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    yurayura_kashii

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    yurayura_kashii

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    pixivにも投稿した小話。
    kbさん視点でお酒にまつわる二次創作によくあるやつ

    キス魔な恋人 ある日恋人のキバナくんが頬に真っ赤な傷をこさえていた事があった。理由を聞くと、前日のお酒の席でネズくんにぶん殴られたそうで、キバナくん本人からは、いつものやり取りが今回はエスカレートしてしまい……という言い分だった。
     キバナくんはよく同年代のお友達とお酒を飲みに行く事があって、確かに最近は、ネズくんとスパイクタウンに行くことが多かった。そしてその翌日にエンジンシティで僕に会う事もまた多かった。つまりは一泊、スパイクタウンの何処かで過ごしているのだけど、僕はそれが気になりながら首を突っ込むことができないでいた。
     キバナくんの傷の件を、何かのついでにネズくんに訊ねたことがある。キバナくんが何か失礼な事をしただろうかと。すると当時を思い出したのか、ネズくんはやや不快そうな表情をして次の瞬間、悪巧みの表情に変わった。
    「カブさんはキバナと酒を飲むことが無いそうですが、一度ベロベロに酔ったアイツの相手をしてみたらわかりますよ。ぶん殴られるまでキスを止めませんので。」
    「え!キキキキ、キスを?!?!」
    「ええ、キバナは酔うとめんどくせーキス魔になりやがるんです。」
     それは、恋人としては聞き捨てならない事態だな。確かに僕はキバナくんとお酒の席を共にした事が無いし、酔っ払い状態の彼を見た事も無い。
    「嫌じゃねーんですか、自分の恋人が他人とそーゆう事してるの。オレだったら別れますよ。」
    「え!ネズくんなんで?!僕とキバナくんが恋人同士だなんて思うのかな!?」
    「いや、アイツから聞いたので。……大丈夫です多分オレとダンデくらいにしか話してないと思いますから。」
    「そ、そうなんだ…。」
     知っていたのかと拍子抜けするもやっぱりあの3人は仲が良いんだなと、急に自分の恋人が別の世代を生きる人間なんだったと現実味を帯びたり。
    「……カブさん。オレ、あなたに意地悪で教えた訳じゃねーので。」
    「あ。ごめんね、ちょっとびっくりしちゃった。そうかー……キス魔に。」
    「大丈夫ですよ。される前に殴って止めるんで。」
    「それでかあ。」
     せっかく教えてもらっておいて悪いんだけど、この目で見るまでは今聞いた話を丸ごと信じる訳にはいかない。そうゆう性分なんだ僕は。
     そんな訳で、真実を確かめるべく僕はキバナくんにお願いして3人の飲み会に混ぜてもらうことにした。
    「初めてですよねえ、カブさんがいる飲み会!」
     スパイクタウンのネオンの下を2人で歩く。キバナくんが機嫌良く手を絡めてくるのを、今日はもう夜だしいいか、なんて理由にならない言い訳して受け入れる。
    「せっかくの集まりなのにごめんね。キバナくんがいつも何処でお酒飲んでるのとか、気になっちゃって。」
    「えー可愛い。いつも行く所ね、マスターのこだわりで珍しい物出してくれるから面白くって好きなんだー。」
     僕らがお店に着くと既にネズくんとダンデが先に始めていた所だった。隠れ家的なバーで、今は僕らしかお客さんがいないみたいだ。2人に今回は自分の我儘で邪魔して悪いねと詫びを入れるも、ネズくんには「とんでもないです。むしろ嬉しいですよ」とおしぼりを手渡され、ダンデには「カブさんカブさん辛い肉があるから一緒に食おう!」とアレが美味いコレがおすすめだと手厚い歓迎を受ける。
    「カブさん此処、梅のお酒があるんだ!」
     ダンデがメニューを指差して教えてくれるソコには梅干しと書かれている。
    「梅酒じゃなくて梅干しなのか!懐かしいな梅干し、ガラルでは中々お目にかかれないよね。」
     食べたいなあ、梅干し。たまに家でお茶漬けが食べたくなるのだけど、梅干しがあったらもう最高なんだよね。おむすびの具でも梅干しが一番好きだな。
    「オレが教えたかったのに……!!!カブさん此処ね、ライスも頼めますよ!」
    「え!ご飯食べられるの?!」
    「マスターの奥さんがジョウト出身なんだって!」
