Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    o-tukiピニャコラーダ

    @0_tuki_ika

    イカだったり版権だったり雄っぱいだったり。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 49

    狩猟が怖いメジロくんの話。まだハン♂ウツじゃない。

    ##モンハン

    You are my Sunshine.2 寒い。寒冷群島なのだから当たり前だろう、とメジロは首を亀の様に縮こませながら震えていた。おまけに時間は夜間。冷え込みも当然である。
     だがそんな寒さや暗さなど、メジロにとってはどうでもよかった。
     ──早く帰りたい。
     ハンターとして活動を始めてそろそろ半年になるが、独りでの狩猟はまだまだ怖かった。完全に独り、という訳ではない。オトモのアイルーとガルクも一緒であり、なにより、メジロの武器は操虫棍だ。使役する猟虫の存在も有難かった。
     見習いを卒業してすぐは師であるウツシがクエストに同行してくれていた。もちろん、ウツシのオトモのデンコウとライゴウも一緒だった。クエストにまだオトモを同行させられないメジロに二匹を貸し、一緒に戦ってごらん、と優しく教えてくれたのだ。そして実際に二匹の動きを見ていて驚いた。ウツシと数々のクエストをこなしてきたのだから当たり前と言えば当たり前なのだが、メジロが武器を構えてわたわたしている間に、数匹のイズチをあっさり討伐してしまったのだ。ウツシは一緒に戦った事を褒めてくれたが、実際あの場でメジロが出来た事なんてほとんど無かったと言っても過言ではない。今思い出しても、その情けなさに涙が出そうになる。自分なんかが戦わずともオトモが全部やってくれるのではないか?そう考えるようになってしまっても仕方ないだろう。
     どんどん悪い方向に思考が沈んで行くのを感じながら必死にその場で足踏みをする。少しでも休めばすぐに恐怖に押し潰されてしまいそうだ。それに、いくら寒冷地用に防寒対策が施された防具であっても、極寒の中でじっとしていれば凍傷になる恐れがある。こんな寒さの中ずっと立ち続けているのだって辛いのに、いつ襲ってくるかも分からない敵に対して神経を張り詰め続ける事はもっと辛かった。
     ──早く、帰りたい。
     涙を堪えているせいか、寒さのせいか、鼻水が止まらなかった。
     もふ、とした柔らかく暖かい感触に下を見れば、ガルクが体を寄り添わせながら心配そうに見上げていた。
    「うぅ、まろまゆさん。すみません、オレ、頑張ります……」
     まろまゆ。それはガルクの名前である。目の上に丸い眉毛のような模様があることから、メジロが名付けた。頭を撫でられたまろまゆは尻尾を振ってメジロに応えた。
    「ご主人、来たニャ」
    「ありがとう、ねじねじさん」
     そしてオトモアイルーの名前がねじねじである。尻尾が捻じ曲がったような形状であることが由来だ。こちらもメジロが名付けた。サポートタイプはファイト。きっと自分よりも活躍してくれると思っての選択だった。
     眼下を見やれば、こちらに泳いでくるイソネミクニの姿を捉えることが出来た。先程までの弱気な気持ちを押し込めて操虫棍を構え直すと、深呼吸をして精神統一を始める。寒さと緊張のせいで息苦しいくらいだったが、今この瞬間を逃してはならないことは分かっていた。
     イソネミクニというモンスターは泳ぎを得意としており、水辺が多い寒冷群島は相手にとても有利だ。おまけに動きもすばしっこく、猟虫を飛ばしても追いつかない事もままある。その不利な状況を打破すべく、閃光玉を投げつけたりクナイを投げつけたりしてとにかく注意を自分達に向けさせた。小賢しい動きにイソネミクニが怒り状態になったところで一目散で逃げ出し、それを追いかけてやってくるのを確認しながら適当な場所で翔蟲で崖の上に飛び乗った。目標を見失ったイソネミクニはしばらくその場をウロウロとしていたのだが、諦めきれない様子でしきりに鼻を使ってメジロ達のニオイを嗅ぎ回って後を追いかけて来る。
     そうしてイソネミクニが思うように動けない場所、自分達が戦いやすい狭い場所まで誘導した所でいよいよ戦闘が始まった。

