1122いつものスーツだけど、シャツは新品を下ろした。
普段はつけない胸元には君の好きな色のハンカチをしのばせる。
ネクタイもとっておきのやつを締めると、事務所を出た。
「あ、おはようございます」
入口のところですれ違いかけた陸君が挨拶してくれるのを、おはようと笑顔で返すと、なんだか不思議そうな顔でこちらを見ているのに気が付いて首を傾げる。
「あ、おでかけなのかなって…いつもよりお洒落?だし」
慌てたように理由を言う陸君に、少しの悪戯心をくすぐられてふふっと笑うと、唇に人差し指を立てた。
「ないしょだよ?…デートなんだ」
「そうなんですか…えっ?!」
目を白黒とさせる様子を後目に、じゃあね、と外へと出る。
デート、という言葉がくすぐったくて思わず笑みがこぼれる。
1072