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    厄災課玄武

    元同人オタ〜長き封印の時を経て沸々

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    厄災課玄武

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    ゼルダ無双ハイラル〜 ヴァルガ様小説1話
    魔女の争乱から1〜数年前 ゼルダ王女が竜氏の事知ってる風だったので捏造しました。
    カップル・BL要素皆無

    ヒトあらざる その男は、民間の徴兵で入り込んでいた。
    大柄で無口で、腕の立つ男。
    捨て駒のような少数部隊で魔物の拠点を攻めた際、負傷した隊長に代わり指揮を取り、魔物達を撤退させたというのが、最初の武勲。
    壊滅寸前の自軍に単騎で助太刀し、撤退の援護をしたとも。
    しかし、隊長抜擢も、論功行賞も辞退した。
    周囲の信頼くらいは得そうだったが、常に甲冑をまとい、顔すら見せなかったため、薄気味悪く感じる者が多かった。
    「名は、ヴァル、と名乗っていますが、彼を知る者が全くおらず、どこの地域の出身かもわかりません」
    報告する親衛隊隊長の声は淡々と。
    「一度、こちらへ出向くよう伝令を出しましたが、必要ないと答えただけだったと聞いております。
     危険分子かどうか、監視は付けています」
    「では、こちらが出向きましょうか」
    「ゼルダ様っ」
    「あなたも気になっているのでしょう?」
    王女は微笑み、おしのびで、と付け加えた。

     修道士の長衣を纏い、幌馬車の荷台で王女は上機嫌だ。御者をするインパに笑いかける。
    「偽名も決めましょうよ、インパは…そうですね、彩(サイ)なんてどうです?」
    「…構いません」
    「私の事は夢読み、とでも」
    「畏まりました、夢読み様。彩めが道中の護衛を致します。決して無茶をされませぬよう」
    僧兵のいでたちに黒い頭巾を目深にかぶったインパがやんわりと釘を刺す。いつもの太刀ではなく、目立たぬよう腰に小刀を差している。
    「人となりを見て納得したら戻りましょう。
     危険と判断した場合には、いいですね?」
    この親衛隊隊長には、突如現れた豪傑が不審でならないのだ。
    彼女はシーカー族だから。
    王家に付き従い、王家が輝く象徴として民の信頼を得続けられるよう、影で働く一族。
    目的の為には手を血で穢すも辞さない一族の長なのだ。
    「彩、判断を急ぎ過ぎないよう頼みますよ?」
    「承知しております」
    御者は表情ひとつ変えず、ピシリと鞭を振った。

     ゲルド辺境の拠点まで2日かかり、遊撃して歩くその男を見つけるのに更に2日を費やした。
    「夢読み」の目から見て「従者・彩」は不機嫌になっていたが、まだ、冷静に主君の所へ案内する余力を残していた。
     件の男は全身を黒い甲冑に包み肌を見せず、言葉を発しなければ魔物か不死の者かと疑うところだ。
    「オレに用とは」
    聞き易いはっきりしたハイリア語。母国語を別に持つ者は、こういった発音をする。
    「ハイラルの地に猛き者来たり、と夢が申しましたの」
    化粧も装飾も無い、薄汚れた修道士が答える。
    黒甲冑は僅かに首を傾げた。
    「それで?」
    「夢では彼の者の真意までは読み取れず、ゼルダ王女様のお役に立てんと、見定めに参りました」
    「…獅子か蛇か、本人に聞きに来たと?」
    ヘルメットの奥のくぐもった低い声が笑いの響きに変わる。
    「ヒトの評判だけでは読み取れぬ御仁と思われましたので」
    修道士の片手は、脇に立つ従者の腕に触れ、飛び出してしまわぬよう宥め続けていた。

    「ハイラルの国からみるなら、獅子でも蛇でもないな」
    面ぼお(※)の下に隠された視線が修道士を舐め回す。
    「高貴な…姫が辺境まで出向くほどでは」
    言葉も中途で黒甲冑の腕が動き、小刀を跳ね飛ばしていた。
    次いで喉元を狙って突き出された従者の腕を絡めとる。流れるように引き込み地面に落とした。
    「躾のなってない犬を…」
    従者の背を折らんばかりに打ちおろした足が異を感じ取った。
    「女か」
    男性とは違う、薄い弾力がこちらを跳ね除けんともがく。右手首を捕らえて背に捻り上げ、足を退けた。
    「舐めた、真似を」
    従者が呻く。
    「夢読み」がため息をつく。
    「非礼をお許しください、ヴァル殿
     彩も、引きなさい」
    従者の抵抗が止み、黒甲冑も拘束を解いた。立ち上がり際、フード奥の赤い瞳が燃えているのに気付く。主人の正体を看破され、攻撃が空振りし、女性だからと配慮された、その全てに。

     馬車で運んできた幕舎の下で、男は、素性を明かさず、ただ従軍させてくれればいいと言った。国境であり魔物達との衝突が激しいこの地に、と。
    「王家に忠誠を誓うとまでは言えぬが、牙を剥かぬことならできる」
    「目的はなんだ?
     ただ戦場で戦いたいだけではあるまい?」
    「だけ、というのでは不足か」
    「隠しているのを認めたな」
    従者が口端で笑い、黒甲冑が低く唸った。
    少しの間を置き
    「オレの部族と国境の部族で衝突があって、戦況を見に来ているのだ」
    言葉を選びながら喋る。
    「オレひとりで動くと目立つので、ヒトに紛れこんで…」
    言葉が切れ、「夢読み」がふふっと吹き出した。
    「ヒトあらざるあなたが、ヒトの姿を借りてヒトの言語を操り、束の間にせよヒトと共闘するという事ですね」
    従者は主君を見つめ、次いで黒甲冑を見据える。
    動揺を見せまいとしているが、赤い兜飾りが僅かに揺れた。
    「……あぁ、そうだ」
    「彩、手討ちにしてはいけませんよ?
     彼は嘘のつけない純粋な者です。
     牙を剥かぬという約束も守るでしょう。
     安心しました。明日、帰途につきましょう」

    ◆◆◆続く

    ※面ぼお:フルフェイスヘルメットの顔部分
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