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    ShakuShaku0x0

    芍(@ShakuShaku0x0 )の倉庫です。
    ワンドロ様に提出したものや、企画に参加したもの、突発で書いた小話などがあります😇
    pixivにまとめるまでの雑多な保管倉庫だと思ってください。支部にまとめたらこちらからは削除します。


    素敵なアイコンは大好きフォロワーさんのぽこさん(@tirigamipoko )さんより頂きました…!!感謝…!!🙏💕


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    ShakuShaku0x0

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    #ちょいたワンドロライ #ちょいたんたん
    お題『存記』
    参加させていただきました……!!遅刻ごめんなさい…!!
    ⚠︎逃避行中に『存在しない記憶ゲーム』で遊ぶ二人の話。IQの低い話です
    ⚠︎

    揺れる炎と、マシュマロと存在しない記憶ゲーム「存在しない記憶ゲーム、しようぜ」

     末の弟が言い出した突拍子もない提案に脹相は食事の手を止めた。荒廃した魔都で彷徨って数日。悠仁がこのようなことを提案してきたのは初めてだった。思わず硬直した脹相はまじまじと悠仁を見る。
     星空の下、調達してきた夕飯を共に摂る大切な弟は脹相のおにぎりの具がボロボロと盛大に落ちるのを「おーい、聞いてる? てか、勿体ないんだけど」と言い、拾いながら口に入れている。

    「待て、悠仁。衛生観念はどうなっている。お腹を壊したらいけないからやめなさい」
    「それ会う人みんなに言われてきた台詞だわ……。 てか、こんなんで腹壊してたら宿儺の指なんて発酵食品もいいとこだろ。あれで腹壊してないからへーきへーき」 

     悠仁はひらひらと手を振りながら焚き火を絶やさぬように木の枝を放り込む。折れた街路樹の枝を集めたものだから、燃焼効率はあまりよくないが、火にあたりながらの食事だと身体があたたまる。
     百円ライターでつけられた火はお値段以上の暖かさだ。パチパチと枝が燃える音が響く。こんなことを都心のど真ん中でしているのはなんだかおかしな気分だ。

    「それにしてもさっき提案してきたものはどういう遊戯なんだ? お兄ちゃんは聞いたことがないが」
    「俺が考案したからな」
    「悠仁が?」
    「おう」

     意味もなくドヤ顔を披露すれば、脹相の口元から「可愛い希少生物だな。保護しなくては」という不穏な言葉が聞こえてきた。やめろ、なんか怖い。

    「どんな遊戯なんだ?」
    「いや、遊びっつーか……正直お前の矯正目的」
    「矯正? ……俺はまた何かを間違ったのか」
    「間違っているっつーか、現在進行形で間違いがおそろしくなってきたっつーか……」
    「?」
    「まぁ、あれだ。お互いに『存在しない思い出』を語っていって、お前の思い出の妄想と現実をちゃんと分別したい」
    「お兄ちゃんの大切な思い出をゴミのように言わないでくれ」
    「なら燃える日に出したくなるような妄想の思い出を語り出すのどうにかしてくんね?」

     悠仁はゲンナリとした表情で脹相を見ると、大口をあけて菓子パンにかぶりつく。

    「お前のそのよくわかんない存在しない記憶怖ぇんだよ……。昨日、俺のランドセルの話をしてきたときは流石にヤバいと思ったわ」
    「? 最初は青にすると言っていたのに『お兄ちゃんのランドセルが黒いから俺も黒にするっ』と言ってきたことか?」
    「それだよ、それ……」

     眉を顰めた悠仁はムシャムシャとパンの咀嚼をしながら低く唸った。そのなにがそれなのか分からないというような顔をやめてくれ。ブン殴りたくなる。

    「お前と出会ってからまだ数日でしょうが……。今日はそれを脹相に認識してもらうからな」
    「……よく分からないが、悠仁がやりたいのならいいぞ。ルールを説明してくれ」

     脹相からの了承の声を聞いて悠仁はようやく顔を明るくした。嬉しそうな顔をのまま、薪にするには細い枝を手に取って食糧の中からマシュマロを取り出すと枝にさしていく。

    「ルールは簡単。互いに持ち点が五点からスタート」
    「ほう」
    「そんで、俺とお前で存在しない記憶……つまり妄想の思い出を交互に話していく。それがお互いに『確かにそれは妄想だ』と思えるならセーフ。もしも本当の記憶だと指摘が入って、それが正しかった場合には話した人間の持ち点からマイナス一点だ」
    「……」
    「質問は?」

     スッと片手を上げる脹相に悠仁はマシュマロ串を作る手を止めて「はい、脹相クン」と指名した。

    「――……それは遊戯としてルールが破綻していないか? お兄ちゃんと遊びたいんだったらオセロでもどこかの店から買ってこよう。……な?」
    「可哀想なものを見るように俺を見るなッ! しょうがねぇだろ、どう考えてもアウトになることないだろうけど、お前ならワンチャンどころかネコチャンぐらいあるんだって……!!」

