・初恋性の大まかなあらすじ
ある夜中、帰路を歩いていた灯里（以下、彼方）は突然何者かに後頭部を殴られ気絶する。目を覚ますとそこは見慣れない洋館であり、誘拐犯を名乗る見知らぬ男性（弦）に「一目惚れしたから自分のことを好きになるまでここにいて欲しい」と迫られる。困惑する彼方。
しかし共に生活していく中で、（自分の好き嫌いや体質まで細かく知られていることに困りつつも）少しずつ二人は打ち解けていく。不思議な夢を見たことも相まって、彼方は弦に対して生まれて初めての恋情を抱きつつあった。
監禁されてから3日目、2日目から体調を崩してはいたが、ついに高熱を出して倒れた弦。彼を気遣いながらも洋館の探索を続けていた彼方は地下室で弦の手帳を見つけ、弦が未来の人間であること、未来で自分と弦は婚約していたこと、そして結婚式を目の前に自分が命を落とすことなどを確信する。全てを知り地下室から出た彼方がまず目にしたのは燃え盛る炎に包まれた洋館だった。
開いていた玄関の扉を無視し、すぐに逃げる選択肢を捨てて彼方は寝室の弦の元へ向かった。既に落下した瓦礫で左足を失っていた弦は戻ってきた彼方に驚愕し早く逃げろと叱咤する。自分はもう助からない、無理やり連れ出したとしてもこの時代では生きられない。自分が代わりに死ねば彼方は死なずに済むはずだと弦は彼方に訴えた。
長い葛藤と説得の末、彼方は弦を置いて洋館を出ていくことを決める。
弦は彼方が決断してくれたことに安堵し、ネックレスにして身につけていた結婚指輪を彼に託す。最後、どこまでも優しく、愛おしげに微笑みながら「どうかもう一度、俺の初恋を奪って欲しい」と弦は彼方に囁いて彼を突き飛ばした。
やがて彼方は洋館の外で誰かに揺さぶられ、目を覚ます。そこに居たのは先程まで傍にいた彼より幾分か幼い、現代の弦だった。燃え盛る屋敷から転がり出てきた彼方を偶然目撃していた弦は混乱し、救急車を呼ぼうとする。弦と向き合った彼方はぼろぼろと泣きながら彼を抱きしめた。何も知らない弦は、突然綺麗な人に泣きながら抱きしめられたことに真っ赤になりながら動揺するのだった。（エンディング『二度目の初恋』にて両生還）

・以下初恋性シナリオより抜粋
初恋性ストックホルム症候群にて登場する弦は『彼方の未来の恋人』である。弦と彼方は婚約しており、結婚式を控えていた。彼方は遠い未来、弦の前で事故に遭い、その三日後に死亡する。
弦は発狂し、彼方を取り戻すための魔術に手を染めるようになる。それから弦は数年をかけひとつの魔術を完成させた。それは時間を遡る魔術だった。
弦はティンダロスの猟犬に見つからないようにティンダロスの猟犬を惑わせる花の香水もその時点で作成している。香水は偶然の結果生まれたものであり、なおかつ時間を遡った事により器具がないためもう作ることは出来ない。
（中略）
また、弦が作成した魔術には欠陥があった。それは『彼方がどうしても死亡してしまう』こと。弦が彼方を想い、彼の死を書き換えるための魔術は『彼方の死だけを覆せない』魔術だった。過去に戻り弦は彼方を助けようとするものの、彼方は『本来の死亡理由』に遭う前に死亡してしまう。
これは弦が魔術作成時に『彼方が事故にあってから死に至るまでの三日間』を何度も思い出し、それが無意識のうちに魔術に組み込まれてしまったからだ。
弦はさらにその未来を書き換えるためにもっと過去へ飛び、さらに彼方は『前回の死亡理由』に会う前に死亡する。
それを繰り返し、とうとう弦は『彼方が弦と出会う前』まで飛んでしまう。
弦はある程度時間遡行を繰り返すうちに彼方が自分と接触してから3日以内に死亡してしまう事に気付いている。正気度がほとんど残っておらずまともな判断ができない、さらに正気度の関係で魔術ももう使えない弦は『彼方を監禁して何がなんでも3日間を乗り越える』ことにする。（初恋性シナリオ時点で香水を使い切ってしまったこともあり、）弦にとってはこれが最後の時間遡行であり、チャンスである。
弦は途中で「自分が接触したせいで彼方が死ぬ。やはり代償なしに助けるのは無理なのかもしれない。ひとつの命にひとつなら、自分の命と引き換えにすれば彼方は死なずにすむに違いない」と思い込んでいるため、未来の弦が死亡したことで彼方は死亡しなかった。彼方が死亡するのは弦の魔術の影響であり弦の思い込みだからである。