Remember 闇の中にいた。目を凝らしても、一寸先に何があるのか見えないほどの暗闇。その中を、ずるずると這うように進んでいく。夕方まで降っていた雨のせいで地面はぬかるんでいて、その重みに体力を奪われていく。それでも、前に進むしかなかった。
砲撃音が響く。火薬が視界を一瞬照らしたが、景色を捉える余裕もなく頭を抱えた。近くで大きな炸裂音が聞こえたからだ。砲撃が木の幹を砕き、辺り一面に爆弾のように飛散する。先端が尖った大きな木片に体を貫かれたらひとたまりもない。どこから飛んでくるのかわからないそれから身を守る術は少なかった。遮蔽物に身を隠していても、背後から貫かれる可能性があるからだ。足元も視界も悪く、猛烈なスピードで飛ぶそれを目視して避けるのは不可能に近い。だから、せめて頭を守って、神に祈ることしかできなかった。俺のような半端者を加護する神がいるとも思えないが……。
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