明星のアラーム 人工的な灯りが無いワイルドエリアの夜は、まるで黒のペンキをぶちまけたように暗い。子どもの時は少し怖かったが、知識も経験も得て大人になったキバナにとっては、恐怖よりも安心感の方が大きい。暗くて静かであれば、それはひとによってのトラブルが起きていない証拠であるからだ。
風が草木を揺らす音。目を覚まして動き出そうとするポケモン達の小さな鳴き声。日だまりの温もりがすっかりと抜け切った地面に腰を下ろすと、ざらりと手のひらに乾いた土の感触が伝わってくる。キバナは頬に風を受けながらぼんやりと暗闇を眺める。
ワイルドエリアの定期巡回。ナックルジムとエンジンジム、リーグ職員と持ち回り制で行われるそれは数ヶ月に一度、キバナにも平等に機会が回ってくる。
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