相補的関係「ほら帰るよ!シルバ!」
ライフラインはいつものように明るい声で隣でしゃがんだままのオクタンに声をかけた
なのに返事はおろかなんの反応も返ってこない
ぼんやりと今しがた父親を見送った方向を見つめ続ける
少し時間を置いてもう一度声をかける
「いつまでそうしてるつもり?」
じっとしていられない性格なのに今は大人しくしょんぼりと小さく見える
「シルバ。いつまで立ち止まり続けんの?」
わざとらしく大きくため息をつきながら言ってやればキッと睨んだ
「うるせぇよ、アネキ!ほっといてくれ!」
オクタンは叫んだと思ったらプイッと横をむいた
(こいつ・・・)
なんとも子供っぽい反応にやれやれとどうするか少し思案したライフライン
「あっそ。じゃあアタシは帰るから。アンタは好きなだけ立ち止まっときな。」
言ってオクタンに背をむけゆっくりと歩き出した
瞬間オクタンは悲壮感漂う視線をライフラインにむける
置いてかれるとは思ってなかった
「あっ・・・」
オクタンは言葉が出てこないようでその場で狼狽える
ひとり慌てているとライフラインは数歩ほど進んでから立ち止まった
歩き出した進行方向を見たまま腕組をしてそこから動かないようだった
それを見てオクタンはばっと勢いよく立ち上がって駆け寄る
「アネキ~待ってくれっ」
情けない声が出てしまう
するとライフラインは振り返り微笑んでいた
そしてゆっくりと手を開く
オクタンはそのまま抱きついた
昔から変わらないその温もりに何も変わらないのだと涙腺が刺激される
「アンタは"オクタビオ・シルバ"だ。」
ギュッと力強く抱きしめる
「親がなんと言おうと家がどうだろうとアンタ、アンタだよ。」
オクタンはぐずぐずと鼻をすする
「アンタが目指した所とアンタの親が目指した所は違う。だから、シルバ・・・」
ライフラインはオクタンの頭をクシャっと撫でた
「もっと走らないとね。いつか言ってやりな。」
ポンポンと背中をたたく
「アンタが言ってた場所とは違う所にきたけど、最高にいい場所だってね。」
「・・・あぁ、そうだなっアネキ!
言うと同時に顔をあげたオクタンはへへっと笑う
そしてライフラインの肩に手を回して少々強引に歩き出した
ライフラインは少し足がもつれかけたが状態を立て直してオクタンの肩に手をのせた
ふたりで笑い合う
「あっそうだ、いいこと思いついた。」
オクタンがニヤニヤしながらライフラインを見れば内容を聞く前からわかってるかのようにニヤッと笑い返す
「しょうがないね、つき合うわ。」
「さすが、アネキ!」
オクタンは大きく笑った
作戦会議をしながらも次を見据えて歩き続ける
歩くふたりに朝日がさした