ハニートゥルンバの香る午後昼食を食べ終わると、自分の部屋に戻って仮眠をとる。三十分ほど意識を落とした後、目覚めたら窓際の椅子で本の続きを読む。黙々とページを捲っていると、決まった時間に祖母の声がして、それを合図にいったん本を閉じる。今日のおやつが何であるかは、キッチンからリビングに流れ込む甘い香りですぐにわかった。
牛乳で煮出したコーヒーと、手作りの甘いお菓子。読書の間に挟まれた優しい時間。
それがアルハイゼンの、ささやかで、かけがえのない楽しみであった。
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目を閉じていたら、いつものように甘い香りが鼻孔をくすぐる。部屋まで香りが漂ってくるということは、扉を開けっぱなしにしていたのかもしれない。今日のおやつは何だろうかと半分眠った頭で考える。鼻先に意識を集中すると、深みのある香りの中にスメールローズを感じた。
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