夏至の夜 マトリフは昼が一番長い日の夜を待っていた。海に沈む夕陽は美しいが、マトリフからすれば今日ばかりは早く沈んでくれと祈る気持ちだった。
やがて複雑な色を残して太陽が沈む。反対側からは夜が始まっていた。
マトリフは月を見上げる。低い位置にいる月は寂しげに光を放っていた。
「ガンガディア」
マトリフの声に応えるように風が吹く。マトリフはその風に託すように瓶の中の灰を手に取った。それは火竜の炎に焼かれて燃え尽きたガンガディアの灰だ。戦いの後でマトリフが掻き集めたものだ。
灰は風に舞い、月光を受けて姿を変える。淡く光ったかと思うと、虚像を作り上げた。それはデストロールの姿だった。
「よお、久しぶり」
マトリフの言葉にガンガディアは無言で頷く。灰からガンガディアを甦らせることが出来るのは夏至の夜だけだった。朝になればガンガディアは消えて、元の灰に戻る。
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