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    renard2525

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    renard2525

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    #増藻になんかください

    全部捏造です!!!!全部妄想です!!!
    MASHIMOさんちのねりねちゃんをお借り(?)しました。

    『姫彼岸』

    月が見え隠れするような、まだ肌寒い夜半の春のこと。しんと寝静まった家々の隙間をひとり、提灯も持たずに歩く影があった。決して治安が良いとは言えない裏通りにカツンカツンとただ一人分の下駄の音が響く。
    見たところ、家路に急ぐうら若き娘か。滅紫色の着物の彼女は不幸にも目をつけられてしまった。気配を感じたのか、女は怯えたように少しずつ小走りになっていく。
    そうして背後を振り返ることもなく、ずんずんと人気のない方へ迷い込んでいった。

    怪しい影と、闇雲に逃げていく女。
    彼女の後をぴたりとつけていた幾つかの足音が、やがて止まった。彼女がちょうど曲がった先は行き止まり。獲物はもはや袋の鼠だ。
    しめしめと男達は顔を見合わせ頷くと、各々の武器に手をかけつつ躍り出た。

    「なっ……!」

    仄暗い月明かりに照らされたそこで、女は此方を気にもせず背を向けて凛と立っていた。ともすれば男に見紛うようなすらりとした長身に、夜を溶かしたような漆黒の髪と揃いの長羽織。そして何より異様なのは、年頃の娘が背負うには到底相応しくない代物。

    刃渡りだけでも4尺は超えるであろう巨大な両手刀だった。

    男衆が思わずたじろいでいると、女はそれにようやっと気が付いたかのようにゆるりと振り返った。

    「……あら、ごきげんよう?」
    「貴様ッ、何者だ!」
    「はて、武士たるものまずは己から名乗りを上げるのが礼儀ではないのでしょうか……」

    それに私は名乗るほどの者ではありません、と小首を傾げて苦笑する、その女。

    「か弱い女の子をこれほど追いかけ回すなんて、一体どうするおつもりだったんです?」

    彼女は逃げていたのではなく、人気のない方へ自分達を誘い込んでいたのだと、そう気が付いたところでもう遅かった。
    女は色無地の裾をはためかせ、すたすたと男達の方へ歩みを進める。愛想のいい笑みに似つかぬその異様な雰囲気に一歩、二歩と後ずさっていると、ごろつき共の一人が怒鳴り声を上げた。

    「お、おい!!何ビビってんだてめえら!!」
    「お頭……!」
    「あんな大太刀、女には抜くことさえできねえだろ!どうせハッタリだ!!」

    退け、俺が相手だ、と刀を抜く男にくすりと笑って相対する。

    「私は一向に構いませんが」

    その酷く冷たい声色にゾッと背筋が寒くなった。


    「……墓の用意はよろしいんですの?」

    その問いかけに逆上したように男が刀を振りかぶった瞬間、ふっ……と彼女が消えた。

    「おかしら!?ゔああああ!!!」
    「嘘だろ、今何が……!?」

    ごとりと落ちた頭部には目もくれず、彼女は華奢な両腕で太刀をぶんぶんと振り回して血を振り払っていた。
    刀を振り下ろす暇はおろか、何の抵抗も許されなかった。自分の目が信じられないというように慌てふためく者、怒声を上げる者、腰を抜かして逃げ出そうとする者まで。阿鼻叫喚の中、彼女に襲い掛かろうとする男達が次々斬り捨てられていく。

    「さあ、皆さんも死にたければどうぞ」

    ニコニコと貼り付けられたような笑顔が末恐ろしく、其処いら中に転がる死体を避けながら一歩一歩近づいてくる。

    「勘弁してくれ!!」
    「すまなかった、すまなかった……!!」
    「死にたくねえよぉ!!ママー!」

    すっかり戦意を失った数人の男達は情けなく喚きながら逃げ去っていった。ガラ空きの背中を眺めつつ、赤黒く染まった羽織の袖で顔にべっとりついた返り血を拭う。

    「困りました……顔を覚えられるとイヤですね」

    追いかけましょうか。

    女は巨大な刀を背負い直し、それから闇に消えて行った。遠くに丑三つの鐘が鳴り響いていた。
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    renard2525

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    MASHIMOさんちのねりねちゃんをお借り(?)しました。
    『姫彼岸』

    月が見え隠れするような、まだ肌寒い夜半の春のこと。しんと寝静まった家々の隙間をひとり、提灯も持たずに歩く影があった。決して治安が良いとは言えない裏通りにカツンカツンとただ一人分の下駄の音が響く。
    見たところ、家路に急ぐうら若き娘か。滅紫色の着物の彼女は不幸にも目をつけられてしまった。気配を感じたのか、女は怯えたように少しずつ小走りになっていく。
    そうして背後を振り返ることもなく、ずんずんと人気のない方へ迷い込んでいった。

    怪しい影と、闇雲に逃げていく女。
    彼女の後をぴたりとつけていた幾つかの足音が、やがて止まった。彼女がちょうど曲がった先は行き止まり。獲物はもはや袋の鼠だ。
    しめしめと男達は顔を見合わせ頷くと、各々の武器に手をかけつつ躍り出た。

    「なっ……!」

    仄暗い月明かりに照らされたそこで、女は此方を気にもせず背を向けて凛と立っていた。ともすれば男に見紛うようなすらりとした長身に、夜を溶かしたような漆黒の髪と揃いの長羽織。そして何より異様なのは、年頃の娘が背負うには到底相応しくない代物。

    刃渡りだけでも4尺は超えるであろう巨大な両手刀だった。

    男衆が思わずた 1505

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    renard2525

    DONE #増藻になんかください

    全部捏造です!!!!全部妄想です!!!
    MASHIMOさんちのねりねちゃんをお借り(?)しました。
    『姫彼岸』

    月が見え隠れするような、まだ肌寒い夜半の春のこと。しんと寝静まった家々の隙間をひとり、提灯も持たずに歩く影があった。決して治安が良いとは言えない裏通りにカツンカツンとただ一人分の下駄の音が響く。
    見たところ、家路に急ぐうら若き娘か。滅紫色の着物の彼女は不幸にも目をつけられてしまった。気配を感じたのか、女は怯えたように少しずつ小走りになっていく。
    そうして背後を振り返ることもなく、ずんずんと人気のない方へ迷い込んでいった。

    怪しい影と、闇雲に逃げていく女。
    彼女の後をぴたりとつけていた幾つかの足音が、やがて止まった。彼女がちょうど曲がった先は行き止まり。獲物はもはや袋の鼠だ。
    しめしめと男達は顔を見合わせ頷くと、各々の武器に手をかけつつ躍り出た。

    「なっ……!」

    仄暗い月明かりに照らされたそこで、女は此方を気にもせず背を向けて凛と立っていた。ともすれば男に見紛うようなすらりとした長身に、夜を溶かしたような漆黒の髪と揃いの長羽織。そして何より異様なのは、年頃の娘が背負うには到底相応しくない代物。

    刃渡りだけでも4尺は超えるであろう巨大な両手刀だった。

    男衆が思わずた 1505