     キバナくんは、それでねと身体を寄せて僕の耳に顔を近づけ、お茶漬けもできますよと耳打ちした。ち、近い近い。人前でこんな風にいちゃつく機会なんて無いから、すごく、恥ずかしいよ。ああ、ネズくんの視線が何か言いたげに刺さる。いたたまれない。
     せっかくなので僕は焼酎のお湯割りに梅干しを入れた物をいただいて、キバナくんをベロベロに酔わす事に決めた。キバナくんはというと、タピオカを飲んでいる。タピオカ?そんな物まで置いているのか……このバーは守備範囲が広い。
    「キバナくんはお酒飲まないの?」
    「オレ実はそんなに飲める訳じゃないんですよねー。タピオカおいしいよ、ひと口どうぞ。」
    「ありがとう。僕のもひと口試してごらん。」
     ひと口と言わずに沢山飲んでほしい。酔ってもらわなければ困るんだ僕は。あ、タピオカ……初めてだけどおいしいね。モチモチ感が中々イける。けど、飲み込むタイミングがわからないな。
    「うっ……!酸っぱ!」
     僕がタピオカを咀嚼している中、キバナくんも初体験を噛み締めている。物珍しいリアクションにネズくんもダンデも興味を示した様で、マスターも交え梅干しの話題で盛り上がっている。
    「妻は梅の産地で有名な所の出身なものですから、食卓に梅干しが無いのは許されなくて……」
    「強烈な酸味だな!!!」
    「オレは遠慮しておきます。」
    「ネズー!保守的な奴だなお前は!」
     やっと咀嚼し終わった僕は、お湯割りのストローを咥えて吸い……ん、間違えた。タピオカの流れで吸ってしまったがこれはマドラーだ。みんなの話に気を取られちゃったな。ひとりで勝手に恥ずかしくなっていると、ぎゅっと両手を胸に当てているキバナくんと目が合った。
    「かわっ!!!!!!やべえ、何それめちゃくちゃ可愛いんですけど」
    「わ!忘れてくれ!見なかったことにして!」
     幸い、キバナくんにしか見られてなかったようで、突然のキバナくんへのクリティカルヒットに場は注目された。
     それにしても、たまには若い子達と一緒に飲むのも楽しいものだね。いつもお酒を飲もうとするとどうしても同年代同士集まっちゃうから、こんな風にはしゃいでるキバナくんを見る事なんて出来なかったかも。僕は独りで飲むのはつまらないからよっぽど気が向かなけりゃ家で飲んだりしないけど、キバナくんがもうちょっと飲める人なら、家で2人リラックスしながら飲むのもいいかもしれないね。
     ふと気づくと、キバナくんの顔が段々近づいてきて、お互いの息がもうかかるくらいだった。で、出た。ついに尻尾を出したなキス魔のキバナくんめ。こんなに瞳を潤ませてこんなに顔を赤くして他の男にもこんなキスしようとしていたなんて、なんて酷い子なんだろう。
    「…………ン、む。……………カブさん、今のはキス…………酔っ払っちゃいましたか。」
     (え?!今もしかして、僕の方からしちゃってたの?!)
     しまった。現行犯逮捕といくつもりが、つい夢中になってこっちが犯行に及んでしまっただなんて……。
     恐る恐る外野の方へ目を向けるも、みんなして首ごと背けて後頭部に「何も見てません」って書いてある。ダンデ、君こうゆう時に空気読めるんだね意外だったよ。
    「あ、あの、キバナくん僕……」
    「た、大変だ!カブさん酔うとこんなにセクシーになるなんて聞いて無いっつーか危険すぎる!今までよく野放しにできたな俺様は馬鹿か?!カブさん!もう絶対オレのいない場所でお酒飲んじゃダメですよ!」
    「え?え?」
    「つーかやべぇわ、めちゃくちゃムラムラするからもう帰ろう?そんで2人で飲も?な?」
    「キバナく」
    「ガアタク呼ぶから!」
     僕の言い分は全て飲み込まれ、キバナくんは手際良く帰り支度をして、最後に「一瞬トイレ行って来るわ、マスター!カブさん見張っててな!」と言い残して場を離れた。
    「……はあー。僕、失敗したね。」
    「クックックッ!……キバナ、アイツ今日はセーブしてやがりましたね。」
    ネズくんが肩を震わせ笑いを堪えている。カッコ悪いところ見せちゃったな。
    「結局キバナくんがキス魔になるかどうかわからなかったな。」
    「まあこの後わかるんじゃないですか?家で二次会でしょう。」
    「ふふ、そうだね。」
     これからは僕を口実に家で飲んでくれたら嬉しいなあ。
     おしまい
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