染まる木々と、君の頬。「ねぇ、MC?」
RADの帰り道、手を繋いで歩くシメオンが不意にこちらを振り返ってたずねた。
「ん?なぁに?」
夕日に照らされたその顔に思わず見とれながら返事をすると、キラキラと輝くターコイズの瞳が興味津々でこちらを見つめた。
「人間界にはさ、『紅葉』っていうのがあるんでしょ?秋になったら木々の葉っぱが色づいて綺麗なんだって、写真を見せてもらったことがあるんだ」
「そうだね。山が赤や黄色に染められて、それを見てると『秋だなぁ』って実感するんだけど…そういえば、魔界にはないね?」
言われて初めて気が付いた。
魔界に来てから、四季を体感することはあまりない。
常に暗くて寒くて、夏はディアボロ所有のプライベートビーチを借りるか天界に遊びに行かないといけないほど、暑さや眩しさを感じられることはない。
4511