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    厄災課玄武

    元同人オタ〜長き封印の時を経て沸々

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    厄災課玄武

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    プルア・インパ・元筆頭幹部
    ※ 厄災の黙示録DLC全終了後、の捏造です。
     根拠などは全くありません。
    愚著白い闇シリーズの後の話ですが、読んでいなくても(多分)わかります。

    面の下「プルア、なぜ素破を研究所で引き取ったんですか?」
     インパの問いに遺物研究所のトップは積み上げた本の上に腰掛けたまま宙を睨んだ。
    厄災との戦いの最中、敵から味方へと変わったイーガ団。過去の全ての遺恨を捨て去るには時間がかかるとみたハイラル王家は、有能な筆頭幹部を城に残すことを条件に組織の存続を認めたのだ。
    その際、プルアがその身柄を引き受けると申し出た。研究に加わったイーガ団員達のためと。
    だが、本当にそれだけなのかと。
    「あの体躯と腕力ならガーディアン運ぶのに便利かと思ったのよ」
    「真面目に聞いてるんです」
    妹の手が本にかかる。
    プルアは本の塔を崩される前に飛び降りた。
    人差し指を、自分より背の高い妹の鼻先に突きつける。
    「面白い話じゃないわよ?」
    「やっぱり何か理由があった…」
    「先に言っておくわ」
    掴みかからんばかりの姉の剣幕に、言葉が詰まる。
    「もしあんたが、これから話す事を信じたくなければ、信じなくていい。シーカー族の中でも秘された部分の話よ」

     インパ、あんたは次女にして、シーカー族の次代の長。どうしてそうなのか知ってる?
    長女の私が断った? まさか。そう簡単にワガママで断れる訳ないじゃない。
    あんたが生まれる前、その額の入れ墨を掘ってた男が居たのよ。幼い頃から武術の才があって、遁術の覚えも良かったって聞いてるわ。
     部族は安泰の筈だった。
    あいつは真面目過ぎたのよ。厳しい掟に修行、妹の私から見ても度を越していた。そんな折り、敵を深追いして行方不明になった。
    偶然か故意か、逃げたのか放り出されたのか、そこまでは知らない。
     ここからは推測。
    あいつはイーガ団に拾われた。一番の仇敵の嫡男を団に引き入れるのは、さぞや溜飲を下した事でしょうよ。あいつが、何を思っていたかは知らないし知りたくもないし、あいつも思い出したくもないでしょうね。
     で、嫡男を失ったシーカー族は、生まれたばかりのあんたを後継に決めたのよ。私が継ぐには、大きくなり過ぎていたのね。修行が間に合わないって判断。私も遺物研究の方が楽しそうだったから、喜んで家督の権利を手放した。

     わかった?
    「アイツ」を私が引き受けた理由。
    あいつが私の事を覚えてる可能性はあるけど、いまさら兄と呼ぶ気は無い。あいつも捨て去った素性を明かす事はないでしょうよ。
    あいつの面見た?紋章を切り裂く亀裂。
    イーガ団の紋章を、よ。
    あいつの素顔には、もうシーカーの刺青は残ってない。削ぎ落としたか焼いたのかわかんないけどね。あいつはシーカーでもイーガでもない。
    髪も黒く染めてるし、あいつが「居なくなった子」だと確信してるのは私だけ。

     呆然とする妹をうち捨て、プルアは部屋を出た。外は雨の気配で風が強い。特に用事はなかったが、部品の保存庫に足を向ける。

     本当は、真相はちょっと違う。
    私の母と、アンタの母が違うのを、アンタは知っている筈だね?
    こっちは側室、アンタは正室の子。
    アンタが私を姉と呼ばない理由はソコだろう?
    後にも先にも、側室の第二子である私には族長のお鉢は回ってこない。
     そう、アンタの誕生が、あいつを追い詰めた。族長にのみ引き継がれる秘術や歴史を、齧り始めた頃だったから。身内に殺されるとあいつは勘付き、私宛に手紙を残していた。
    文字もまだ習っていなかった私が誤って手紙を捨ててしまわないよう、可愛らしい仕掛けをしてあった。竜胆の花が挟んであったのさ。花をとっておくために手紙は保存され、私はあいつを知る事ができたって寸法。

    一族の中で、あいつは死んだ事になっていた。私は何故か信じられずに、だが周囲に合わせて死んだと思い込んでいるフリをした。

     筆頭幹部の座から離れたあいつを、私は竜胆と呼んだ。あいつは無言で受け入れた。兄と確信するにはそれで十分だったのさ。

     物品庫はいつも乱雑でカビ臭くて、古めかしいホコリが厚く被さって、お気に入りの場所だ。
    …扉が薄く空いている。
    「ちぇっキー♪ アタシの城で何してんのかしら?」
    プルアは簪を一本引き抜いて投げつけた。
    「片付けを指示したのは所長殿だが」
    簪を指で受け止め、黒髪の男が笑う。顔の傷痕はずいぶんと古い。『どちらにもなりきれぬ』男。
    「あら、ごめんあそばせ?」
    人差し指と小指を立て、男の目に突きつける。
    相手は薄笑いのまま微動だにしない。
    「上機嫌でなにより」
    「丁度さっき、あんたの話をしてた所よ。
     インパとね」
    「…次期族長殿か」
    眉ひとつ動かさない。まぁ、こちらも笑顔を貼り付けているけれど。
    「インパがあんたの事聞いてきたのは理由があんのよ?」
    簪を奪い返し髪に刺す。
    「次期族長と、イーガ団に近しい者とで縁を結んで友好関係を、とかなんとか」
    表情は変わらないまま、僅かに髪が揺れた。
    「それは」
    「ご名答ぉー。明日にはあっちの総長の方へ使者が着くでしょうね」
    「インパ殿はなんと?」
    「オトコの好みは知らないなー。主君一筋だし。
     そういう意味ではあんたらそっくりよ?」
    男の横をすり抜け、遺物の一つを拾い上げる。鏡のように磨き上げられた石が、男の背中を映す。
    「ま、仮面夫婦でも愛を育むでも、
     すきにしなさいな」
    全く想像もしていなかった?
    そんな事ないわよね。
    シーカー族のエグい因習を、あんたは知ってる。
    「族長と王で決めた話だから拒否権は無いわよ。
     あぁ、インパはお尻のおっきい安産型だから安心してね」
    「…安心の意味がわからぬ」
    「でも彼氏も居ない子だから、最初は優しくね?」
    「…分かる言葉を話せ…」
    「はっきり言っていいのかしら?
     腹違いの妹を孕ませて跡継ぎ作れって」
    石を鏡にして、適当に刺した簪を整える。その向こうで長躯がこちらを振り返った。
    「血縁だと気付いてるのは私だけ。そこを抜けば至極ありがちな政略結婚」
    「王家かシーカーか、ずいぶんと性急な策だ」
    肩をすくめる。
    「不満そうだけど、婚姻結んだ方が、イーガ団支援の策もあんたから出せるようになるわよ。
     主君大好きの筋肉同士、うまくいくんじゃない?」

    生き残った者が命を繋ぐ。
    それでいいのよ。
    仮面の下で泣こうが笑おうが。
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