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    kazu1003iroiro

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    kazu1003iroiro

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    あの時、二人が出会わず秀にも会えずアイドルの道を進むことがなかったら。
    未成年が立ち入るべきではない場所へ、百々人踏み込んでしまっていたら。
    のIF設定10年後鋭百。
    途中で止まってます。続きは書く予定なし。
    直接描写はありませんがモブ百々、鋭心が薬を盛られるシーンなどがあるため地雷が多い方は注意してください。

    IF鋭百「あ、マユミくんだ」
    かけられた声に、思わず振り返っていた。
    振り返ってから、ああしまった、と思った。声をかけられるのはよくあることで、いちいちそれに反応していては身が持たない。それなのに、柔らかな、親しみすら感じられる声色に何を考えるよりもまず体が反応してしまっていた。
    繁華街のはずれ、人通りの少ない通りにその男は立っていた。
    柔らかな髪質の金糸雀イエロー。その下で柔らかく笑んだマゼンタ色の瞳はこちらをじっと見つめていた。
    「こんなところで会うなんて、凄い偶然だね」
    「……どちら様ですか?」
    友人にかける様な親し気な言葉だが、目の前の男に見覚えはなかった。すらりとした手足に甘さを感じさせる顔立ち。芸能界も広い、もしかしたらどこかの現場で顔を合わせたことがあるのかもしれない。けれどこんなに印象的な男、一度会えば記憶に残りそうなものだがいくら記憶を探っても出ては来ない。
    「あー、面識はなかったかも。10年くらい前に君と僕と、あと一人。結構有名になったことがあるんだよ。都内の有名生徒会長ってわかるかな?」
    「有名生徒会長……?」
    「知らない?マユミくんが3年の時にそこそこ同世代の間で話題になってたと思うんだけど……もしかしてうちの高校だけだったかな」
    確かに高校3年で生徒会長をしていた時、他校の2年と1年の生徒会長と並んで噂されていた記憶がある。2年はともかく1年で生徒会長は珍しいなと思ったが、特に学校間の交流もない高校だったのもあり、噂を耳にしただけで終わった。
    「その時の2年の生徒会長が僕」
    「……すまない、そんな噂を聞いた気もするが名前までは」
    「そっか……そうだよね。僕、有名って言われる割にそんなにすごい功績とか残したわけじゃないし」
    急に話しかけちゃってごめんね、と目の前の男は笑ったが、そこに影が見えたのは気のせいだろうか。
    「じゃ、僕はこれで……」
    「っ、まて!」
    くるりと踵を返しかけた男を、気付けば大きな声で呼び止めていた。
    用もない相手を、呼び止めてどうするつもりだ。
    なに?と返事は返ってきたものの、もうその瞳に先ほどまでの親し気な気配はない。途端、整った顔立ちがどこか冷たいものに感じられる。それに少し臆しそうになる自分を叱咤し、口を開く。
    「……名前を、教えてもらえないだろうか」
    そう伝えれば、想定外だったようで驚いたように男は目を見開いた後、苦笑を漏らした。
    「えー、別に大した名前でもないから気にしなくていいよ」
    「教えてほしい。次に会った時は名前を呼べるように」
    「……君ってすごい堅物って昔は言われてたけど、実は意外に手が早いタイプ?」
    「どういう意味だ?」
    「うわ、素だったんだ」
    うなじに手をあてあー、とかうーんとかうなった後、さまよわせた視線をこちらに向け、その薄い唇が求めていた言葉を紡いだ。
    「百々人だよ。花園百々人」
    「花園百々人……百々人」
    「わぁ、いきなり名前呼びなんだ」
    「お前も俺の名前を呼んでくれて構わないが」
    「別にいいよ、マユミくんって呼び方の方がかわいいし」
    もう28になる男にかわいいはないだろう。そう言おうとしたが、存外彼から呼ばれるその呼称は嫌ではないなと思って口をつぐんだ。
    「じゃあね、マユミくん」
    今度こそ一度も振り返ることなく、金糸雀色の髪をした男は軽い足取りで繁華街の方へと去っていった。
    柔らかな黄色が雑踏の中に紛れ見えなくなるまで、俺はずっとその場で見送っていた。








