ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第⑪話「フィリップ王子、来る」「ローズ! ローズ!? どこにいるの! 出てらっしゃい!」
森に三人の妖精たちの声が響く。だが応える声はなく、呼びかけは虚しく木立に吸い込まれていくだけだった。
どれほど探し歩いたろうか。三人は、まさかローズが城へ向かったとは思いつきもせず、見当違いの森の中を捜索していたのだ。
そして彼女たちは、探していたのとはまったく別の人物と出会ったのだった。
森の小道を、白馬にのった立派な身なりの青年がやってきたのだ。こんな辺鄙な森の中に、こんな貴公子が何をしに……? 三人は訝しんだが、青年は気に留める様子もなく馬から降りると丁寧にお辞儀をした。
「こんにちは。私は人を探しております。この辺で見目麗しい乙女を見かけませんでしたか? 名前はローズ。柔らかな陽の光のような豊かな金髪とすみれ色の瞳の乙女です」
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