喫茶ウェイター×花屋「いらっしゃいませ」
重たいアンティーク調の扉を押すと、チリンチリンと来客を知らせる鐘が鳴り、渋い声が俺を歓迎した。
「どうも」
ダークブラウンのテーブルに、赤いベロア調のソファ。テーブルランプはステンドグラスのランプシェード。四人掛けの席には、暇を持て余した老人たちが座って談笑している。他のテーブルにも、外回り中の営業マンのような男性客がノートパソコンを開いていたり、ひとりで新聞を読んでいるじいさん、常連っぽい年配客のグループがランチをしている。
それを尻目に俺はカウンター席へと座った。ボトムのポケットからシガレットケースを取り出すと、中から煙草を一本抜いて咥える。ジッポーライターの火を点けると、ゆっくりと煙を吸い込んだ。令和の時代にしては珍しく、喫煙できるこの喫茶店を俺は気に入っていた。
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