    鋭出演していたドラマの撮影がクランクアップを迎え、打ち上げが行われたのは繁華街にあるとある居酒屋だった。人ごみをあまり好まないため用もなければ立ち寄らない場所だが、以前そこに踏み入れたのは何時だったか。思考を巡らせ、ふと記憶の片隅に柔らかな黄色が思い浮かぶ。あの奇妙な男に声をかけられてから2か月ほど経っていた。
    ドラマの主演だった俳優の乾杯の音頭から始まり、銘々仲の良い演者同士で撮影の思い出話で盛り上がる。そんな中で、監督のすぐ隣に座り直々にその演技力をべたべたに褒められるという針の筵のような状態になっていた。
    毎週出演はするものの役どころの重要性はあまり高くなく、セリフ数も多くないというのにこのような状況に陥るのもひとえに未だ絡みつく“眉見二世”の看板のせいだった。『さすがあの眉見征一郎の息子だ』『存在感が違う、もし君の都合がつけば準主役、いや主役だって任せられたのに!』誉め言葉としてぶつけられる言葉がどんどん周りの空気を悪くしているのを、早々に酔いが回った男は気づいていない。周りの冷たい視線を浴びながら、控えめにそんなことはとやんわりと反論してもこの手の輩はどんどんヒートアップして演者達の演技のダメ出しをしていくものだから、こみ上げる言葉を大して美味くもないビールで飲みこみ、あいまいな相槌を返すことしかできなかった。
    一度手洗いに席を立ち、そのタイミングで別の席に移った監督の男は年若い女性陣達に囲まれてちやほやとされて大層ご満悦な表情だった。媚びを売るよりも売られる方が好きな人種なのは知っている。もう仕事は済んだとばかりにこちらを見ようともしない男に安堵のため息をつき、自席へと戻る。近くにいるスタッフや演者達はちらちらとこちらを見ることはあっても声をかけてくることはない。人当たりには気を付けているし、演技だって全力で取り組んで周りとの協調性も怠らないようにしている。だがああいう眉見のネームバリューにすり寄るような人種に絡まられると、縮めようと努力した周りとの距離が一機に遠のく。それでも近寄ってくるとしたら、遠巻きに鋭心を見ている女性スタッフや擦り寄り目的の演者達くらいだろう。どこかねばつくような視線に、ため息を飲み込むように飲みさしだった何敗目かもわからないハイボール一気にあおる。近くにいた幹事メンバーへ今日はもうお暇すると伝えた。札を多めに払えばもっといてくれればいいのにとニヤニヤと笑って返されるので、明日も別の現場があるからと当たり障りのない答えを返して店を後にした。

    (1人……いや2人か?)
    店を出てマネージャーへ帰宅すると簡素に連絡を入れた後駅へと向かっていたが、先ほどにも感じたねばついた視線がまだ感じるのに気づいた。適当なコンビニへ入り、適当な陳列棚を見ているふりをしていれば、のこのこと店内に入ってきたのは先ほどの宴会場にいた女性2人組だった。直接話した記憶はないが、たしか何度かエキストラ役で参加していたような気がする。
    面倒な気配を感じそっと息を吐き、きょろきょろとこちらを探して店内に足を進める二人に見つからないよう時間差で入れ違いに店を出ると駅とは別方向へ足を進める。数十メートル先で物陰に隠れてコンビニの入り口を確認すれば、ターゲットがいないことに気づいた2人組が慌てて駅方面へ走っていくのが見えた。
    駅まで行って姿を見つけられなかったとあきらめて帰ってくれたらいいが、すぐに駅に向かっては待ち伏せをされる恐れもある。隣駅まで歩くか、タクシーを使うか。特にあてもなく、とりあえず人気のない方へ歩き出したところで体に妙な違和感があるのに気づいた。
    あまり良いとは言えない環境での撮影の疲れがきたのかとも思ったが、しばらく歩いていくうちにそれが違和感ではないと気づいてしまった。妙なだるさと、酒だけとは思えない妙な体の火照り。……一服盛られたのだと、気づいたときにはまっすぐに立つのも辛い程になってしまっていた。
    かろうじて薄暗い路地裏に転がり込んだものの、狭い路地の薄汚いゴミ箱に身体を持たれかけさせるのを厭わないほどに、全身が熱を持っていた。もっと早めにタクシーを呼べばよかったと後悔しても遅い。マネージャー……になんてそれこそ話せるわけがない。犯人は後をつけてきたあの二人組かもしれないが、好き勝手に席を変えていたものも多く、断定はできない。ただの嫌がらせという線も捨てきれはしないのだから。
    自嘲気味に笑ってみたところで、身体の火照りはどうしようもない。効果はどれほどのものかは知らないが、何時間も続くようなものでもないだろう。ここで休んでいるうちにどうにか落ち着いてくれないだろうか。
    荒くなる息を押し殺すように袖を噛む。溢れる唾液が袖を汚すが、誰かに声を聴かれて見つかるほうが嫌だ。ああ今何分経っただろうか。あとどれだけ待てばいい。どうすれば――
    ……