     思わず力が入りすぎてマシュマロは手の中でボロボロに砕けてしまった。可哀想なマシュマロ。悠仁は悲しげな顔で白い塊を回収する。

    「……例えば『悠仁は幼い頃に将来の夢はコックさんになることだ、とお兄ちゃんに話してくれたことがある』……とかそういう感じでいいんだろう?」
    「やればできんじゃん……!」
    「正解は消防士だものな……。絵に描いてプレゼントしてくれたアレは今でも宝物だぞ」
    「それがアウトなんだっつーの!! 俺とお前は!! まだ会ってから数日の仲ッ!!」
    「――……?」
    「怪訝な顔をするなッ!!」

     悠仁はハァーーーーと馬鹿デカい溜め息をつくと、頭を抱えた。なんでルール説明でもうアウトなんだ。ウンウンとかさも懐かしげに頷くんじゃねぇ。

    「とにかく、そんな感じ。ルールはいいか?」
    「ああ、いいぞ。弟の遊びに付き合ってやるのも兄の役目、……だな」
    「くそ、なんかムカつく……。んじゃあ、ここから本番な。さっきは脹相だったから、俺からやるぞ」
    「わかった」

     悠仁は猫のようにキュウと釣り上がった目をパチパチと二、三度瞬かせて琥珀の瞳で思案を始めた。炎にあたった悠仁の頬はほんのりと赤く上気し、考え込む顔もとても可愛らしいな、などと思われていることは知らない。

    「んじゃあ、そうだな……。『俺がまだ赤ん坊の頃、脹相が俺のオムツを変えていた』」

     うん、なかなか良い切り出しだ。脹相の思い出の中での自分は一体いつから共に暮らしているのか分からないが、まずは幼い頃から矯正していこう。
     そう考えていた悠仁の希望はすぐさま打ち砕かれる。

    「悠仁、アウトだ」

    「なんッッでだよ……!!」
    「お兄ちゃんはお前のオムツを変えた過去があるぞ」
    「ねーーーよ!? お前いつから俺と一緒にいると思い込んでるわけ!?」
    「それは、『お前に育てられた覚えはない!!』という反抗期のテンプレートなのか、悠仁!!」
    「ちげぇんだわ!! 反抗期もなにもまるっと記憶の改竄が行われてるんだって!!」

     お前は俺の母ちゃんか!! などと言ってみたいが母親とか父親の話題はおそらくタブーだからやめておこう。禁句を出してしまえば、この後しばらくの間脹相の鳴き声が「加茂憲倫ィィ!!」に変化してしまう。

    「んじゃあ、俺のしていたオムツのメーカー答えてみろよ!!」
    「メ○ーズだろう? お兄ちゃんはちゃんと覚えているぞ」
    「なんで合っているんだよ!? 怖い怖い怖い!!」
    「昔は一緒に風呂にも入ったじゃないか。俺の象さんが大きいと拍手してくれたことをお兄ちゃんは忘れないぞ……」
    「なに感動的な感じで言ってるんだよ、どう聞いても下ネタぶっ込んでくるな」
    「悠仁、五歳の子供なんだ。過去のお前のことだし許してやってくれ」
    「百パーセントお前の妄想なんだよなーーーーー」

     嘘だろ一回目からこれか……。しかももうすでに妄想のバリエーションが多すぎる。供給過多というのはこういうときに使いたい単語では無いはずだ。

    「これの判定はどうなるんだ」
    「どっちも曲げないから……、どっちもマイナス一点。ついでにもう一つ妄想ぶっ込んできたからお前はマイナス二点」
    「ふむ、厳しいんだな……。よし、なら次は俺だな」
    「おう」

     叫んでいるうちにマシュマロが刺さっていた串は無惨な姿になっていた。真白なふわふわだった造形は見るも無惨な黒焦げだ。嘘だろ、溶けるんじゃなくて炭になるだけなのかよ……。
     眉を下げたまま手元に残った消し炭を眺めていた悠仁からヒョイと串が取り上げられる。火を挟んで向かい側に座っていた男はいつの間にか隣にいて、悠仁の炭が刺さった串を眺めていた。

    「? なんだよ……って、うわぁああ食べるな!! ペッってしろ!! 赤ちゃんか!!」
    「赤ちゃんじゃない。お兄ちゃんだ」
    「そんなのはどうでもいいんだよ!! 炭食うなって!!」
    「苦くて甘いな」
    「もーー!!」

     脹相はむぐむぐと口を動かしていたが、そのうちに大きな喉仏が上下に動く。べろりと口の周りを舐めとった肉厚の舌を悠仁は恨めしげに眺めた。
     くそ、本当に調子が狂う。脹相は食べ物に執着することが無い。共に食事を摂ることも悠仁が食事を摂るからに他ならないのだろう。今回のこれだってそうだ。悠仁が炭にしてしまったマシュマロに対して勿体無いな、と悲しそうにしている姿をみて口に含んだんだろう。何が苦くて甘い、だ。このザワザワした気持ちの方がよっぽど苦くて甘い。

