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    o-tukiピニャコラーダ

    @0_tuki_ika

    イカだったり版権だったり雄っぱいだったり。

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    POIPOI 49

    まだハン♂ウツじゃないハン♂ウツの話。残酷・グロ描写有り。

    ##モンハン

    You are my Sunshine. 空気を斬り裂く、だとか、大地が裂ける、とは、まさにこの事ではないか。
     里の者達は息を呑んで、一点を見つめていた。視線の先では、血に濡れるのも気にせず、肉の塊を抱きしめて泣き叫ぶウツシが居た。その腕の中の小さな体は、もう、動かない。半分以上無くなった頭部では、目を合わせる事も叶わない。だがそれでもウツシは、何度も、何度も呼びかけるのだ。
    「……どうしてだい? ねえ、目を開けておくれよ、起きておくれよ。俺は帰ってきたよ? おかえりって言っておくれよ、愛弟子……っ!」
     涙で顔中を濡らし、鼻水と唾液を垂らす様をまるで気にしない。けれど、それがウツシという男なのだ。里の者は皆知っている。彼がどれだけ強く、熱く、優しく、頼れる存在なのか。だからこそ誰も、何も言えなかった。ウツシに声をかけられる者などいない。
     ウツシの一番弟子であった少年は、もう帰ってこないのだから。


     それは、ウツシが任務でほんの少し里を離れている間に起こった。
     里守見習いの子供達が大社跡の入り口に山菜を取りに来ていた。里から近いその場所は普段は人の往来も多く、大型のモンスターはおろか、小型のモンスターも滅多に現れない。彼等にとってそこは遊び場だったから、なんの疑いもなく入って行ったのだ。その面々の中に、ウツシの愛弟子である少年も一緒にいた。ウツシから不在の間幼い弟分の面倒を見るように言われていたが、大社跡に行くと告げれば泣いて拒んだ。面倒を見ろと言われた手前置いて行く事も出来ず、かと言って友達と遊びたい盛りの少年は泣き止まない弟分の相手が嫌になり、ヒノエに半ば押し付けるようにして出かけてしまった。少々後ろめたさもあったが、友達と一緒に談笑しながら歩いていればそんな気持ちはすぐに何処かへ吹っ飛んでしまったようだった。
     しばらく山菜を取ってから誰かが言い出した。タケノコを取りに行こう、と。まだ春先の大社跡には食べられる物が沢山あるだろう、と。それに全員が賛同した。子供だけで危険な場所へ行く事に躊躇いは無かったのかと言えば嘘になる。けれどそれよりも好奇心の方が勝っていた。何より、見習いであるとはいえ、ハンターの訓練を受けている少年が一緒なのだから大丈夫だと、高を括った。
     結果だけ言えば、それは間違いだった。
     少年達は大社跡を奥へと進んでいった。奥に進むにつれ、少年はとある事に気づいた。鳥の鳴き声が聞こえない。風に乗ってくるはずの虫の羽音すら聞こえて来なかった。いつもなら聞こえるはずの音が消えていたのだ。少年以外は、誰もそれを不思議とは思わなかった。楽しんでいる友達等に水を差すような事はしたくなかった。何かおかしいと思いながらも、少年はそれを黙っていた。
     しばらくして、立派なタケノコを皆で掘り、籠に入れて安堵したのも束の間、いよいよ木々の葉擦れの音や小動物達の気配も消えた。代わりに得体の知れない何かがそこら中から感じられた。少年は恐怖を覚えながら友達に言った。そろそろ帰ろう、と。だが、既に遅かった。
     パキリッ、という枝を踏み折る音が聞こえた瞬間、誰もが息を呑んだ。振り返るとそこには、イズチが居た。小型のモンスターだが人の大人程の大きさがあり、少年達と比べれば遥かに大きい体躯だ。それが一体ではない。二体、三体……どんどん増えていく。イズチの大群だった。彼等は獲物を見つけて喜んでいるように鳴き喚いている。
     その光景を見た途端、少年達は悲鳴を上げながら駆け出した。イズチの群れは追いかけてくる。ハンター見習いの少年も恐怖に慄いたが自ら殿を務めた。見習いの為、モンスターの狩猟は許されてはいないし、まして、そもそも自分一人でイズチを狩猟できる実力は無いと自負していた。しかし、それでも自分が皆を守らねば、と思った。
     走って逃げてもすぐに追いつかれるのは明白だったが、少年達は必死に逃げ続けた。そして遂にひとりが足をもつれさせて転んでしまった。好機とみたイズチ達が涎を垂らしながら迫ってくる。目の前にいた閃光羽虫の群れを刺激して、目くらましをして時間を稼いだ。突然の眩い光に驚いたイズチ達が混乱している間に、転んだ者を引っ張り起こし、転んだ際にばらまいてしまった山菜には目もくれず里を目指した。
     皆が里に続く坂を下るのを最後尾から見ながら、自分もそれに続いて走り出した少年だったが、先に転んだ者がばらまいてしまった山菜を踏んづけてしまい、滑って坂道を転がり落ちるように転倒した。地面で殴打した腕が痛い。それでも少年は慌てて立ち上がろうとした。早くしないとイズチの餌食になってしまう。焦りながら、なんとか立ち上がり後ろを見ると、すぐそこに、イズチが迫っていた。
     少年は咄嵯に武器を構えた。訓練用の武器だ。持ち手部分には血で汚れたボロボロになった包帯が巻かれており、豆が潰れる程に鍛錬に励んでいたのが見てわかる。少年はその武器を振りかざし、イズチに飛びかかった。しかしイズチもただやられる訳ではなく、鋭い爪を剥き出しにして飛びかかってきた。その爪と武器がぶつかり合い、火花を散らす。少年とイズチはそのままもつれ合って地面に倒れた。そしてそのまま取っ組み合う形になる。イズチは牙を突き立てようと口を大きく開けた。その瞬間を狙って少年は持っていた武器でイズチの顎を貫いた。するとイズチは動かなくなった。どうやら死んでしまったようだ。
     少年はほっとしたのも束の間、周りにいたイズチ達が騒ぎ出す。仲間を殺された怒りで、興奮状態になっているようだった。このままではまずいと悟った少年は急いでその場から離れようとした。だがそれは叶わなかった。いつの間にか取り囲まれてしまっていたのだ。もう逃げることは叶わない。そう思った少年は覚悟を決めて、武器を構え直した。見習いだから、狩猟が認められていないから、だとか言っている場合では無いのだ。ここで自分が戦わねば皆が襲われてしまう。土台無理な事とはいえ、帰ったらきっと教官は「勇敢に戦ったね」と褒めてくれる。
     少年は意を決して、目の前にいるイズチ達に向かっていった。背後から別のイズチが飛びかかってきているのには気付かずに──。


