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    sachiko7714

    気まぐれダイヤモンド

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    幕間ネタ(ポイピクテスト)
    #じゃこデア髭バソ

    #じゃこデア髭バソ
    rocket

    気恥ずかしくて「マンドリカルドと話をしたんだ」
    とある昼下がり、いつものように薄くてたかーいお宝たちを堪能していると人の机を占領してぼっちお茶会なんぞしている同業者がつぶやいた。
    ああ、ああ。
    また例のビョーキですか、と呆れ半分に視線だけ寄越す。
    しかし当の本人はぼうとカップの中の色水を見つめていた。
    「……そんなによかったワケ?メカクレ」
    「うん。よかった。話すたびに揺れてメカクレになる角度があって……」
    このままだと永遠に語られそうだと渋面を作って見せればメカクレバカは小さく笑って色味で唇を濡らした。
    「彼はいつかの海の話をしていてね」
    「あー…アトランティスだっけか」
    「そうそう」
    カップを静かに置いた目の前の男は手持ち無沙汰なのか指先で持ち手を弄んでいる。視線は相変わらず交わらず、下に落とされたままだ。
    「その時の彼とマスターは『友達』だったらしい……今は違うらしいが」
    「ふーん?」
    ページをめくる手を止め、奴をじいっと見つめる。要領を得ない遠回しな言い方への抗議の視線だ。そんなものなどこいつは気にもしない。知ってたけど。
    「他にもね、イアソンは活躍したなら待遇を良くしてほしいと言っていたし、コルデー嬢は今の自分で塗りつぶすと……オリオンやアキレウスは自分らしくあれたのならいいと。いやあ、面白いものだと思ってね」
    かちりと視線が合う。すぐに細められ、からからと笑う姿はどこか他人事のような。
    「オメーもいたんでしょーが」
    「うん。いたね」
    それが何か、とでもいいたげに小首を傾げてくる男にため息を漏らす。実感がないのも分からんでもないが、あまりにもあっけらかんとしすぎなのだ。マンドリカルドを少しは見習えと言うものだ。
    「オヌシはどうなのよ。その、なんだ。アトランティス?」
    「おまえはどうなんだ」
    「いや拙者異聞帯での報告例ないんでござるが」
    呆れ顔。
    こっちがしてえわ。
    「なんだ。トリ頭というわけじゃあないだろうに……オケアノスだよ、オケアノス」
    紅茶を全て飲み干した男はべろりと唇を舐める。がちゃ、といささか乱暴にソーサーに押し付け、身を乗り出してくる。
    「閉ざされた海を暴れまわり、聖杯を手にし、しかもあのフランシス・ドレイクと戦ったそうじゃないか!思うところがありそうだと思って、ね?」
    「知ってどうするんでござるかぁ?」
    わざとらしくふざけたような声色もこいつの好奇心の前じゃ形なしだ。まったく、こんな調子でよく船長ができたものだ。いつも散々俺のやり口に口を出すが、きっとこいつの部下の方が苦労をしただろう。
    「知りたいと思うことに理由がいるかい?人間の欲求のひとつに過ぎないだろう、が……そうだな。うん、強いて言うなら─惚れた男のことはなんだって知りたいかわいい恋人が喜ぶ、とか」
    「恋人ではありまセーン」
    「似たようなもんだろう。人の純情を奪っておいていまだにそんなこと……おまえが私を好きだと認めれば楽なことだろうに」
    「純情とか言うトシ?若作り乙〜」
    男の手がお宝を掠め取っていく。ああ、天井のライトで影を落とすロリっ子が。その代わりにバーソロミューの顔面が近づいてくる。毎度毎度思うがこいつの距離感は死んでいるのだろうか?
    「で、どうなんだ?」
    どうなんだ。
    青い目が見つめてくる。
    オケアノスのエドワード・ティーチ。
    海賊史上最もドラマティックでドラスティックかつ最も有名な海賊戦闘員であるアン・ボニーとメアリー・リードを連れ、好き勝手波が示すまま、好き勝手に奪い尽くして。
    ──憧れてやまない海賊と殺し合った。
    羨ましいか?ああ、羨ましいとも!
    全力でぶつかって、首まで残してもらえて、笑って死ねたんだ、あの俺は!
    嫉妬してないか?してるとも!
    けれど、けれども。
    ──今の自分だけにしか、得られないものはあるのだ。
    ああ、羨ましいだろう。あの海の黒髭よ!
    「…………え〜…?あの拙者は薄い本買えないじゃん?!なしなーし!それに、マスターとの関係だとか、なんだとか、シラネって感じじゃね?拙者以外にも敵だった奴なんてわんさかいるし、今更〜」
    唇を尖らせればつられたのかバーソロミューの唇も鳥みたいに曲がる。ざまあみろ、教えてなんてやるもんか。
    「つまらん」
    「オメ〜の娯楽にすんなや」
    奴の顔が離れ、愛しい薄いお宝が返ってくる。興が削がれたのか、新しい茶を注ぐ気はないようだ。
    「おい、バーソロ」
    「なんだい」
    「拙者答えんだからよう、お前も言えよ」
    ふむ、とバーソロミューは自身の顎を指で撫でる。どう答えるか考えあぐねている様子だ。マンドリカルド達とその話をしたのではなかったのか。何故今更答えに悩むことがあるのだろうか。
    「言いたくないことなんでござるか〜?」
    「んー……、うん、そうだな。強いて言うなら、メカクレになってほしいかなって」
    「は?そりってマスターに?」
    ぱっと花が咲くように笑った男はすぐに目を伏せ、もにょもにょと口を動かし、捲し立てるように言葉を続けた。
    「活躍したのなら今ここにいる私がメカクレという報酬をもらってもいいのでは?」
    まったくもって、海賊のくせにリアリストすぎる!
    センチメンタルでシリアスな気分を返してほしい。
    「そういう奴でござったな」
    「うん。私はそういう奴だよ…──ああ、でも」
    リップ音、少しカサついた何かが唇に押しつけられる。
    「おまえとここで過ごす時間は、他の私には渡したくない、かも」
    目を細めて笑う男はティーセットもそのままにサッと立ち上がるとそれきり何も言わずに出て行った。
    「へえ、拙者との時間を………あっ?!待て待て待て!」
    今のは本心だった。
    そう言う時のあいつは追いかけて、捕まえないとしばらく避けられるに決まってる!
    がたりと椅子を蹴り飛ばし、急いで後を追いかける。
    ──今の自分にしか、得られないものはある。
    その中に、あいつだっているのだから。
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