    「マユミくん?」

    また、あの声だ。見上げた先、淡い金色の細糸が舞う。そこにいたのは、あの夜に出会った男だった。特徴的な泣き黒子と、マゼンタの瞳。柔らかな色をしていたそれが少し細められ、ふわふわとした柔らかなイメージから一転、どこか人ならざる者のような印象を与える。
    「……百々人、か……」
    知り合いと呼べるほど近しい人間ではなく、他人と呼んでも差し支えないほどに相手のことを知らない。けれど名前を知っている相手に見つかったのは、赤の他人と比べたら幾分かましなことなのではとあまり回らない頭で思う。
    「こんなところでどうしたの?飲みすぎ?そんなゴミ箱に張り付いちゃって…ここ、暗いからよく見えないだけで結構汚いんだからね」
    前に会った時の柔らかな雰囲気をまとっていない百々人はその整った顔立ちから一気に冷たい印象を覚えるが、その声は心配気な色を含んでいた。意外におせっかいなやつなのかもしれないなと小さく笑う。
    「ちょっと、笑ってないでよ。もー…タクシー呼んだ?それとも呼ぶ?こんなとこで寝ていたら身体に悪いんだから」
    「タクシーは……遠慮したいな。数時間も、したら……落ち着くから、大丈夫、だ」
    「……ねぇ、本当に大丈夫じゃないみたいなんだけど」
    百々人が顔を覗き込んでくる。長いまつげの一本一本が見えるほど、近くなった綺麗な顔に、何故か反応した下腹部の熱が増した。
    「っ、ぐ、ぅ…」
    「ねえ。何か、盛られた?」
    「わ、かるのか……?」
    「種類は分からないけどね。たまにあるよ。女の子が多いけど、男の場合は部屋に連れ込むのが難しいから、頭も体も性欲でいっぱいなのを適当に言いくるめて、とか。相手はもう巻いたの?」
    「た、ぶん……だが、あの二人が、そうとは……」
    「持ち物確認したら何にしろすぐ分かるでしょ。仕事の関係?やっぱ怖いね、芸能界って」
    肩をすくめそう吐き捨てた百々人が、おもむろに腕を引っ張って絶たせようとしてくる。
    「お、い……百々人」
    「いつ誰に見つかるかもしれないのに、そこで一晩中ゴミ箱とイチャイチャしてる気?芸能人なんだからそんな姿見られたらスキャンダルでしょ。……来て、何とかしてあげるから」



    百々人に腕をひかれ、ようようたどり着いたのはホテルだった。設備は古いが所謂ビジネスホテルだったことに、どこに連れ込まれるのかと内心気が気でなかったがほっと息を吐いた。
    ロビーのソファーに乱雑に投げられ、恨めし気に向けた視線の先では百々人が、カウンターに近づき中にいたホテルマンの一人に声をかけている。
    「いつもの部屋、空いてる?え、違う違う、友達が飲みすぎちゃってさ。そー、悪酔いするほど飲むなって言ったんだけどね。…あはは、うん、ありがと。じゃあね」
    相手の声はあまり聞こえないが、百々人の親し気に話すよく通る声を聴くに、どうやらこのホテルの常連であるらしい。仕事帰りなど、終電を逃した時に利用するのだろうか。それとも、何か利用目的が……。
    今時珍しいルームキーを片手に戻ってきた百々人に再度腕を引かれ、それ以上考えることができず、1台しかない旧式のエレベーターへと足を向けた。


