1220「寒いなァ」
はぁと息を吐いたり手を擦り合わせてどうにかこうにか暖をとろうと動くその小さな背中にひとつの影が近づく。
「あっためてやろうか」
その大きな体躯でぐるりと包み込むように背後からのしかかってきたのはこの船の副船長、ベン・ベックマンだった。
「副船長、どうしたんですか。交代時間でも無いしそもそも次の見張り番は副船長じゃないですよね」
「そうツレねぇこと言っていいのか?」
そう言って副船長はちゃぷりと手元の瓶を揺らしてみせた。
「このクソ寒ぃ中頑張ってるお前さんにと思ったがそーか要らねェってんなら」
「いります!飲みます!ください!寒い!」
「正直で結構。ならここに座ってくれ」
ここ、と示されたのは三角座りした副船長の膝と膝の間。
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