青く底抜けのかなしみよ 空気に満ちる水が、体表にまとわりつく日々が続いていた頃のことである。空は毎日にび色を塗りこめて重苦しかった。たまに殴るような大粒の雨がやってきてうんざりさせられることもあり、とにかく不快な季節。特に影浦にとっては、サイドエフェクトがもたらす感覚と合わさって苛つかない日が無いくらいだった。
この毎年恒例の不快の上に、今年はある事件の余波が重なっていた。一月以上前、同級生が起こしたボーダー隊務規定違反による除隊処分である。
A級でも名高い二宮隊がこれによりB級への降格処分を受けたことは多大なインパクトを周囲に与えたが、二宮隊のメンバーに親しい者たちは、そうでない者以上にその影響を肌で感じていた。二宮隊の銃手、犬飼澄晴──そして除隊された鳩原未来と同学年の隊員たちなど、まさに。
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