それこそシンプル ワイルドエリアの一角で、こじんまりとしたテントと簡易椅子を一つ。長いライラック色の髪を揺らしながら、慣れた手つきであっという間に設営したダンデは、風に飛ばされそうになるキャップを片手で抑えながら空を見上げる。昨日は雨マークが付いていた場所も、今日は見違えるような青空だ。少し前にボールから出した手持ち達は今横にいるリザードンを残してみんな自由に寛いでいる。
「久しぶりにこうした時間を過ごすなぁ」
チャンピオンという立ち位置について数年。毎日が目まぐるしく過ぎる中で、今日は漸く取れた休日だった。肺に思い切り息を吸い込むと鮮やかな草の香り。風に揺れる草花の音と一緒にあちこちからポケモン達の生きる音が聞こえてくる。そんな音に耳を傾けながら、ダンデは草原に思い切り大の字になって寝そべり、目を閉じる。
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