花束を君にこの花もらってぐれ。
花と同じぐらい綺麗だんて。
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平伏して迎えた相手がどうしても気になって、カワタは右目側だけを何とか上げてその姿を見た。村の女性達が長い時間をかけて刺繍した敷物の上に立つ裸足の爪が、おそらく鳳仙花の花びらを絞ったのであろう赤で染まっている。
村長が朗々と述べる挨拶はなかなか終わらず、少しだけと思ったカワタの顔は段々と角度を上げた。白いズボンに覆われた足は目を瞠るほどに長い。そんな兄につられたミキオまで顔を上げかけ、咄嗟に押さえつけたカワタの目は相手と合ってしまった。
金糸、ベルベット、絹といった様々な糸と技術で作られたスザニを持ち上げ、相手もカワタを見ていた。白い肌は冷たそうで、誰よりも滑らかだ。人間の美醜に大した興味も理解もなかったが、それでも整っていると感じられる、そんな顔の造作をしていた。
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