     子供達の悲鳴で大人達が異変に気付き、里守衆が武器を手にして駆けつけた時には、既に決着はついていた。息絶えた少年にイズチが群がり、それを貪っている。里守衆数人がかりでイズチを追払い、なんとか遺体を回収することが出来た。
     少年の遺体は酷い有様だった。腹を引き裂かれて内臓を食われ、胴体と下半身は繋がっていなかった。頭部は何度も噛み付かれたのか、頭蓋骨が陥没して、半分が欠損していた。辛うじて人としての原型は留めていたが、ハンター見習いのあの少年だと言われなければ、すぐには判別出来ない程だった。
     そんな少年の遺体を大事に里まで持ち帰り、筵の上に横たえさせたところで、息を切らしながらウツシが帰ってきた。惨状を目の当たりにして言葉を失った様子だっが、やがて耳を劈くような声で泣き叫んだ。少年の遺体に取りすがって、ずっと泣いていた。その姿はあまりにも哀れで、普段の彼からは想像もつかない姿だった。だからこそ、誰もが息を呑み、ウツシに声をかける事が出来なかった。
     人々の輪の外側、あまりな現状に固まって動けなくなっているヒノエの手を握る同じく固まって動けなくなっている幼児がいた。少年がヒノエに押し付けるように預けた弟分だ。少年と血が繋がっているわけでは無いが、二人とも親無しである為に、ウツシが引き取って面倒を見ていた。ハンターの訓練として木刀を振り回す少年の横で、見様見真似で木の枝を振り回す姿が微笑ましくあったが、少年からは「真似すんな」とよく邪険にされては泣かされていた。しかし、どんなに邪険にしてもウツシや少年の背中を追いかける姿に、少年は悪い気はしていなかった。お互い親無しという境遇や、兄弟子として面倒をよく見ていた事から、二人はなんだかんだ仲が良く、本当の兄弟のようであった。
     幼児は始めこそウツシの叫び声に驚いていた様だが、その瞳は、じっ、とウツシの顔を見つめていた。固まったままきょとんとしていた顔は次第に歪み、ヒノエの手を振り解くと制止する声に耳も貸さず、人混みをかき分け、ウツシの側まで駆け寄った。
    「きょおかん」
     と、舌足らずながらも懸命に声をかけ、真っ赤に染まったウツシの手を握る。嗚咽を漏らして泣き続けていたウツシは、ハッと我に返る。
    「っ……、メジロ……」
     それでも涙も嗚咽もなかなか止まらず、なんとか呼吸を整えて、やっとの思いで幼児の──、メジロの名を呼んだ。
    「きょおかん、なかないで、なかないでぇ……!」
     メジロは一生懸命にウツシの手を握り、やがてウツシよりも大きな声で泣き出してしまった。その声に今度はウツシが驚いて固まってしまう。わんわん泣くメジロの声を聞いているうちに、ようやくウツシの涙も止まった。あれだけ強く抱き締めていた少年の遺体を筵の上にそっと戻すと、メジロに向かって両手を広げる。肌も装備も夥しい血で濡れていたが、メジロは臆する様子も見せず、その腕に泣きついた。
    「ごめん、ごめんよ……。心配してくれたんだね、俺はもう大丈夫だから、泣かない、泣かない……」
     ウツシはそう言って、メジロを優しく抱きしめた。その目尻にはまたもや涙が浮かび、流れ落ちていく。痛い程抱き付いて泣き散らす幼子を落ち着かせるように、ぽん、ぽん、と背を叩きながら頭を撫でる。あやしながら何度も繰り返される、泣かない。それは、ウツシ自身に言い聞かせているかのように、か細く震えていた。
     しばらくして、泣き止んだメジロを下ろしたウツシは、もう一度少年の遺体を強く抱き締めた。
    「おかえり。勇敢に戦ったね」
     本当に頑張ったね。そう言いながら、ウツシは再び遺体を筵の上に戻した。その後ろ姿はあまりにも小さく見えた。
     その後、少年の葬儀はしめやかに執り行われ、その間、メジロは小さな手でウツシの手をずっと握っていた。