    「そんなことより、次は何を答えるか……」

     悠仁の心中など知らぬ脹相は再びマシュマロを木の枝に刺して火で炙り始めた。僅かに目を伏せた脹相は三秒ほど考えると口を開いた。

    「……『俺は悠仁とずっと一緒に生きていたいと思っている』」
    「……」
    「どうだ?」
    「そ、それは……思い出話じゃないから、無し、じゃね……?」
    「そうか、それもそうだな」

     柔らかく笑んだ男の顔にグゥ、と唸り声が出てしまう。妄想の思い出話をしろと言っているのに、コイツいつの間にか願望を伝えてきた気がする。
     直接言われたら自分は「そんなの、俺には許されないだろ」などと答えてしまうだろうことを予測してこういうシーンでぶっ込んでくるのだからタチが悪い。

    「じゃあ俺の失敗ということでマイナス一点でいい」
    「……おう」
    「じゃあ次は悠仁だな」

     その言葉とともにこんがりと狐色に焼かれたマシュマロが手渡される。串が焦げてもいないうえに、きちんと表面だけ焼かれたそれは見るからに美味しそうだ。
     礼を受け取って食べ始めた悠仁はその甘さに舌鼓を打った。お前が食べろなどといってもどうせ聞かない相手なので、今度は自分の分ではなく脹相の分のマシュマロを枝に刺し始める。
     手元でそんな作業をしながら「うーん」と考えた悠仁はアッ、と思いついたように弾んだ声色で答えを言う。

    「じゃあ、『俺は脹相の妹だった』。これなら存在しない記憶だろ!!」

     名案すぎる。というか脹相の妄想ストライクゾーンを外すことが難しくなってきた。
     悠仁はなかなか良い答えだと自画自賛したが、脹相は眉根を寄せて首を傾げた。

    「いや、……妹でもあった、と思うが……」
    「いやいやいやいやいやいや!?」

     なんでそうなる。もしかして雌雄がわかっていないのだろうか。それとも妹という言葉の意味をわかっていないのか。そんなことを問えば脹相はさも心外だという顔で眉を寄せた。

    「それくらい知っているぞ。性別が女の下の兄妹のことだろう」
    「俺の性別は!?」
    「男だが?」
    「なに馬鹿なことを聞いているんだって顔すんな!!」
    「正確に言えば、当たり前のことを聞いてきて悠仁は可愛いなと思っていた」
    「くそーーーー話つうじねぇええええ」

     ガシガシと頭を掻きむしりたい衝動に駆られるが、手元のマシュマロが良い感じに焼けている。先程のお礼にと無言でズイ、と渡せば男の眦が柔らかくなった。

    「ありがとう、悠仁。宝物にする」
    「そんなもん宝にすんな。早く食えよ」
    「……カリカリしている」
    「おう。香ばしくて美味いよな」
    「ああ」

     ほんわかしたムードも悠仁がハッと我に返ったことで霧散した。危ない、こんなふうにいつもこいつのペースに乗せられてしまうからダメなのだ。

    「あぶなっ、流されるところだったけど人間は雌雄の転換が起きない生き物なの!! 呪霊とか呪物は知らんけど!!」
    「……」
    「その可哀想なものを見る目をやめろ!! 当たり前のことを力説しなきゃならん俺の身にもなれ!!」

     ぎゃあぎゃあと騒ぐ悠仁を微笑ましそうに見ると脹相は「ではお互いにマイナス一点だな」と言ってくる。なんだこの寛容な兄といった言動は。どう考えても振り回されているのは俺なのに。

     ブツブツと不満を零す悠仁を尻目に脹相は海の底のような黒い瞳を細めると焚き火の炎ごしに悠仁を見つめた。

    「では、俺の番だな。……これがダメだったら合計でマイナス五点。俺の負けだな」

     パチパチと爆ぜる音だけが響く中、男の瞳はまるで射抜くように悠仁を見ている。相変わらず感情の読めない表情は、思わず黙った悠仁と視線が合った瞬間にその唇が釣り上がった。

    「……『俺と悠仁が出会ってから今までの間に、悠仁は俺に対して兄弟以上の愛情を抱いてくれた。——そしてそれは恋情と呼ばれるものだ。』」
    「……」
    「判定はどうだ?」
    「…………」

     やられた。
     んなもん存在しない記憶だ、と言ってしまえばいい。そうすればいいのは分かっているのだが……。
     悠仁はグゥと本日何度目かの唸り声をあげると「もう、俺の負け!! 負けでいい!!」と自暴自棄に白旗を上げた。その様子を見た脹相は、男らしく太い首からクツクツと低い笑い声を零す。

    「おかしいな、点数的には俺が負けていたはずなんだが」
    「うるせーっ! 俺の負けでいいのッ!」

     口の中もこの空気もやけに甘ったるい。
     勝負なんかずっと前から負けに決まっている。大昔から言うではないか。恋愛は惚れた方が負けなのだ、と。自分達だってそうなのだ。きっとこの先も悠仁は負けっぱなしなのだろう。

     クスクスと笑った脹相はいつの間にか悠仁の隣に座ると口付けを落とした。煤けた苦いマシュマロの味はしない。
     あるのは、なんともやりきれないくらい甘ったるいキスの味だった。



    【終】




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