ?良かったらオレで遊ば……な…………どうしたの」
ぎょっとした。
いつもだったら声を掛けた時点でオレを殺す勢いであの鋭い眼光をむけてくるのに。
目は伏せられて鋭さはまるで感じられない。いつもの猫背だって更に丸められて項垂れている。酷くオレを罵る唇はふるふると震え、浅く呼吸を繰り返しては空気の抜ける音だけが漏れていた。
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