体に毒だがあまったるい 別にそれを告げる必要はないのだけれど、おれさまはいつも「ちょっと一服」とまるで独り言のようにわざわざ呟いてからベランダへ出る。そうすると、ニコチン中毒でもなんでもなく、その肺はきれいなピンク色であるはずのダンデまでが「おれも、おれも」となにやらコソコソと呟きながら、おれさまの後をひょこひょこついて来るのだ。そうして、いちばん美味しいひとくちめをおれさまが味わったのを見届けると、またもや「おれも、おれも」とまるでエサを求める雛鳥のようにぴーちくぱーちく鳴いておれさまにまとわりつき、まだまだ美味しいふたくちめを奪ってゆく。そのくせ、ちょこっとふかしただけで「にがい。まずい」と顔を顰めては、ほんの数ミリも減っていない一本をおれさまへ突き返すのだ。
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