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    kuzu_kuzuwasabi

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    オメガバフロ監♂
    廃人Ω監♂をαフロイドが拾って番う

    #twst

    それを見つけたのは偶然だった。
    Ωを売る、なんてことは未だにあるわけで、フロイド・リーチはΩ市場を訪れていた。
    街から少し離れた場所で開かれている市場は、大通りの賑わいとさほど変わらず、人々の活気が溢れていた。取引される商品が違うだけである。
    フロイドは、上司であり、街の富豪であるアズール・アーシェングロットに言われ、Ω市場の視察に来たのだ。
    なにもアズール自身がΩを買い付けるわけでなく、市場の運営状況を把握するためである。
    売られているΩは主に口減らしとして田舎の村から売られてきた者が多いが、誘拐され、薬漬けにされたΩが売られているケースもある。
    商人たちの仕入れ先についてアズールも知ったことではないが、それに乗じて薬物を売買されると面倒なのだ。
    時々、Ωを薬漬けにするための薬物を商人も嗜んでいることがあり、流血沙汰が起こったりする。
    それに、裏でアズールが仕切る街に、薬物が入り込むのを彼が許せないのだ。だから腕の立つフロイドを市場に向かわせた。
    フロイドはフラフラと市場を歩き回りながら横目で売られているΩたちと商人を確認する。
    Ωたちの待遇は様々で、鉄格子に入れられ枷をつけられた暗い顔をした者もいれば、どこぞの貴族の末端のΩなどと称し豪華な天幕にいる者もいる。
    「あ〜あ、くせえ、臭えな」
    フロイドが呟く。
    フロイドはαであった。
    αとΩは番契約という紙面上の結婚ではなく、生物的、遺伝レベルで契ることができる。
    Ωは男女共に子を成す機能を備えており、より優秀なαを得るためにαを誘惑するフェロモンを出すのだ。
    αであるフロイドの嗅覚がそれを感じ取っている。
    Ωの中にはαだけでなく、大多数を占めるβをも誘惑するフェロモンを発する者もいる。
    性的興奮を助長し、しかも子まで成せるということで、Ωは性処理や子産みの目的で売買されることが多いのが、Ω市場が潰えない理由である。
    フロイドにとっては不快な臭いのする市場を進んでいると、ある微かな匂いに足が止まった。
    一瞬気のせいだと思いまた歩き出すやいなやその香りが漂う。気のせいではない。
    フロイドは他の商品には目もくれずにその匂いを辿る。
    甘ったるい、しかしフロイドにとって不快な臭いの中に、わずかに「好ましい」と感じる匂いがあるのだ。
    客引きの声すら聞こえず、フロイドは一直線にそれを目指した。
    それは、ボロボロの布を着たみすぼらしい姿で地べたに座り込んでいた。
    フロイドは恐る恐るそれに近づく。長身で体格のいいフロイドが近づいてもそれはびくともせず、ただ虚ろな目をしていた。
    特にこれといった特徴のない顔立ち、整えられてない髪はボサボサで、体も土や埃で汚れている。
    「やぁーお客さん。ソイツに興味があるんですか?」
    フロイドに気づいた店主が商人らしく気さくに話しかける。
    「売ってるこっちが言うのもなんですが、そいつぁやめたほうがいいですよ。そいつ、前のご主人に番契約解除されて今じゃほぼ廃人で。だからこうやって安売りコーナーに置いてるんですよ。」
    そう言って店主は安売りの看板を指さした。
    「まあこいつが売れなかったら処分するだけですがね。ほら、お客さん、こっちには新品がいますからどうぞそちらに…」
    処分。
    その言葉にフロイドはいてもたってもいられなくなった。
    「こいつ、くれ。」
    「えっでも、」
    フロイドの言葉に店主は戸惑った。
    「いいから。こいつよこせ。」

    フロイドはそれを抱き抱えて帰ってきた。
    薄汚れた布に包まれたそれはフロイドに横抱き…いわゆるお姫様抱っこをされている。
    薄汚れた布からは垢やら土やらで汚れたみすぼらしく細い脚が見えている。
    「…フロイド…なんですそれは。」
    「おれの番。」
    叱るような声色のアズールとは反対に、フロイドは心底嬉しそうに言った。
    「!!お前!それはどう見てもあの市場のΩでしょう!!!お前が性処理用でも番でも買うのは自由ですが仕事を優先させろ!」
    フロイドが拗ねたように口を尖らせる。
    「仕事はちゃんとしてたし〜…あ、そうだ。」
    アズールの怒りなどなかったかにようにフロイドが1枚の紙をアズールのデスクに置く。
    「なんです?これは」
    「俺小エビちゃんのこと本当に大事にしたいの。」
    フロイドは抱き抱えたそれを布の上から撫でる。
    「小エビ…?ああ、そのΩの品質管理書ですか…、って、フロイド!そのΩ安すぎじゃないですか?!番契約解除の経験有り…ってお前…!」
    アズールのデスクに置かれた紙はΩを購入した際に発行される経歴の書かれた領収書のようなものだった。
    そこにはフロイドが買ったΩの名前、経歴、値段などが記されていた。
    フロイドは抱き抱えたそれを撫でながらうっとりとした表情を浮かべていた。それはアズールも、フロイドの双子の兄弟のジェイドでさえ見たことのない表情だった。
    「アズールなら小エビちゃんの戸籍作れるよね?俺、小エビちゃんと結婚する。…運命の番なんだから。」

    フロイドとΩの小エビことユウは結婚した。
    アズールがユウの戸籍を作ってやり、フロイドと入籍したのだ。
    番契約解除を強いられたユウはほぼ廃人同然なため、ユウの意思などなかったが、フロイドはとても嬉しそうにしていた。
    フロイドはジェイドと一緒に住んでいた部屋を出て、新しい家でユウとの新婚生活をはじめた。
    薄汚れていたユウを風呂に入れ、フロイド自ら髪を整えたり、ボディケア、ヘアケアなども自身よりも甲斐甲斐しくユウを世話した。
    ユウを風呂に入れフロイドが体に触れることで気づいたが、ユウの体には、いくつもの傷があり、刃物で切られた傷、殴られた跡、火のついた煙草を押しつけられた跡があった。
    ユウの手脚は細く、肋が浮き出たその細身は明らかに栄養失調だった。
    アズールに「オフィスにゴミを持ってくるな。」とまで言われたユウは見違えるほど綺麗になったが、やはり平々凡々な顔立ちでお世辞にも綺麗、可愛いと分類されるものではない。
    相変わらず、ユウは虚空を見つめていたが、フロイドは休日になるとユウを散歩に連れ出しデートと称していた。
    番契約を解除されたΩは長く生きられないと言われていた。廃人化が改善されるとはフロイドも思っていないが、せめてユウに長く生きてほしいと、すでにある頸の噛み跡に上書きするように跡を残した。
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