不滅の愛 マトリフは花になんて興味はなかった。それなのに洞窟には花が飾られている。
この洞窟に花を持って訪れるのはガンガディアだ。ガンガディアは訪れる度に花を持ってきては、せっせと花瓶に入れて飾っていた。おかげで殺風景だった洞窟は華やかになり、空気さえ澄んでいるように思える。
マトリフはその花を指先で触れた。ベッドのすぐそばに置かれたのは昨日持ってきたばかりのもので、微かに甘いような匂いもする。紫色の花だが、マトリフの故郷に咲いていた花とは形が違った。ガンガディアが持って来るのは決まってこの紫の花だった。
マトリフはこの花の名前すら知らない。花に興味なんてないからだ。薬効があるわけでもない植物を、その見た目の美しさだけで側に置きたいと思ったことはない。
1933