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    egotabunji

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    egotabunji

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    雑営団地工業棟三階 電球屋の話

    あんた、そんなとこうろついてどうしたんだい?
     
     ははあ、初めてだね。風俗棟に来たんなら賭け酒屋に行くのが当然だろう。
     どんな所かって? 賭け酒屋じゃ酒は買えないよ、賭けに勝ったら飲めるのさ。ただ律儀に金を賭けるやつなんてそうそういないね、そんな貴族めいたやつらは団地にゃ来ない。じゃあ何を賭けるって、だから目玉とか耳とか、身体の一部分を賭けるのさ。一番お手軽なのは血だね、目はおすすめしないよ。目を賭けるとしまいにゃ義眼屋の世話にならなきゃいけなくなる…瓶ソーダのビー玉で代用したっていいけど、目の奥に落ち込んだら大脳破裂でお陀仏だ。でも血ならみんな持ってるし、減ったらまた増やせばいい。だからみんな賭け酒屋では血を賭けるのさ。そら、そこに血売屋があるだろ、みんなあそこで血を抜いてストックしておくのさ。減ったら打ってもらうこともできる、よくできた血液銀行だよ。昔はここ以外にももっと血液銀行があったんだけど、経営が悪くなるとどこも混ぜものをするようになってきてねえ…ひどい店なんか腐った牛乳を混ぜるところもあったよ。もちろんそんなもの打ったら命はないよ、いや、死ねればいい方かな、運が悪けりゃ半身不具になって一生うめいたまんまそこらの乞食みたいに…でももう、そんな店も全部つぶれてしまった。今やっているのは美安さんの店だけさ、あそこは客に厳しいけど昔から信頼できるからね。
     え? 賭けたものを何に使うかって? 目や耳なら分かるだろ、生体移植の業者に卸せばものによっちゃかなりの金になるんだから。特に目玉を欲しがる奴なんてこの団地にはごまんといるんだ、賭けに負けて目玉を取られた連中が後になって目玉を取り返しに来ることもあるくらいだよ。血は…血吸いの蝙蝠人がよく食べるのに血餅ってあるだろう、それなんだが、まあ普通に売られているのはだいたい食用犬の血でこさえた奴だね、しかし裏で出回ってる血餅ってのは実は人の血から作ってるんだ。面白いだろう、それなりに栄養価も高いらしいね、だからって直接人を噛もうってことにはならないらしいんだからうまく出来てるよね。あとは食用蛭を飼うのに使ったり…なんだあんた食用蛭見たことないのか。こんな一抱えもあるでかい蛭で、どんな汚いところでも育つけど餌は絶対に血じゃなきゃいけない。逆に言うと血さえあればどんな汚い環境でも育てられるんだから、賭け酒屋のオーナーはこいつを育てて肉にして売ってるんだ。革はなめせば蛭革になる。肉の延べ金なんて呼ぶやつもいるんだ、有り金はたいて蛭を飼うことを蛭貯金なんて言うやつもいる。ただ飼うのにはコツがあってね、絶対に、体の中も外もだよ、絶対に傷をこさえたままで蛭に近づいちゃならない。包帯なんか役に立たないよ、ひとたび血の匂いをかぎつけたら一滴残らず吸いつくされるよ。素人が飼ってもまあ大体は食われるだけだね、で、そんな事故があった所には必ずよく肥えた蛭がいるもんだから、目ざといやつが一足先にかっぱらってく。キャトルミューティレーションなんてのは大体逃げ出した食用蛭の仕業だね。まあ誰かに見つかる前に自警団のやつらが押収することも珍しくないんだけど、あいつらだって証拠品なんて言ってるくせして裏であの蛭をどうしてるか分からないよ。うまく売ればたいそうな金になるんだから。
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    egotabunji

    MAIKINGSCALY FOOT 第5話ためし読みその日の分署は文字通り、殺人的な忙しさだった。
    蜂の巣を突いたような喧騒、飛び交う怒号、資料作成を任された新人のイタチ男が机にでもけつまずいたのか、コピー用紙の束がわさあっと宙を舞う。その様子をぼんやりと眺めながら、与野新留間は空のマグカップをもう一度傾けた。コーヒーの最後のひとしずくが、粉っぽい苦さを残して口の中へ消えた。
    ここは自警団本部中央自警署東興分署、まちづくり課特区班。通称「ゴミ処理班」。スラム区画の拡大や不法住民の増加により年々治安が悪化している東興都周辺区域において、「徴税義務を全うせしあらゆる国民の安全かつ健全な日常生活」を、「国益に仇なす危険分子」より守るべく指揮された、「清廉潔白な正義執行の切り込み部隊」である。聞こえはいいが、実際のところは、中心街めがけてウジのように湧いて出てくるスラム住民を片っ端からひっ捕まえ、適当にしばき倒してまた元のとおりスラム街に押し込むだけの、単調な、それでいて非常に骨の折れる業務を一手に引き受ける部署なのだから、殺人課の警部班や捜査班など自警団の花形とも言えるような他部署から「ゴミ処理班」と揶揄されるのも無理はなかった。班員はわずか 4208

    egotabunji

    REHABILI雑営団地工業棟三階 電球屋の話あんた、そんなとこうろついてどうしたんだい?
     
     ははあ、初めてだね。風俗棟に来たんなら賭け酒屋に行くのが当然だろう。
     どんな所かって? 賭け酒屋じゃ酒は買えないよ、賭けに勝ったら飲めるのさ。ただ律儀に金を賭けるやつなんてそうそういないね、そんな貴族めいたやつらは団地にゃ来ない。じゃあ何を賭けるって、だから目玉とか耳とか、身体の一部分を賭けるのさ。一番お手軽なのは血だね、目はおすすめしないよ。目を賭けるとしまいにゃ義眼屋の世話にならなきゃいけなくなる…瓶ソーダのビー玉で代用したっていいけど、目の奥に落ち込んだら大脳破裂でお陀仏だ。でも血ならみんな持ってるし、減ったらまた増やせばいい。だからみんな賭け酒屋では血を賭けるのさ。そら、そこに血売屋があるだろ、みんなあそこで血を抜いてストックしておくのさ。減ったら打ってもらうこともできる、よくできた血液銀行だよ。昔はここ以外にももっと血液銀行があったんだけど、経営が悪くなるとどこも混ぜものをするようになってきてねえ…ひどい店なんか腐った牛乳を混ぜるところもあったよ。もちろんそんなもの打ったら命はないよ、いや、死ねればいい方かな、運が悪けりゃ 1371

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