    「……本当に大丈夫かい?」
    「大丈夫です」
    「忘れ物は? 俺もついて行かなくて大丈夫かい?」
    「本当に、大丈夫ですので」
     月日は流れ、メジロがハンターとしてギルドから認められてしばらく経った日の事だ。今日からハンターとしての本格的な活動が始まるというのに、ハンター見習いを卒業した時と同じように、ウツシは朝からずっとこの調子だ。
     ハンターと認められた当初は『訓練のおさらい』と称して、しばらくの間クエストにウツシが同行していた。しかし、いつまでもこのままではいけないと、お互い分かっていたのだ。ウツシに一人前と認めてもらえるよう、ひとりでも大丈夫だと安心してもらえるように、今回はメジロからひとりでクエストに行くと申し出たのだ。それも、イズチの討伐クエストである。
     だが、いざとなるとやはり不安で仕方がない。本当は、一緒に行って欲しい。側に居て欲しい。けれどこれ以上ウツシに迷惑をかける訳にはいかない。だから、必死に堪えた。
     ウツシは少し悩んだ後、何かを決心した様子で、うん、とひとつ大きくうなずいた。そして、メジロの両肩に手を置くと、にかっ、と笑ってみせた。
    「愛弟子よ、行っておいで!」
    「行って参ります!」
     ウツシは笑顔で手を振りながらメジロを見送った。その姿が見えなくなるまで見送り続けた。メジロもウツシの姿が見えなくなるまで何度も振り向いた。その度に、千切れそうな勢いで腕を振りながら、笑顔で見送る師の姿に安堵した。
     メジロの兄弟子だった少年が亡くなってから、ウツシは目に見えて落ち込んでしまっていた。メジロに対して過保護すぎる行動をとるようになったり、夜中に悪夢を見て飛び起きたりと、精神状態が不安定になっている事が見て取れた。メジロの前では笑顔でいたが、その表情に以前のような輝かしさは無く、いつもどこか悲しげだった。
     そんなウツシの姿を、メジロは見るのが辛くて堪らなかった。どうにか元気になって欲しくて、自分が立派なハンターになる事で少しでも敬愛する師の悲しみが癒えれば良いと思った。その一心で頑張ってきた。もう泣いているあの人の姿は見たくない。
     ウツシのあの太陽のような笑顔を守らねばと、強く強く、メジロは思った。


     その後、ボロボロの姿で帰ってきたメジロに、ウツシが狼狽したのは言うまでもない。
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    Replies from the creator

    o-tukiピニャコラーダ

    DOODLE狩猟が怖いメジロくんの話。まだハン♂ウツじゃない。
    You are my Sunshine.2 寒い。寒冷群島なのだから当たり前だろう、とメジロは首を亀の様に縮こませながら震えていた。おまけに時間は夜間。冷え込みも当然である。
     だがそんな寒さや暗さなど、メジロにとってはどうでもよかった。
     ──早く帰りたい。
     ハンターとして活動を始めてそろそろ半年になるが、独りでの狩猟はまだまだ怖かった。完全に独り、という訳ではない。オトモのアイルーとガルクも一緒であり、なにより、メジロの武器は操虫棍だ。使役する猟虫の存在も有難かった。
     見習いを卒業してすぐは師であるウツシがクエストに同行してくれていた。もちろん、ウツシのオトモのデンコウとライゴウも一緒だった。クエストにまだオトモを同行させられないメジロに二匹を貸し、一緒に戦ってごらん、と優しく教えてくれたのだ。そして実際に二匹の動きを見ていて驚いた。ウツシと数々のクエストをこなしてきたのだから当たり前と言えば当たり前なのだが、メジロが武器を構えてわたわたしている間に、数匹のイズチをあっさり討伐してしまったのだ。ウツシは一緒に戦った事を褒めてくれたが、実際あの場でメジロが出来た事なんてほとんど無かったと言っても過言ではない。今思い出しても、その情けなさに涙が出そうになる。自分なんかが戦わずともオトモが全部やってくれるのではないか?そう考えるようになってしまっても仕方ないだろう。
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