RGBひとりじめ!「道満、光の三原色って知ってる?」
カルデアの一隅、かつて平安京にレイシフトしたときに体験した屋敷によく似た内装に改造された彼の部屋を訪れ、藤丸立香は開口一番尋ねる。対する道満はひどく饒舌に言葉を返して寄こした。
「勿論、存じておりますとも。現代光学、あるいは神経工学で扱われる領分でございますな。赤、緑、青の三色を用いることで人の感ずるおよそ全ての色彩を表現可能になるという。ところで、何故その三色なのかマイマスターはご存知で?」
そういえば知らないと答えれば、彼はわざとらしく眉をひそめ「いけません」と繰り返した。
「ンンンンン、いけませんねぇ。ご自身の肉体の働きです。今を生きる貴方が有しておくべき知識でしょう。ンン、よろしい。それでは僭越ながら拙僧が解説して差し上げる。……人の眼球の裏側、網膜と呼ばれる部分には特定の波長の光を感受する細胞、その名も視覚細胞がございます。これらは太陽光に含まれる特定の成分に強く反応し、刺激を神経に伝えます。そしてなんと! その特定の成分こそ、赤・青・緑に対応する領域に存在するものなのです。現実の光はより複雑な組み合わせから出来ておりますが、貴方の頭蓋骨に包まれた愛らしい脳は代表的な三種類の刺激を器用に利用し、貴方が感ずるところの「色」を作り出しているというわけですな。嗚呼、人体とは何たる神秘の源でしょうや!」
4317