    「はい、とりあえず服脱いで!」
    「わ、っぷ」
    部屋に入るや否や、百々人がどんどん服をはぎ取っていく。シャツを毟られ、ズボンのベルトを外されたところでやっと理解が追い付き「待て!」と声を上げれば「路地裏に転がってゴミ箱に抱き着いて、汚物まみれになっちゃった服のままでいたいわけ?」と言われてしぶしぶ抵抗を諦めた。
    下着姿になったところでシャワーを浴びるよう勧めた百々人が、品定めするようにこちらの下肢に視線を送る。男同士とはいえ、まじまじとみられて気持ちがいいものではない。まして盛られた薬のせいで完全に起ち上がって染みまでできているのだから、羞恥心でどうにかなりそうだった。
    「……あまり、みるな」
    「いやー、想像以上に立派だったから」
    ごめんごめんと笑った百々人は、はぎ取った服をかき集め、「洗濯してくるから、ゆっくりどうぞ」と部屋を出ていった。
    ようやく詰めていた息を吐いて、のろのろとバスルームへと足を向ける。標準サイズのユニットバスはひどく狭い場所だが、それでもあの路地裏に比べれば数百倍マシだ。
    「ッ、は……ぁ、」
    下着越しに触れば、もうそこは限界に近かった。数度抜いただけではき出された精液は最近あまり処理ができていなかったこともあり、うんざりするほど量が多く、そしてそれは一度はき出したくらいでは全く衰える気配もない。だが、いつ百々人が戻ってくるかもしれない状態でのんきに自慰行為にふけることは難しい。冷水でも浴びれば熱もある程度落ち着くだろう。バスタブに足を踏み入れ、深いため息をついてシャワーのコックをひねった。


    バルローブを羽織り、何とかツインベットの片方へ腰かけて一息をついていると、百々人が部屋へ戻ってきた。
    「マユミくーん、どう?大丈夫?」
    とりあえず洗濯機にぶち込んで乾燥機もかけちゃったけど、もしクリーニングが必要な服だったらごめんね、なんていいながら綺麗にたたんだ服とコンビニで買ってきたらしい新しい下着を差し出してくる。緩慢な動きでそれを受け取ると、百々人が眉根を寄せる。
    「…ね、ちゃんと発散した?」
    「ああ……」
    「いや、全然でしょ。何回抜いた?この辺で最近出回っているのだと、2~3回出しただけじゃだめだよ。……いや、僕がいつ戻るとか言わなかったから、時間気にするよね。ごめん」
    「お前が謝ることじゃない……そもそもお前があの時通りかかってくれなかったらどうなっていたかわからない。感謝してもしきれない。恩に着る、百々人」
    「大げさだなぁ。困ったときはお互い様でしょ。それになんか君のこと、ほっとけないんだよね」
    ベットの隣、ほとんど距離をとっていない場所へ百々人がおもむろに腰を下ろした。
    「ね、マユミくんって男は大丈夫?」
    「……は?」
    言っている意味が分からなくて聞き返せば百々人の顔が近づく。瞬き一つの合間に、唇に触れるだけのキスをした百々人がこてん、と首をかしげる。
    「こういうことだけど。どう?僕、君ならいけそうなんだけど」
    「な……」
    「君はどう?ふふ、元気いっぱいいだね」
    「そ、んなところに、話しかけるな……!」
    バスローブの上からでもわかるふくらみを無遠慮に撫でられ思わず声が上がる。そんなところ、今まで触られたことがない、触らせたこともないのに。
    「あれ、もしかしてマユミくんって、初めて?」
    「……悪いか」
    「ううん、全然。逆に興奮してきた」
    良い?と百々人が蠱惑的にほほ笑む。
    拒絶するべきだと、頭ではわかっていた。お互い男同士だし、恋人同士でもない。まだ知り合いというにも微妙な関係で、けれど頭のどこかでそれでも受け入れてしまいたいと思ってしまった。百々人が身じろぎするたびに香る甘い匂いに脳の奥が痺れる。
    「大丈夫だよ。全部、僕のせいにしていいから」
    ぼうっとした頭は口から拒絶の言葉を吐かせることはついぞせず。頬に伸ばされた指のひんやりとした冷たさが心地よいと考えるまでに、少しかさついた唇に全てを奪われてしまった。