    「お疲れ様ニャ、ご主人」
    「回復薬が残り一個しかないのですが……!」
    「回復薬を使い切らなくなっただけ成長ニャ」
    「本当に成長しているのでしょうか……」
     激闘の末の勝者はメジロであった。だが、その戦いっぷりは到底褒められるようなものではなかった。イソネミクニの攻撃は避けられない。武器を砥ぎたくともなかなかタイミングを掴む事が出来ず、今だと思ってもイソネミクニに邪魔され、ならば攻撃しようにも、切れ味の悪い武器では弾かれてしまう。そんな状況の中、体力と集中力だけが削られていった。飛ばした猟虫が弾き落とされる度に情けない悲鳴をあげた。もう少しで捕獲可能という場面では、せっかく有利な場所に誘い込んだというのに逃げられてしまい、今度は此方がその背中を追いかけて走り回る事になってしまった。そうして、眠って体力を回復させている隙に痺れ罠にひっかけてなんとか捕獲を成功させた。
     狩猟完了の知らせをギルドに出そうにも、疲労と寒さで手ががちがちと震え、ミミズが這ったような文字しか書けなかった。ようやく書けたものをフクズクの足に結び付け、飛び去っていく姿を見て、どっ、と疲れが押し寄せてきたメジロはそのまま地面にへたり込んでしまった。するとそれに驚いたまろまゆとねじねじも心配そうに近寄ってきてくれた。二匹が傍に来てくれる事で幾分か心強く感じたメジロは、二匹を抱き上げて顔を埋める。柔らかな毛皮に包まれて少し落ち着いてきたのか、ぽろぽろと涙が零れた。猟虫も落ち着きない様子でメジロの腕にくっついてくる。余計に涙が止まらなくなった。三匹はメジロが泣き止むまでずっと側にくっ付いていた。
     狩猟に出る度にどんなにボロボロの姿で帰還しようとも、メジロはしっかりと狩猟をこなしていた。例え狩猟中の姿がお粗末なものであっても、確実に実績を積んでいるのだ。きっとこれから依頼される狩猟内容はどんどん困難なものへとなっていくのだろう。
     そう考えれば今のうちからもっとしっかりしなければならない、そう思っても恐怖心というものは簡単に克服できるものでもなかった。ハンターという仕事はいつ死んでもおかしくない。いや、ハンターでなくとも生きているものはいつでも突然死んでしまう。明日は我が身では無い、とは言えないのだ。
     メジロは死にたくなかった。絶対に死ぬもんかと心に決めていた。必ず生きて帰って、里で待っていてくれるウツシに無事な姿を見せるのだ、と。
     クエストを成功させ、無事に帰還する度に「良くやったね!」と迎えてくれるウツシの姿を、暖かい太陽のような姿を思い出すだけで嬉しくなって胸が高鳴った。
     ──早く、帰ろう。
     フクズクを飛ばしたから直ぐにギルドや里に知らせが届くだろう。そうすれば、ウツシはいても立っても居られない筈だ。アヤメやゴコクから落ち着けと嗜められているかもしれない。そうまでして待っていてくれる師に一刻もはやく無事な姿を見せたくて、メジロ達は急いで帰り支度を始めた。

     結局、あまり無事とはいえないボロボロの姿に、今回もウツシを狼狽させてしまった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭😭😭😭🙏💕💕🙏🙏🙏👏👏❤❤💯💯💯💯💯💯
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    o-tukiピニャコラーダ

    DOODLE狩猟が怖いメジロくんの話。まだハン♂ウツじゃない。
    You are my Sunshine.2 寒い。寒冷群島なのだから当たり前だろう、とメジロは首を亀の様に縮こませながら震えていた。おまけに時間は夜間。冷え込みも当然である。
     だがそんな寒さや暗さなど、メジロにとってはどうでもよかった。
     ──早く帰りたい。
     ハンターとして活動を始めてそろそろ半年になるが、独りでの狩猟はまだまだ怖かった。完全に独り、という訳ではない。オトモのアイルーとガルクも一緒であり、なにより、メジロの武器は操虫棍だ。使役する猟虫の存在も有難かった。
     見習いを卒業してすぐは師であるウツシがクエストに同行してくれていた。もちろん、ウツシのオトモのデンコウとライゴウも一緒だった。クエストにまだオトモを同行させられないメジロに二匹を貸し、一緒に戦ってごらん、と優しく教えてくれたのだ。そして実際に二匹の動きを見ていて驚いた。ウツシと数々のクエストをこなしてきたのだから当たり前と言えば当たり前なのだが、メジロが武器を構えてわたわたしている間に、数匹のイズチをあっさり討伐してしまったのだ。ウツシは一緒に戦った事を褒めてくれたが、実際あの場でメジロが出来た事なんてほとんど無かったと言っても過言ではない。今思い出しても、その情けなさに涙が出そうになる。自分なんかが戦わずともオトモが全部やってくれるのではないか?そう考えるようになってしまっても仕方ないだろう。
    2831

    recommended works