友達募集中「交番ってどっちかしら」
道すがらにそう訊かれる。それ自体はおかしい話ではないのだが、青年は首を傾げた。
青年に問い掛けた女は、住宅街の灼熱コンクリート上に座り込んでいた。加えてこの暑さに汗をかいた様子はなく、今し方ここに現れたかのような態度をしている。年齢は若く、とてもスマートフォンで検索しないという年齢ではない。端末をこの辺りのどこかに落として、届けられていないかを確認したくて交番へ行きたいのかもしれない。しかしそうだとして、この『落ちている』と形容したくなるような様子の説明はつかない。
青年は疑問半分引き半分といった様子で、ただ女に目線を合わせようとも特にせず、また手を貸す様子もない。「そんな所で何してんの?」と聞きながら、ごそごそと自身のスマートフォンを探し始めた。
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