    朝、ホテルの一室で目を覚ました時、隣に百々人はいなかった。
    確かにこの腕の中に抱いて眠ったはずなのにあれは夢だったのか?と思うも、感じたことない腰の重だるさや隣の乱れに乱れたシーツから、夢ではないと思いなおす。
    昨夜百々人が洗濯をしてくれた服に着替え、証拠隠滅のしようもないどうしようもないシーツの塊を気持ち整えて部屋を出る。7時を少し回ったくらいのホテル内ではちらほらと利用者を見かけるが、その中に見知ったあの金糸雀色を見かけることはできなかった。
    チェックアウトを済ませ(料金はすでに払われた後だった)、新宿の街へ足を踏み出す。駅に近くなるほど人は増える。平日のこの時間帯はもう通勤ラッシュが始まっている。大通りに出て適当にタクシーを拾うと、自宅の住所を伝えて後部座席のシートに身体を預けた。
    この年になって朝帰りをとやかく言う家人はいないが、朝食を用意している家政婦には小言を言われるかもしれないなと窓の外を流れる景色を眺めながらぼんやりと思う。
    朝、目を覚ます前に姿を消したあの男のことを考える。
    以前会った時、彼の名前を少しだけ調べた。高校生2年の頃までは様々な賞を取った賞キラーとして有名であったようだが、それも2年の途中までの事で、卒業まではほとんどの大会に名前は出ず、高校卒業と同時にその足取りは途絶えていた。そして出会ったのは繁華街の中でも如何わしい店の多いエリアだ。他の模範である優等生が、何かをきっかけに地に落ちる。物語の中でも現実でも、よくある話なのかもしれない。けれど彼の身に、何が起きたのか知りたかった。
    薬が抜けず苦しむ男を、その身に受け入れ宥める術を知っている男。その手慣れた様子はそれが彼にとって初めての行為ではないと嫌でもわからされた。それを彼が望んで身に着けたものだとしたら、余計なお世話なのだろう。けれど彼の熱で潤んだ瞳の奥、覗き込んだ先には踏み込むことのできない闇があった。
    (俺が踏み込んでいいことではないかもしれない、だが……)
    もう彼を、ただの知り合い程度の枠にはめることなんてできない。タクシーが自宅前へと到着した時、ようやっと彼へと抱いている感情の招待に思い当たった。
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    MOURNINGあの時、二人が出会わず秀にも会えずアイドルの道を進むことがなかったら。
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    のIF設定10年後鋭百。
    途中で止まってます。続きは書く予定なし。
    直接描写はありませんがモブ百々、鋭心が薬を盛られるシーンなどがあるため地雷が多い方は注意してください。
    IF鋭百「あ、マユミくんだ」
    かけられた声に、思わず振り返っていた。
    振り返ってから、ああしまった、と思った。声をかけられるのはよくあることで、いちいちそれに反応していては身が持たない。それなのに、柔らかな、親しみすら感じられる声色に何を考えるよりもまず体が反応してしまっていた。
    繁華街のはずれ、人通りの少ない通りにその男は立っていた。
    柔らかな髪質の金糸雀イエロー。その下で柔らかく笑んだマゼンタ色の瞳はこちらをじっと見つめていた。
    「こんなところで会うなんて、凄い偶然だね」
    「……どちら様ですか?」
    友人にかける様な親し気な言葉だが、目の前の男に見覚えはなかった。すらりとした手足に甘さを感じさせる顔立ち。芸能界も広い、もしかしたらどこかの現場で顔を合わせたことがあるのかもしれない。けれどこんなに印象的な男、一度会えば記憶に残りそうなものだがいくら記憶を探っても出ては来ない。
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