「お母さん!!」
「はいはいもう迷子にならないでね」
よく見かける”仲のいい親子”の会話が聞こえてしまった。もう望んでも手には入らないのに
確かに俺には兄さんが居て一緒に沢山の思い出があって寂しいなんて感覚はなかった…けれども沢山いる仲のいい友達の話すお出かけした時の話やこんな事して怒られたんだけど!!みたいな愚痴がいつも羨ましかった。記憶の中じゃいつも帰ってきたてで疲れて寝てたり起きていたとしてもどこか疲れっぱなしな雰囲気を纏っていたから。1度幼い勇気でお出かけしたいと言ってみたけれども
「ごめんね今疲れてるからランなら良い子で待っていられるでしょう?また今度行きましょ」
「そうだな…本当にすまない」
なんて言われて
「大丈夫だよ!!むしろ父さんと母さん疲れてるのに迷惑なこと言ってごめんね!!」
と空元気で答えたのが懐かしい。
ふたりともつかれてるんだめいわくかけたらこまらせたらだめなんだいいこじゃないといいこじゃないと…
くしゃくしゃになった親子遠足のプリントも兄さんの温かさしか知らない身体も友達の家族に対する羨ましさも見ないふりできてたらきっと楽なのに追い求める自分が馬鹿みたいだ。
結局残ったのは暗闇に残されたまま独りの小さい頃の俺と知らず知らずのうちに自分にかけ続けて雁字搦めになった良い子の呪いだけだ。
兄さんも気付かないような小さな雨が今日も降った